「マーケティングの教科書」
ハーバード・ビジネス・レビュー編集部 2017年 ダイヤモンド社
既に読んだ論文もあるが … まあ暇潰しに。期待したほど面白くなかったな〜。マーケティング学者って世界的に知性の高い人は少ないのかな?とは言え、役に立つものもあったヨ! 以下はこの本の要約と引用です。*は私の所見とWeb検索の結果です。
■ はじめに
「企業の目的は、顧客創造である。従って、企業には二つの、そして二つだけの基本的な機能を持つ。それがマーケティングとイノベーションである」ピーター・ドラッカー。
■ 営業とマーケティングの壁を壊す 2006年 フィリップ・コトラー
IBMは営業とマーケティングを統合させた新組織「チャネル・イネーブルメント」を作った。
*「チャネル・イネーブルメント」は現在も存続しているようです。
営業部門は、「マーケッターは長期戦略を考えていれば十分」と考える。全部門から「マーケティング部門は全社を率いていくだけの能力と経験を備えているのか」という懸念も噴出する。
*私流のマーケティングでは、マーケティング部門は「売り得る可能性」を作り、営業/販売部門は「その可能性を実現する」のが役割。マーケッターは「獲得した可能性の価値(金額)」で評価され、営業は「実現した利益額」で評価される。ブランディイングや顧客資産形成はマーケティング。販売促進などは営業部門が行う。
マーケッターは、データと分析を好み、営業担当者は行動あるのみだ。業務分担を具体的に定める必要がある。両部門間の調整の指針を設ける。マーケティング部門に営業部門との橋渡し役を置く。マーケティング部門は本社、営業部門は地域別に分散している場合、協調には努力が求められる。
■ セグメンテーションという悪癖 2005年 クレイトン・M・クリステンセン
セオドア・レビットが言っているように、顧客は何らかの「ジョブ(課題)」を処理する必要があるだけだ。マーケッターの役割は、自社の商品が雇われる可能性を理解し、購入体験や使用体験を設計し、課題を解決する商品を作る。顧客に課題を解決する意思がないところに、成功などない。マーケッターにとって、基本単位は「顧客」ではなく「顧客課題」なのだ。
消費者は、重曹が掃除や臭い消しに使えることを知らない。消費者の課題毎にアンブレラブランドを展開した。異なる課題には別のブランドが必要だ。
*ブランドが成立する売上規模。事業〜傘〜商品ブランドでの対応。
広告だけでブランドは高蓄できない。
顧客に解決すべき課題が存在し、その解法(商品)が存在することを気づかせる必要がある。商品名は重要な表現要素である。
*例:「モーニングショット」
商品がどのような課題を解決できるかを伝える場合、その商品を選ぶべきでない課題かも伝える。
■ マーケティング近視眼 1960年 セオドア・レビット
ウール衣料全盛の時代には、ドライクリーニング産業は成長した。合成繊維と化学添加剤の登場で、ドライクリーニングの必要は無くなった。
どのような事業も、商品の陳腐化や代替商品の登場、イノベーションを免れることはできない。
フォードは一台500ドルの車なら何百万台も売れると考えた。組み立てラインによる大量生産は低価格の原因ではなく、結果なのだ。
ドライバーは、ガソリンを買いたくてスタンドをいと思っているわけではない。燃料補給をする必要の無い乗物があればそれに乗り換えるだろう。
エレクトロニクス産業では、優れた製品であれば売れるという幻想が生まれやすい。顧客は、その商品がどのように生産されているかはどうでもよいことだ。
経営者の使命は、顧客を創造できる価値を提供し、顧客満足を生み出すことにある。
■ マーケティング再考 2010年 ローランド・T・ラスト
今では、顧客の情報を収集し、顧客についても知見を見出す技術がある。
最高マーケティング責任者(CMO)を、CCO(最高顧客責任者)に置き換える。CCOは、顧客関係に関する戦略を立案実行すること、顧客に関する職能の全てを監督する。
