「企業変革の名著を読む」 日本経済新聞社編 2016年 日経文庫
単なる暇潰しの本 … にしてももう少し … ← 目くじら立てるな！どうせフックオフなんだから〜〜〜。 という訳で、以下はこの本の気になった部分の要約と引用です。＊部分は私の所見です。
◇「企業変革力」ジョン・Ｐ・コッター
マネジメントは、確実性と秩序を築き上げる原動力。変革にはそれとは違う力が必要になります。
顧客・供給業者・株主などに、自社がどう見えるかを尋ねます。彼らの意見には会社の実態が反映されています。
サービス業の顧客への提供価値は、社員の接客によって左右されます。社員の行動規範を、現場も参加して整理し、共有します。表彰制度を設け、掲示板も作りました。
企業文化は最後に変わるものです。企業変革はゆっくりとしたプロセスです。
リーダーは、高い目標を持って、何度も修羅場を経験することで育まれます。
「人と比較して劣っていることは恥じることではない。けれども、今の自分が過去の自分より劣っているとしたら恥ずべきである」松下幸之助。
◇「インテルの戦略」ロバート・バーゲルマン
インテルの歴史は、メモリの時代（〜1985年）、マイクロプロセッサの時代（〜98年）、インターネットの時代（98年〜）の３つに分けられます。
財務部門っが決めたルール「ウエハー１枚当たりの収益性を最大化する」が、採算性の高い製品に製造能力を割り当てた結果、マイクロプロセッサにシフトします。
半導体以外でも製造ノウハウが、製造装置などの機械に載って流出します。
2015年、日本にコーポレートガバナンス・コードが導入されました。日本企業に自然淘汰環境を根付かせることが背景にはありました。収益性の低い領域から高い領域への資源や人材のシフト、スクラップ＆ビルドによって自己資本利益率（ＲＯＥ）を引き上げが求められました。日本企業のＲＯＥは平均8％。米国では20％以上が平均です。
終身雇用制度の下では「専門性」と「柔軟な事業構造」は両立しません。社員に専門性と柔軟性、スペシャリストであると同時にゼネラリストでもあることを求められるからです。
第二期のインテルは、パソコンのアーキテクチャーを創造する企業になります。ｘ８６を生み出します。パソコンのロードマップを決める力が、パソコンメーカーからインテルへと移ったのです。インテルは、パソコンのアーキテクチャーに関する研究開発に取組み、その知見をチップセットに実装して提供しました。
スティーブ・ジョブスはエンジニアではありません。大学ではリベラルアーツを勉強し、中退しています。
プラットフォームの開発などでは、エコシステムと呼ばれる勝ち組企業連合が問題解決の主体となります。
人間の大脳の活動の中で、自分が意識できる領域は２割程度しかなく、８割以上の活動は自分でも何を行っているのか意識できません。柔軟にモノの見方を変えられる人は、無意識の世界を活性化し、新しいモノの見方を生み出す術を知っています。
＊今猿の間にもこういう知見が浸透しているんですね。
◇「出現する未来」 ピーター・センゲほか
多くの人は、メンタルモデルをダウンロードしているだけで、現実を見ていません。
ありのままの世界を知覚し、出現しつつある世界をプロトタイピングします。完全なものは構想できません。未来の世界を共に展開します。自分たちを通して世界が展開してくのを実感します。
◇「シンギュラリティ大学が教える飛躍する方法」 サリム・イスマイルほか
成長が指数関数にのっているかどうか。
人々の協調行動を引き出すエンゲージメント（愛着）の趣向をこらすのが飛躍企業の流儀です。
プラットフォーム上のリポジトリ（ファイル保管庫）には、バージョン管理とワークフロー管理の機能が組み込まれています。ダッシュボードには、ＫＰＩが要約され、実験と検証を繰り返しを支援します。
◇「リーダーになる人に知っておいてほしいこと」松下幸之助
「素直な心になりましょう。素直な心はあなたを強く正しく聡明にします」松下幸之助。
自らの境遇を受入て成功するまで努力する。松下幸之助は、明確な計画性によるものというよりも、「その日その日を充実してやっていたら」いつのまにかそうなったいたと述べています。
マイケル・ポーターが提唱する「どこで戦うか」よりも、個別企業の経営の巧拙の方が大切です。儲かりそうな事業を求めてフラフラとしていては大成しません。自らのコア事業を磨き続けることが成功に導きます。
