「次のテクノロジーで世界はどう変わるのか」
山本康正 2020年 講談社現代新書
山本康正 2020年 講談社現代新書
表題に誤りあり!次の技術については何一つ述べられていません(技術者や研究者ではないので当然ですが)。目先の … というより現在の技術について述べているだけです。それでも現在の技術の動向についての記述には、大学の講義で参考になるものがあって助かりました。 以下はこの本の要約と引用です。*印は、検索結果や私の見解です。
《はじめに》
アマゾンは冷蔵庫にカメラを設置する技術で特許を取得した(2021年6月現在、少なくとも日本では発売されていない)。筆者は、グーグルで4年間を過ごした。
筆者は、三菱UFJの米国法人、ボストンのダナ・ファーバー癌研究所、ラウフネット生命、シリコンバレーのベンチャーキャピタルのグローブスパン、世界エイズ・結核・マラリア対策基金を渡り歩いている。その後、ベンチャーキャピタルを起業した。
現在の技術の構図は[AI〜クラウド(ビッグデータ)〜5G(第五世代)]。グーグルやアマゾンは、クラウドサービスを展開している。
《序章 近未来に起こる変化》
・データが全ての価値の源泉となる
価値の源泉は、データをもとに顧客にとって望ましいサービスを提供すること。顧客について熟知している企業に競争優位が生まれる。
・あらゆる企業がサービス業になる
次世代交通システム「ハイパーループ」では、業界の壁はなくなり会社名から「航空」や「運輸」や「自動車」が消える。
・全てのデバイスが「箱」になる
データがクラウド化すると手元のデバイスで処理する必要がなくなり、操作と表出だけに特化する。
・大企業の優位性が失われる
プラットフォーム以外では、技術開発では規模の優位性は失われる。自動車製造業の自動運転技術開発は、ソフトウェアだけでなく製造まで網羅したものになり、ソフトに特化したベンチャー企業に追いつけない。
グーグルやアップルは、起業家が実際に起業するまで身を置く場所になっている。日本でもグーグルを参考にして、DeNAが100億円のファンドを立ち上げ、社員で起業した人材に出資している。
・収益はどこから得てもよく、業界の壁が消える
製品やサービスなどの一定期間の利用に対して代金を支払うサブスクリプション。ハードやソフトを無料で提供するビジネスモデルも増える。アマゾンは、顧客との多くのタッチポイントのどこかで収入を得ればいいと考えている。グーグルは、医療関連のべりりーを傘下に収めた。
・職種という概念が無くなる
・経済学が変わっていく
データによって導かれる世界は、理論ではなく現実だ。プライバシーの問題を解決すれば/無視できれば、精緻な消費雨行動を把握できる。
《1. テクノロジーとビジネスの交差点》
グーグルのオフィスが入っている六本木ヒルズに株式会社ポケモンが入居していたこともあって、「ポケモンGO」が完成した。
2014年にグーグルがイギリスのスタートアップ企業「ディープマインド」を360億円で買収した。グーグルの翻訳は、6ヶ国語で作成される国連の公用文書を教師データとした。グーグルが拡大したのは、ユーチューブやアドワーズやアンドロイドなどの買収によるもの。
起業家には、複数の企業が協業する「エコシステム」を必要とする者もいる。
《2. 基幹テクノロジーの進化史》
半導体(セミコンダクター)は、物体の温度差が電圧に変換される熱電変換効果(ゼーベック効果)の発見に始まる。半導体が電気を通す条件は、熱・光・磁場・電流など。「トランジスタ」は、信号の伝達を表す「トランスファー」と、抵抗を示す「レジスタ」を合成させた。
インテルのプロセッサは電力消費量が大きくスマホ向きではない。省電力化と小型化を実現するクアルコムが躍進した。
アメリカ国防省が構築しのがインターネット。CERNがWWWを開発して、TCP/IPが世界標準となった。通信速度が10ギガビット/秒になってユーチューブが登場する。
2006年に登場したクラウドコンピューティングにより、ディープラーニングが実用化する。そして、2014年にグーグルがディープマインドを買収する。
《3. AI − データを使って認識し判断する》
現在のAIは、画像解析・自然言語処理・音声認識=パターン認識ができる。現在のAIには、良い-悪いの判断ができない。
ニューラルネットワーク〜ディープラーニングは、神経細胞と同じものではない。*エミュレーションではあっても、シュミレーションではない。
グーグルはデミス・ハサビスやジェフ・ディーンというスター研究者が所属し、人工知能研究をリードしている。ディープラーニングを開発したジェフリー・ヒントンは、大学教授を務めながら、グーグルのフェローとして在籍している。AIの研究者は周知されている。AIを開発するには膨大なデータ量のクラウドと計算力が不可欠なので、その分野の強者以外から何かが生まれることは考えられない。
スマートスピーカーを比較すればAI技術の水準は明らかである。音声を文字に変換し、文字の意味を理解する。それは単なるパターン認識では不可能である。概念そのものを機械が理解し、それを各言語に翻訳する。*AIには、英和辞書は必要ない。
IBMの質疑応答システム「ワトソン」は、コグニティブ・コンピューティング・システムであり、パターン認識に近い。
中国は、プライバシーという概念が無く、膨大なデータが有る。多くの監視カメラが設置され、全ての人々の行動をデータ化している。アリババは、グーグルを超える可能性がある。
B法人向けのサービスは徐々に浸透するが、消費者向けのサービスはネットワーク効果によって急激に広まる。