*顧客接点事業(サービス業)は、顧客との関係を構築した上で、顧客に最適な商品を提案できる。生産社には不可能である。
経営陣が、週に3時間、コールセンターで顧客と話す。執行取締役が年に1週間、店舗で働く。P&Gでは、マックスファクターとカバーガールを担当するマネジャーが、低価格志向の顧客と同じ水準の生活費で1週間暮らす。これらは重要な洞察を与える。
個人向け金融サービス業では、顧客セグメント別に担当マネジャーを置いている。
法人顧客とのパートナーシップは、従来のR&D主導の新製品開発モデルに取って代わりつつある。
デルタ航空は、海外のコールセンターを閉鎖した。文化の違いのせいで、北米の顧客の対応する能力が低下したからだ。
顧客生涯価値の総額=顧客資産に焦点を移す。個客の指標は生涯価値、市場の指標は顧客資産である。
■ 顧客ロイヤルティを測る究極の質問 2003年 フレデリック・F・ライクヘルド
顧客満足度調査は無駄金に終わることが多い。収益性や成長性との関連性に乏しい。
ロイヤルティの高い顧客は、同じサプライヤーと継続して取引する。継続購入がロイヤルティに基づいているわけではない。他に選択肢が無かったり、惰性だったりすることもある。購買頻度の低下は、ロイヤルティの低下を意味しない。使用頻度が減っただけかも知れない。
*マーケティング学者は無教養なので、神経科学や認知科学の無知だ。隣接科学ぐらい少しは勉強して欲しいよな〜。継続購買に関する意思決定過程=神経活動を科学として説明することはできない。報酬回路(ドーパミンが関与する)しているなら、ロイヤルティが確立していると言えるのか?(多分、そうだとは思うが)それすら判然とはしていない。
質問「この会社(銘柄)を友達に薦めますか」は、リピートオーダーや口コミとも閑れの高い。顧客が他人に紹介したくなるほどの支持がなければ、企業は成長しない。
*上記の質問は、社会学で「社会距離」の測度の一つとして古くから用いられている。
回答はトップボックスを重視する。
*SD尺度は「数字」なので、「数値」ではないので演算不能である。マーケティング研究者は足算ができないので、彼らに「分析」は完全無欠に出鱈目である。但し、数理としては出鱈目でも、[そう思う〜ややそう思う〜どちらでもない〜そう思わない]の「そう思う」の比率と、[そう思う−(どちらでもない+そう思わない)]の割合は、尺度として妥当であることが検証されている。
満足していない顧客に対しては、顧客の許可を得た上で、担当者が顧客にアクセスし、問題の原因を究明し解決する。高い評点のマネージャーは昇進の機会を得る。
■ 「つながり」のブランディング 2010年 デイビット・エデルマン
消費者がどの時点でどの接点でどのような影響を受けているか、その接点にどうすれば消費者と「交わる」ことができるのか。
ブランドを認知させ、売場で購買を刺激する二つの顧客接点に経営資源が投入されてきた。漏斗(ファネル)はもう通用しない。
デイビット・コートは、2009年「消費者の購買意思決定の旅(CJ)」を調査した。今日の消費者は、選択範囲を体系的に狭めていくびではなく、もっと反復的で、それほど絞り込みをしないプロセスをたどる[検討-評価-購入-使用と判定]。
検討:真っ先に思い浮かべる銘柄(トップオブマイン千)や想起銘柄。消費者は検討対象を限定していることが多い。
評価:より多くのことを知るに従って選択基準が変化し、対象銘柄が変化する。消費者が自ら調べた情報の方が、企業が発信する情報よりも影響が大きい。
購入:消費者は、実際に店舗に行くまで意思決定を先延ばしすることが多くなった。購入時点の働きかけで決定は大きな影響を受ける。
判定:60%の消費者が、購入後にインターネットで購入商品を調べている。絆が結ばれれば、ロイヤリティ・ループに入る。
*品質が向上し、昔ほど「失敗」がなくなり、購買が慎重ではなくなった。
従来は、検討と購入の段階に多くマーケティング予算が支出された。評価や評定の段階の方が、消費者に大きく作用することが少なくない。現在では、自社メディアや外部のメディアを考慮に入れる必要がある。
