「変わる家族と介護」 春日キスヨ 2010年 講談社現代新書

 介護についての新しい視点を得ようと読んだのですが … 身につまされる内容でした。とても参考になりました。有難う御座いました。 以下はこの本の引用と要約です。


《はじめに》

 臨床社会学は、まず現場に出向き、状況に対する人々の解釈や人間関係、社会の仕組みをを読み解く社会学。

 家族にセーフティネットを担わせる形で作られている日本の福祉制度のあり方が限界に達し、どこにも担い手が居なくなったのが実態。4人以上の子供、子世代の安定した雇用環境、子世代の高い結婚率、専業主婦としての息子の妻の存在、という条件はもう無い。子世代と同居していない世帯が全高齢者世帯の半数を超える。専業主婦の割合は低下し、年金制度により高齢者の多くは経済的に自立した。

 高齢者が要介護状態になったとき、家族と同居していながら頼るべき家族がいない状況が多発する。

《1. 親に依存する同居中年シングルたち》

 独身の子と同居する高齢者が増えている。50歳時の未婚率を示す「生涯未婚率」は上昇し続けている。

 子供と暮らしている高齢者は、見守りの対象から外される。子供に介護能力が無い場合でも必要な介護サービス利用の制限を受ける。子供の収入が無い/低い場合、介護に親の金の全てを使えない。生活保護は、親に一定の収入がある場合には、その子供が受給対象とされることは希である。

 家族が何でも言い合える関係は、一種の神話である。家族だからこそ、何も言えない関係になってしまう。

 独身の子と要介護の高齢者の世帯は、一人暮らしの高齢者世帯に比べて社会的に孤立しがちであり、親子双方が深刻な危機に陥る可能性が高い。

《2. 介護を担う独身の息子の孤立と孤独》

 親の介護を担う無職の独身の息子の評価は低い。親ですら「働いて嫁をもらえ」と迫る。要介護の母親でも息子の面倒をみるという役割感は根深く内面化されている。

 親に対する想いはあっても、介護力不足により、高麗者虐待に陥ってしまう。親が認知症であれば、その危険性はさらに高まる。

 働いて得られる収入と、働くことで支払わねばならない介護サービス利用料との差引勘定の結果、働かない方がましということになる。親亡き後の生活はどうなるのか。将来への希望が無く、自己崩壊の危機にさらされる。中年失業者の心の傷は深い。単なる就業支援では不十分である。

 男女共に、四人に一人は生涯未婚になる。非正規雇用者は有配偶者の割合が低い。男性の年収と有配偶率は比例している。食えなくなった中年男性が親の年金で生活することが、一般化している

《3. 独身女性の介護と金縛り》

 独身女性が、親の介護のために仕事を辞めた場合、親子共に良い結果をもたらさないことが多い。親の経済力に依存する娘は、親が死ぬまで介護に縛り付けられ、年老いていく。

《4. 娘家族・息子家族と親の関係》

 (地方都市では)夫の稼ぎだけでは家計は苦しい。母親と娘の密接な関係性は「一卵性親子」と言われる。女性たちは実家の親を優先する。日常生活のつきあいでは娘家族との緊密な関係が持ちながら、息子家族と同居する。同居しながらも息子家族とは、疎遠な関係である。要介護になったとき、娘が親を引き取る形にはならない。一方、息子の親は家庭内一人暮らしになる。

 長寿社会の高齢者には、穏やかな老後は無い。子供に親の介護責任を負わせない社会体制を構築していく必要がある。

 介護は、入浴や排泄の介助など相手の体に触れる。介護される側にとっても。自尊心に関わる。息子の妻(嫁)と、夫の親の介護に対する関わり方が最も大きく変化している。女性たちは「嫁」という立場を脱却している。

 夫婦いずれかが健康であれば看ることは可能だが、どちらも要介護状態になる場合も増える。

《5. 夫が妻を介護するとき》

 三世代世帯であっても、配偶者に介護を期待する割合が多い。男性介護者が介護に直面して困るのは、炊事・掃除・洗濯・買物の日常の家事である。要介護の妻は劣悪な状況で暮らさねばならない。

 現在では、最も多い虐待加害者は息子であり、次に多いのが夫である。介護を担う意思を持つ夫の支援は可能だが、その意思のない夫に対する支援は困難である。

 夫婦それぞれが異なる行き場(生き場)を持ち、外の社会とつながることが大切だ。仲の良い夫婦であっても、仲の良さを維持し続けるためには、外の社会との繋がりが必要となる。

 現代の社会に必要なのは、一人一人、個人を支える社会の仕組みである。それが、家族の愛情を維持する力となる。

 現行の介護保険の基盤、保険料支払いと、サービス利用時の一割負担の基盤は脆弱である。

《6. 希望はあるか − 同居家庭内一人暮らしの孤独を超えて》

 親の言い分よりも妻の言い分に耳を傾ける夫が多い。適切に関係改善を図れる息子は少ない。

 長生きすればするほど、肩書き抜きで「人とつきあえる力」こそが大事な時代になっている。

《あとがき》

 家族というセーフティーネットが破れた。持ち家率の高さなど高齢世代の経済力によって子世代の貧困が覆い隠されている。