「サービス・マーケティング概論」 神原理 2019年 ミネルヴァ書房

 講義の参考にしようと読んだ本です。学者が書いた本なので現実感は無く、実務には役立ちません。ですが、初学者にとっては、知識という点では参考になる資料が豊富にあり、その面では有用な本でした。ありがとうございました。 以下は、この本の要約と引用です。*印は私の見解です。


《はじめに》

・サービスマーケティング
サービスの設計
提供体制(物流過程)
品質管理
顧客関係管理
経験価値の検知と分析
顧客情報の収集と対応(苦情対応を含む)

 サービスの設計は、企業と顧客の接点や相互作用を組立て、サービスの提供体制を構築し、顧客同士の相互作用を含めて検討する。

サービス・マーケティングの基礎概念

《1. サービス・マーケティングとは》

 マーケティングとは、市場に対する活動。市場は、取引の場であり、売り手と買い手の集まり(集合)でもある。

《2. サービス経済の諸特性》

 産業構造の変化:第三次産業はGDPの70%以上を占めている。

 消費のサービス化:サービスの工業化・大衆化・経済価値の上昇。家計の外部化。サービスの機械化と大量生産による低価格化。

 銀行のATMや駅の券売機は、サービスの機械化・自動化。育児や介護のサービスは、家事の外部化。所得の上昇は、家計の外部化の前提条件。

《3. サービスの概念》

 サービスの特性は、1)生産と消費の同時性、2)触知不可能性。

 サービスは、触れて知ることができる性質(触知不可能性)が低く、試用するなど、購入前に品質を把握することができない。そのため、「経験財」あるいは「信頼財」となる。教師や医師の品質は経験しても評価が難しく、「信頼財」呼ばれる。

 サービスは生産と消費が同時に行われ、生産過程に消費者が関与する。生産-消費の同時性から、1)需給の時間斉合、2)提供場所の分散、3)消費者の関与、4)品質の不安定性、が生じる。

 需給の時間斉合(在庫不可能性)により、需要の変動に合わせて、供給を調整する必要がある。スタッフのシフトや設備の稼働を調整し、予約制や入場制限などによる需要の平準化を行う。

 サービスは輸送が困難であるゆえに、生産と消費は同じ場所で行わなければならない(提供場所の分散)。

 サービスは、従業者の技能によってパフォーマンスが変わる。サービスの品質管理は難しくなる。顧客によっても品質は影響を受ける。会員制にしたり、高級化したりして、品筆を安定させる場合もある。

 サービスの可視化と触知化。店舗や調理場をガラス張りにしたり、店員の制服を機能別にしたり、メニューに写真をつけるなど、より解りやすく可視化する。

サービス・マーケティングの研究アプローチ

《4. サービス・デザイン》

 時間軸に沿って顧客接点(タッチポイント)における相互作用が円滑に進むようにサービスを設計する。

 時間軸に沿って顧客接点における相互作用を整理し、サービスの供給過程(SDS:サービス・デリバリー・システム)を設計する。レストランの場合、[入店⇒着席⇒料理の選択⇒食事⇒支払い⇒出店]。サービスを提供する仕組みや業務体制を構築する。

 サービス・エンカウンターは、企業と消費者が直接接触し、相互作用を行う時間-過程。顧客との意思疎通を図りながら理念や価値を共有していく仕組みが必要になる。

 顧客同士の相互作用を管理するために、年齢制限、禁煙・分煙、服装規定(ドレスコード)、重厚で中が見えないドア(高い敷居)、予約制、キャンセル規定など、一定のルールを設けることで企業は顧客を管理し、安定した品質の実現を図っている。

 WEBショッピングでの価値連鎖。顧客が購買動機を持ち、サイトを比較し、商品を選択・購入・使用し、満足/不満足を抱いてユーザーレビューを書いたり、次回の購入を検討する。それぞれの顧客接点(タッチポイント)では、サイト見やすさや商品の見つけやすさ、支払い手続きや配送の利便性、商品の機能や性能が重要になる。

《5. サービス品質管理》

 サービス品質の評価は、顧客の知覚により決まる。学習塾の講師と生徒の間の相互作用の質は、講師の技能や生徒の意欲により決まる。

 サービス品質の評価は、購入・使用前の期待と、購入・使用後の知覚を比べる。他社の利用者の自社評価を把握する。利用意向はあって利用経験の無い人の未利用要因を明らかにする。

 サービス品質の尺度の一つが「SERVQUAL」。妥当でない期待を持つ人を排除すべきなど、、期待と知覚の差を品質とみなす手続きに批判がある。

 日本生産性本部の「日本版顧客満足度指数(JCSI)」。調査対象は、過去1年に当該サービスを購入・利用経験のある人。顧客満足度には、コスト・パフォーマンスを含めている。CSよりも、推奨意向こそが再購入可能性を左右する。

 サービス品質管理の問題は、顧客の期待を具体サービスに落とし込めないこと。設計どおりの品質と仕様が提供されない「提供ギャップ」である。従業員が採用できない。訓練が不十分。手順が標準化されていない、などが挙げられる。対策としては、セントラルキッチンでの調理や、有名講師の授業録画配信などの標準化・集中化がある。需要と供給の管理では、割引や特典による閑散期誘導もある。

《6. サービスの経験価値》

 経験価値は、企業の提供する商品に対する顧客の認知・感情・行動・感覚における反応。

 シュミットによる経験価値の測度は、1)感覚、2)情緒、3)認知、4)行動、5)関係、よりなる。

 カスタマージャーニーマップは、1)視点(レンズ)、2)ジャーニー・モデル − 時間型/空間型、3)洞察(インサイト)、より成り、顧客の行為の流れと顧客接点(タッチ・ポイント)が記述される。