進退が窮まれば人は強く、力を発揮できていない人はまだそこまで自らを追い込んでいないのだと、松下幸之助は諭します。
経営指標のスコアではなく、コメントに注目することが重要です。
◇「静かなリーダーシップ」ジョセフ・Ｌ・バダラッコ
実践的なリーダーはヒーローではなく、正しいと思われることを目立たずに実践している人です。静かなリーダーは現実主義者です。
実践的な問題解決は、時間を稼ぎ、少しづつ、選択肢を見つけ、答えを得ます。静かなリーダーは必死に妥協策を考えます。
◇「ネクスト・マーケット」Ｃ・Ｋ・プラハラード
社会問題を解決しながら価値創造を行うという考え方。新興市場の貧困層（ＢＯＰ）は世界に40憶人をビジネス機会と捉えます。
ブラジルの小売業カザス・バイアは、金融機能も持ち、家電や家具を購入する貧困層にローン払いで買って貰います。小売業が小売りと金融の両方を行います。所得状況をよく観察し、返済不履行になるリスクがあると判断すれば、所得に見合うものを買うように勧めます。ブラジルの消費者金融の平均利率は月14％。カザスバイアの平均金利は4％。債務不履行率は8.5％（競合の債務不履行率は16％）。消費者は、毎月、同社の店舗に出向いて返済をすることを義務付けられています。顧客との接点を保ち、次の販売機会につなげます。
四肢切断者は世界に2000万人。その多くは発展途上国や戦乱が起きた国の人々。先進国と違い、農作業など、下肢を常に動かす肉体労働に従事しています。
ＢＯＰ市場に進出する先進国企業はエコシステムの形成が求められます。農村部への販売を担う人々などへの「教育」がポイントとなります。
エリクソンやノキアなどはプリペイドカードを販売したり、携帯電話を貸し出したりしています。使い切りのパッケージの開発も有効です。
◇「選択の科学」 シーナ・アイエンガー
選択は人生を前向きにします。映画を観る日を自分で選択してもらうだけで、老人ホームの入居者が元気になることもあります。
単純に選択が良い結果をもたらしません。米国では自分で選択できるようにした方がモチベーションも上がります。アジアでは逆になることがあります。「自分で決めなさい」と言われると「見放された」と感じることすらあります。
「自主性」は善で「指示待ち」は悪と言われます。「権限移譲といって、自分は何もしない責任も取らない上司が多すぎる」こともあります。米国人にとっては、「マニュアル」は行動選択の指針を与えるものです。
360度評価（上司からだけでなく、同僚、部下からも評価してもらう制度）は、「他人」にどう見られているか、その自他のギャップを見える化します。実際の殊遇に結びつけるか、自己の振り返りに役立てるだけに留めるかはともかく、米国のフォーチュン500社の９割以上が取り入れています。他人に良く見られたいと思いながら。他人にどう見られているかを知らないのです。
大切なのは戦略や展望の内容でがなく、それが共有されているかどうかです。
「買い物客とジャムの研究」。店頭で６種類のジャムを揃えたときは買物客の40％、24種類では60％が試食に立ち寄りました。そして、６種類では試食した客の30％（全体の12％）、24種類では３％（全体の1.8％）が購買しました。多くの品揃えは顧客を惹きつけるが、迷って決められない状況も作ります。
早産で障害を持ち、死亡確率40％、但し生存できても植物状態の赤ちゃんに延命治療を続けるか、死なせるかという選択。米国では親が決めなくてはらない。フランスでは親の異議申し立てが無い限り医師が決める。フランスの親は自らも医師も責めないのに対し、米国の親は罪悪感を引きずっていると報告されています。
現実を直視したとき、良い選択は、限られた選択肢であったり、他人に任せたりすることかも知れません。
「良い選択をすることは大切だが、選択を良いものにしていくことはもっと大切だ」アイエンガー。
◇「ブラック・スワン」ナシーム・ニコラス・タレブ
ブラック・スワンとは想定外で影響が大きな事象のこと。「わかっていることよりわからないことの方が大事だ」タレブ。私たちは、見えている一部を、見えていない部分にまで一般化します。
私たちは、物事を単純化して見ています。モデルは作業上の仮説です。私たちには生まれつきパターンを探す性質が備わっています。単純化は問題解決の武器でもあります。