医療分野では、AIの方が画像解析による病巣の検知率が高い。食事の管理も、食べ物の写真を撮れば栄養成分が自動計算される。グーグル傘下のヘルスケア企業「べりりー」は、人工知能と医療を融合させる研究を行っている。
アマゾンは、アレクサ対応の電子レンジや冷蔵庫を開発している。アマゾンが欲しいのはデータであり、データを集めるためのデバイスで収益をあげる必要はない。パナソニックは、グーグルでスマートホーム事業のCTO(チーフ・テクノロジー・オフィサー)だった松岡陽子を引き抜いた。
グーグルが、データの蓄積に情熱を燃やす。世界中の図書館の本をスキャンしている。蓄積したデータはいつか何かに使える、と思っている。「世界中の情報を整理する」がグーグルの企業理念。
チャットボットで有名なバークシャ・テクノロジーの上野山勝也氏は、日本のAI研究を牽引する東京大学大学院の松尾豊教授の研究室の出身である。*松尾氏はディープラーニングの開発者。
動画配信サービスのネットフリックスは、レンタルビデオ店だった。ブロードバンドが一般化した時にデータ配信に舵を切った。どこをスキップし、どこを繰り返し見ているかのデータを取り、個別にリコメンドする。そして顧客好みの作品を作ることができる。現在のネットフリックスの番組総制作費は1兆円を超える。
ターゲットに合わせたキャッチコピーをAIが作る技術は実装されている。人間には別の形の創造性が求められている。
顔認証システムが進んでいるのは中国。ある人物がある店舗に来店したのが、今月になって何度目かが特定され、どの棚を中心に見ているかも特定される。画像の画素数も増大し、精緻な検出が可能になっている。
2019年、テスラは電動ピックアップトラック「サーバートラック」を発表した。自動運転は人間の目で見て判断する運転によりも安全だ。グーグル傘下の自動運転開発会社ウェイモも注目される。
タクシー運賃の7割はドライバーなどの人件費。無人の自動運転になれば、安く渋滞しにくいサービスになる。グーグルマップに紐づいて、各車の経路が配分される。倫理問題が無視できる中国は、自動運転でも覇権を握る可能性がある。
全てが記録される環境は、使用者が許可しなければ記録されない契約を成立させる。アマゾンエコーの誤動作をきっかけにして米国で定められた。
2019年にイーロン・マスク関連のニューラリンクは、脳とコンピュータを直接に結ぶシステムの臨床試験の許可を申請した。この分野でも人権侵害を無視できる中国んび先を越される可能性がある。中国はAIな巨大な実験室となっている。
《4. 5G・クラウド・ブロックチェーン》
・5G
5Gの特徴は、高速・大容量、低遅延、同時接続。10ギガビット/秒に進化。
現在、インターネットで流れているデータの3割がネットフリックスのものだと言われている。エンターティメントのコンテンツは、資金力の差によってネットフリックスのような独自コンテンツに凌駕される可能性が高い。
低遅延になることでロボットの判断の速度が上がる。遠隔操作による制御が可能になる。多くのセンサーを埋め込んだ工場の中でIoTを実現し、工場の生産性が向上する。
5Gによって画質が4Kテレビと同水準になる。テレビ中継車の多くが不要になるかも知れない。
民生用ドローンは、中国のDJIが圧倒的なシェアを占めている。ドローンも、AIによって自動認識と自動走行が実現する。ドローンの真価が発揮されるのはそれ以降だ。アマゾンは、ドローンによる配送の実証実験を行っている。公道を使ったスターシップ・テクノロジー社の宅配ロボットも各地で運用され始めている。
米国インティディヴ・サージカルが開発した手術ロボット「ダ・ヴィンチ・サージカル・システム」は。5G導入によって離島の診療所でも遠隔操作で執刀できるようになるだろう。
5Gによって、自動運転車から遠隔操作に切り替えこともできる。ダイムラー・トラックなどが実験を重ねるトラックの隊列走行は、5Gになれば遅延は殆どなくなり安全性は高まる。
フェイスブックは、VR空間でアバターによるコミュニケーションが可能なソーシャルVRサービス「ホライズン」を発表した。
・クラウド
SaaS(ソフトウェア・アズ・ア・サービス)は、使いたい時に使った分だけ課金する。大容量の記憶媒体を搭載できないスマホの普及により、クラウドは進化した。
アマゾンは、2006年にAWSを公開した。グーグルはサーバーを内製化し、人工知能用のチップTPUも作っている。様々なクラウドコンピューティングの大本には、グーグルやアマゾンが存在する。グーグルが開発した人工知能のプラットフォーム「テンサーフロー」が無料で公開されている。配車アプリのウーバーは、ドライバーの位置情報と道路情報をリアルテイムに把握する。グーグルマップやナビゲーションのデータが必要だ。
・ブロックチェーン
ビットコインの考案者サトシ・ナカモトは、日本人ではないと考えられている。多くの人びとが信用が集積したシステムの方が正統性があるという主張に賛同したプログラマーが、ビットコインを構築した。最も早く記録を計算・承認(マイニング)して皆と共有した人に「お礼」として報酬が支払われる。
中国政府がビットコインを禁止された。2017年、日本円によるビットコインの売買高が世界の半数以上を占めた。仮想通貨は、第三世界の銀行講座を持たない人々にとっては魅力がある。
MITの卒業証書は、ブロックチェーンを用いて発行されている。
グーグルとシティバンク、アマゾンとJPモルガン、アップルとゴールドマン・サックス。米国では銀行とクラウド運営社の提携が進んでいる。銀行業務は単独では存在できないものになっている。
《終章 テクノロジーの進化を見定める》
日本の銀行はATMをきめ細かく配置し、キャッシュレスの後進国になってしまった。
タクシー業界の保護というだけで、日本ではウーバーが許可されていない。