《7. サービス・リオカバリー》

 苦情行動は、サービス提供者に対する表明 − 原因や今後の対応策の説明/補償の要求、2)口コミ − SNSを含む、3)第三者機関への訴え − 行政機関やマスメディア、に分類される。行政機関には、消費者庁が所管する国民生活センターや地方公共団体が運営する消費生活センターがある。

 苦情に対する対処の標準化。カルビーは、顧客からの苦情は本社のお客様相談室で一括して受けている。支店はその情報を確認すると、ただちに顧客に連絡を取る。顧客を訪問して詳細をお伺いする場合には、2時間以内と決められている。

《8. ヒューマン・サービスにおける感情労働》

 ヒューマン・サービスとは、感情操作=顧客への適切な感情表現が求められる職種を言う。1)医師・看護師・弁護士・教師、2)飲食業やレジャーや輸送などの従業者、3)営業職、に区分される。感情操作に伴って、ストレスが蓄積されていく。

 感情労働者は、職務上の役割と自分自身とを分けること。顧客に共感をもって接すると同時に、冷静な態度を保持できる能力が必要である。

 マニュアル通りのサービスを提供する人物は、精神の消耗が派生しない。しかし、それが顧客の離反に繋がることもある。一方で、顧客と関わろうとすると精神負荷が大きくなる。

 精神回復力は、自尊心と相関が高い。「燃え尽き」に対しては、ジョブローテーション(配置換え)も必要になる。

《9. 非営利組織のサービス・マーケティング》

 主に一国内で活動している場合は非営利組織(NPO)、国際的な活動をしているNPOはNGO(非政府組織)ろ呼ぶ。非営利組織は、獲得した利益を利害関係者に分配することが禁止されている。

 日本の非営利組織には、公益方針(財団法人・社団法人)、学校法人、社会福祉法人、医療法人、宗教法人、職業訓練法人、特定非営利法人(NPO)… がある。

サービス・マーケティングの事例研究

《10. 飲食業におけるサービス・マーケティング》

 飲料を中心とした経営の利益率が高い。利用時間が分散することも、喫茶店やカフェがの利益率に影響している。

 大手のファミレスでは、デザートを含めた全ての料理が、店内のオーブン調理機のベルトコンベアにに載せると完成するように標準化されている。

 消費者セグメンテーションの適切さが、飲食業の鍵を握っている。セグメンテーションが有効である過度化は、1)識別可能性、2)実質性(セグメントの収益性 − 規模を含む)、3)到達感蝋製、4)実行可能性、の四つで評価される。飲食業のセグメンテーションの基本軸は、1)家族のライフステージ、2)所得、3)社会階層、4)自動車利用、5)飲酒傾向、である。

 大量の調達と生産、機械化と工業化、サービスの標準化、調理人への非依存、は大手の志向性。個人経営の飲食店は、これと逆を志向する。

《11. 保険業におけるサービス・マーケティング》

 損害保険の収入の49%は、自動車保険。保険や自動車ローンの金融商品は、自動車販売店の収入減になっている。

 スマートフォンや自動車の位置情報から行動特性を把握し、保険料や保険金に反映させることが考えられる。個人情報の取扱を含めた規制や制度の改定により、新たな商品と販売が展開される。

《12. スポーツビジネスにおけるサービス・マーケティング》

 ファン同士のマネジメントが、提供するサービスのクオリティをマネジメントすることにつながっている。例えば、浦和レッズが守るゴールの北側は立って応援し、南側は着席で応援するエリアとしている。いずれの座席でも、対戦チームを応援したり、グッズを身につけることはできない。

《13. 小売業におけるサービス・マーケティング》

 駅ビルの「ラスカ」のサービス・リカバリー。苦情情報は全社員が閲覧でき、コメントを加えることもできる。経営層も毎日目を通している。苦情の「見える化」によって、苦情件数は減少している。

*苦情対応(個別の対処ではない)によって、サービス品質が向上した場合、長期には苦情件数は増える。顧客の期待値が高まり、「○○ともあろうものが」の、二流企業でなら苦情にならないものが苦情になるからである。ドンキの店員の態度が悪いと文句を言う客は少ないが、三越では頻発するのはそのためである。

 市場志向とは、「顧客要求に関する市場知識を組織として生成し浸透させ活動する」ことである。市場志向は、顧客満足と企業収益と相関する。

《14. コミュニティにおける外食サービスのマーケティング》

 企業と顧客とサービス提供者の三者関係は、サービス・トライアングルと呼ばれる。

 マイレージのようなロイヤリティ・プログラム(購買ポイント)には効果が無く、サービス提供者を軸としたインターナル・マーケティングやインタラクティブ・マーケティングが注力するようになった。

 地域社会の中で、カフェは「溜まり場」「居場所」となる。コミュニティカフェの内、黒字なのは1割程度で、自治体からの助成金で成り立っている。

 来店者のニーズに対応したワークショップ(学習会)やランチョンミーティングやBBQやパーティを企画すれば、客は客を呼ぶ。

《15. 非営利のサービス・マーケティング》

 二酸化炭素を最も多く輩出しているのは発電所などのエネルギー転換部門。太陽光発電では、買取価格が下落している。

 2016年に「保育園落ちた、日本死ね」は国会でも取り上げられ、保育施設の充実が図られた。保育園では、37.5度以上の熱がある子供を預かってくれない。訪問により自宅で病児を看る専門スタッフによる病児保育サービスが必要である。