*評定の段階では、コミュケーションの前提として、消費経験が満足水準を上回っていることが条件となる。
・CJ戦略
CJを理解する
どの顧客接点をどのように活用するかを決定する
経営資源を配分し、組織を連携させる
オンライン消費者パネルから購入客を選び出し、どのような検索を行ったのか、どのサイトが気に入ったのか、参加したコミュニティなどの行動を把握した。抽出した購入客にデプス・インタビューを行った。広告や口コミなどのオフラインチャネルは、検討段階で影響力がある。評価段階では、アマゾンなどの小売サイトを閲覧していた。製品比較情報などが掲載いされているからである。自社サイトを訪れて購入する顧客は少ない。クリックされるのは、割引と購入に近づいた時に限られる。購入後は、消費者は多くのブランドと関わっている。販売業者から送られたメールに誘導されて、SNS内で自分の購入について発言したりする。また、トラブル解決の助言を求めて批評サイトに向かうこともある。
自社サイトの商品情報が更新されていない、リンクが切れている、と消費者は苛立つ。統合した顧客体験を提供しなければならない。それが解決されない限り、他の顧客接点で効果を上げても意味が無かった。
SNSのモニタリングツールを活用して、消費者の発言のキーワードを明らかにする。商品に関する用語を誤解しているために、間違った情報がやりとりされていることが少なくない。また、ブランドに関する発言が殆ど無いことも重大な問題である。それは支持されていないことの証明である。
まず、首尾一貫しない説明を無くす管理システムを構築し、全てのプラットフォームを一貫性のあるものにする。
クリック・ストリーム(サイト上の行動軌跡)分析によって、アマゾンが最も大きな影響を与えるサイトであることが明らかになった。アマゾンへのトラフィックを引き付けるコンテンツとリンクを作成する。
CJ計画=顧客経験計画。アップルは専門用語の使用を避け、説明ビデオを作成し、商品説明の一貫性を確保する。ナイキは、「ジャスト・ドゥー・イット」を実行に移すのを支援する。トレーニングデータを記録する「ナイキ+」の機器や、世界規模のチャリティレース、カスタマイズされたオンライン・トレーニングプログラムを開始した。日本の数百万人の消費者は、携帯電話でマクドナルドからの通知を受けるサービスを契約している。これらの企業は。見境なく行動しているわけではない。アップルは、パーソナル化したメッセージを発信していない。ナイキは検索エンジンでのプレゼンスは高くない。マクドナルドは自社サイトの活用に注力していない。
自社が管理する顧客接点、自社サイト・製品パッケージ・パンフレット・プレスリリース・販促物・顧客サービス・販売窓口・お客様相談室・保証窓口など全ての接点の調整者を設定する。マーケッターは、膨大な量のコンテンツを制作している。入念に調整しなければ非効率になり、一貫性の無いメッセージを発信してブランドを傷つける。コンテンツ・サプライチェーンを管理し、一貫した顧客体験を生み出す仕組を構築する。
IT部門がデータの収集と管理を行う企業がある。IT部門は、業務効率を重視し、戦略性に欠けています。
。
顧客が接する全ての部門の代表者からなる委員会を設置し、CMOが統括する。コンテンツ管理システムも必要になる。
■ ブランド・リポート・カード〜ブランド評価の新手法 2000年 ケビン・レーン・ケラー
・銘柄資産の要素
ユーザー像
使用イメージ
機能と性能
銘柄に対する顧客の感情
顧客と銘柄の関係性(愛好/必要に応じて/季節ごとに/…)
・ブランドの階層
企業銘柄〜傘銘柄〜製品
⇔ 例:ジレットは剃刀、電気髭剃はブラウン、オーラルケアはオーラルB
・顧客の感情の根
銘柄の好悪を決める物事を把握する
・認知と感情
一定水準の銘柄認知を確保する
その上で、イメージを形成する
例:ダッチシェルは広告費を大幅に削減し、銘柄資産を失った