不確実性の高い世界では、平均値ではなく特異点に注目します。将来予測に関しては、統計は無力です。
意思決定にあたっては、ぞの事象の生起確率よりも、その影響に焦点を当てるべきです。万が一の状況での対処を考えます。リスクと不確実性についての複数のシナリオを考えます。
◇「倫理の死角」 マックス・ベイザーマンほか
人は悪意を持たなくても、倫理に反する行動をとります。何が正しいことなのかを知っているだけでは、正しい行動にはつながりません。どれだけ自己を律することができるかにかかってきます。
社外取締役による牽制の強化に、日本の経営者の多くは違和感を覚えます。個人主義の強い米国では的確ですが、日本のように終身雇用＝長期関係に配慮する場合にはあてはまらないと考えるからです。ですが、日本企業の自己資本利益率(ＲＯＥ)は低く、責任を全うしていません。
幼稚園が、子供のお迎え時間に遅れる保護者に罰金を徴収したら、遅れる母親が増えました。遅刻をお金で解決できるという認識を植え付けたらです。牽制の仕組みに依存しすぎると、形を整えることで免責された気分になり逆効果になります。
モノの見方次第で、善と悪、目的と手段、公と私の見え方は変わります。ある一面からしか見ようとしなくなるところに「倫理の死角」が生じます。白黒はっきりつけようという発想そのものの中に、倫理の死角が入り込みます。
我々は、客観などできません。全ての人を満足させることはできません。
クリントン政権が住宅取得促進政策を打ったとき、信用力の乏しい借り手に頭金なしで貸すことのリスクを取ることになるのか、考えが及んでいませんでした。
倫理観は、全ての人々を視野に入れ「何が正しいことか」を考えることです。全ての関係者を満足させることは困難です。
終身雇用制をとる日本企業では、役員の経験が偏り、視野が内輪に閉ざされがちです。
◇「クァトロ・ラガッツィ」 若桑みどり
クァトロ・ラガッツィは、４人の少年。1582年の天正遺欧少年使節団です。
明治維新を経て現在に至るまで、日本はグローバル化される側でした。
イエズス会の布教は、辻説法でボトムアップで信者を増やしていく「水平型伝道」ではなく、「垂直型伝道」でした。指導者層を説得して改宗させ、彼らの影響力をテコにして庶民へと信者を増やしていく。ヨーロッパでは垂直型伝道が効果がありました。絶対君主制で、トップダウンの社会制度が機能していました。
当時は宗教改革の時代。ローマ協会も内部からの改革に乗り出しました。新世界への布教です。この実働部隊がイエズス会でした。日本は、一時的ではあるにせよ、イエズス会のグローバル戦略が最も成功した国になりました。
天正遺欧少年使節団は、日本人にキリスト教の偉大さを見せ、それを日本人の口から広めることで不況の原動力としようとしました。そして、遠い国からキリスト教に目覚めた高貴な人間(少年たちは大名の直系だった)がやってきて教皇に拝謁すれば、グローバル化の成功をアピールできます。
イエズス会のグローバル化を迎え入れたのは織田信長でした。信長は外国人にも恐れを抱きませんでした。キリスト教ぐらいで日本は揺るがない。色々な宗教があるのはいいことだと考えました。天下布武を達成するためには、仏教の専制支配は崩れた方がよい。宗教が相対化されるのは結構だという考え方です。
グローバル化は、慣れ親しんだやり方の範囲で仕事をこなす担当者ではなく、商売丸ごとを動かす経営者が不可欠になります。スキルある担当者ではなく、センスある経営者です。
◇「アレックス・ファーガソン自伝」 アレックス・ファーガソン
アレックス・ファーガソンは、マンチェスター・ユナイテッドの監督を27年間務めた名将。デイヴィッド・ベッカムらマンチェスター・ユナイテッド・アカデミー出身者たちで、1999年の三冠獲得に貢献しました。ピッチの外でも注目されようとしたベッカムを放出しました。
米国型経営では、経営陣とオーナーや株主が分かれており、執行役員が、株主の代理人からなる取締役会から信任されて、業務を行います。
「日本には、勇敢に戦って負けたとうことを誇りにする文化があるのかもしれません。私は試合後に負けて泣くくらいなら、全ての感情を試合で出し切って欲しい、と思います」エディー・ジョーンズ（元ラグビー日本代表ヘッドコーチ）。
