「老いの俳句」 坪内稔典 2023年 ウエッブ

 タイトルに惹かれて読んでみました。諧謔な味もあり楽しく読ませて貰いました。ありがとうございました! 以下は特に印象に残った句などを引用させて貰いました。


・麥丘人とカタカナ語

 鯛焼きも冷めては死魚と同じこと 麥丘人

 死んだばかりは刺身です(金田一秀穂)

・俳句の老人問題

 生き損ない 天野忠

 今日、俳句人口の大半は老人である。

・演じる時彦

 耳遠き夫婦冬夜の物語 草間時彦

・賢明な老人はいや

 椋の実を食べて小鳥になれるなら 大石悦子

 俳諧に息づいているのは俗を生きる言葉だよ。… いつの時代も小さな風雅に自足する大多数の作者がいたのです。

 ここ数十年、俳句界の大多数が女性になりました。

・老虚子の傑作

 遠山に日の当たりたる枯野かな 正岡子規

 蛇逃げて我を見し眼の草に残る 正岡子規

 去年今年貫く棒の如きもの  正岡子規

 「去年今年」は月並句の傑作である。作者の言おうとすることがストレートに伝わる。読者は「うまく言ったなあ」と納得する。

・俳句の傑作について

 万緑の中や吾子の歯生え初むる 草田男

 傑作の鑑賞も定まっていない。揺れのあることが傑作たる所以かも知れない。

 作られている俳句の99%は、月並みか独り善がりの句だ。

・発句派と俳句派

 生徒から学ぶ人になったときがまさに先生。生徒の上に立ったらダメ教師です。

 発句派は、俳句は連歌・連句の発句の伝統を引くと思っている。後に続く七七を意識する。切字が大事、季語は必須。発句は挨拶。時候に触れる。

・五七五の言葉の絵

 古池や蛙飛びこむ水の音 芭蕉
 いたいけに蛙つくばう浮葉かな 仙化

 作者はこのように考えていたからこのように読むべき、という読みだけは一度退けたい。

・言葉との体力勝負

 鮟鱇の骨まで凍ててぶちきらる 加藤楸邨

 三月の甘納豆のうふふふふ 坪内稔典

・あなたのお茶碗

 本屋の俳句コーナーには、夏井いつきの俳句入門書ばかり。

・老い ― 誓子と信子

 海に出て木枯帰るところなし 山口誓子

・言葉の勢い

 しんしんと肺碧きまで海の旅 篠原鳳作

・破格、反抗、新しさ

 じゃんけんで負けて蛍に生まれたの 池田澄子

 先祖にはイソギンチャクがきっといた 坪内稔典

・五七五の裏には何もない

 内面とか心の内とかは幻想。絵空事に過ぎない。心の深みなるものは作り話にすぎない。

 たんぽぽのぽぽのあたりが火事ですよ 坪内稔典

・口語をころがして

 水枕ガバリと寒い海がある 西東三鬼

 びわ食べて君とつるりんしたいなあ 坪内稔典

 水脱いで春の真昼の河馬二トン 坪内稔典

 俳諧は口語を活かす表現であった。

 佐保姫の春立ちながら尿(しと)をして 山崎宗鑑

 おでん酒ちくわの穴が現住所 伊藤五六歩

・モーロク俳句へ

 さみだれや大河を前に家二軒 与謝蕪村

・老人の俳句

 老人になってからの句の多くは平凡(月並み)または独善である。

 草餅にゑくぼを一つ付けてやろ 行方克巳

・俳句のある場所

 句会という原点を大切にしたい。