・銘柄管理手引書(マニュアル)
銘柄管理のガイドライン
表現方法の規定
定期の銘柄監査
例:ディズニー・エクイティ・チーム
マーケティング活動に審判を下すのは顧客だ。
■ ブランド・コミュニティ 2009年 スーザン・フォルニエ&ララ・リー
ハーレーダビットソンの成功に触発され、ブランド・コミュニティづくりにせわしない。
ハーレーは、コニュニティーを支援するイベント全てに社員を充てた。経営幹部が現地で顧客と時間を共にした。会員制クラブ「ハーレー・オーナーズ・グループ」を形成・育成する社長直轄の部門を設置した。
ブランドは顧客のものである。ブランド・コミュニティは、そこに集まる人たちのために存在する。活気あふれるコミュニティは、ブランドの評判ではなく、メンバーの生活に関する理解の上に築かれる。
コミュニティには三つの基本形がある。
プール:民主党員やアップルのファン
共通の目標や価値観を共有する
人間関係が築かれることはない
ウェブ:
参加している人たちは、多種多様な関係で結ばれている
ハブ:
ある個人の求心力
コミュニティとしては不安定
⇔ ナイキなどの契約選手は複数
ハブの結びつきをコミュニティと結合する
コミュニティには対立は当たり前。主流派は自らを強化するためにも反主流派を必要とする。アップルファンは、マイクロソフトやデルを嫌う。ユニリーバの「リアル・ビューティ・キャンペーン」は、業界が押し付ける理想の美に反対する。熟年・大柄・痩せ・容姿に自信のない女性を団結させた。コミュニティは、境界を際立たせることでより強力になる。
コミュニティは、メンバーがそれぞれの役割を果たすとき、最も強固になる。オピニオンリーダーを重視することは、コミュニティ作りでは見当違いのアプローチとなる。活気あふれるコミュニティでは、メンバー全員が重要な役割を演じることで基盤が築かれる。コミュニティが進化するには、パフォーマー・サポーター・メンター・学習者・ヒーロー・スカウト・歴史家などの多くの役割が必要である。サブグループを組織する。役割の違いによる緊張を解決する機会を提供する。
バーチャルな提案箱は、コミュニティではない。
オンライン・ソーシャル・ネットワークには限界がある。ウェブ内の出会いは匿名であり、社会的な結びつきは弱い。
ブランド・コミュニティは人々のものであり、企業のマネジメントとコントロールを受けない。顧客こそブランドのオーナーである。企業は、コミュニティへの参加規則を決める必要がある。
■ 女性の消費力が世界経済を動かす
2009年 マイケル・J・シルバースタイン&ケイト・セイヤー
女性たちは、時間を節約するソリューションを求めている。
バナナ・リパブリックは、体型・サイズの「フィット・ブロック」を全商品で統一。オンラインでもパンツを選ぶことができる。
女性の幸福度は若い頃と晩年に高い。仕事と家庭の両立、育児と介護は、女性の負荷を高めている。
■ 法人営業は提案力で決まる 2006年 ジェームズC・アンダーソン
客先の購買担当者は、コスト削減の責任を負っており、何の証拠もないまま、供給社の言葉を鵜呑みにしない。
顧客バリュー・プロポジション(提案)は、長所を列挙したり、優位性を列挙したりせず、顧客ニーズに的を絞る。そのためには、顧客価値を把握しなければならない。
顧客が競合の方が優れていると勘違いしている場合は、顧客がそう思っている根拠とそれが勘違いであることを示す根拠を挙げて説明する。
顧客事例を示しながら提案し、実現した価値のデータを示す。
客先と話し合い、記録する方法を決め、客先の担当者と協力して価値の計測を行う。収集されたデータは、顧客価値モデルを改善したり、顧客事例を作成にも役立つ。オンライン追跡ツールで、担当者だけでなく、関係者が状況を確認できる。追跡調査を行うことで、自社の優位性に精通する。バリュー・プロポジションの研修を行い。バリュー・プロポジションを開発する。
自社の優位性について、客先の認識を把握する。[同等-優劣-異見]客先と自社で見解が異なる場合がある。