「物流がわかる」 角井亮一 2012年 日経文庫

 角井氏は、船井総研を経て、家業の物流会社を継ぎ、()イー・ロジットを設立した人物。事業家だけに、現実感のある筆致は流石。なのだけれど、ちょっと入門すぎ。とは言え、楽しく読ませて貰いました。そして、文章が変態なのは、校生の手間を省いたから?何はともあれ、ありがとうございました。 以下は、この本の要約と引用です。*印は、関連情報の検索結果です。

1.物流の基本と役割

 ちゃんとモノが動くのは当然ではない。物流は外から見えない機能なので、真似がしにくいのです。

=物流会社の機能=
・輸配送…宅配・特積・貸切
・保管…在庫の数量と在所
・荷役…荷物の受け・運び・出し 搬送は、構内での移動
・包装…個装・内装・外装 製品を保護する/製品を販売する/運びやすくする包装
・流通加工…値札などの添付
・情報機構…荷主ごとに異なる作業を無くし、標準化する

=荷主の機能=
・管理
 − 物流が営業の言いなりになって、物流原価すら計算していない企業があります。物流原価を月次で行い、増減を知り、その要因を探求します。
・調整
 − 物流の問題は、物流部門だけでは解決しません。

2.物流戦略の考え方

 マクドナルドが週3回の納品を週5回に変えました。冷蔵庫の大きさを小さくして、席数を増やし、ピークタイムの売上を増やしたのです。マクドナルドは、「60秒でハンバーガーが出てくる」ファーストフード。スピードが「マクドナルドらしさ」であり、そのスピードの追求を一貫して続けています。製造・物流・販売全てに「らしさ」を追求して、顧客満足度も従業員満足度も向上し、売上も増加します。

 製造と販売の同期化では、物流が調整役になります。需要予測は利害関係がバイアスになります。物流部門が、自社の主力商品の予測をしている食品メーカーや、ベンダーに販売数量や需要予測を見て判断してもらうアスクルのような会社もあります。

 物流拠点の数の基本は1ヶ所です。分散すると、生産性が低下し、在庫が増えるからです。関東圏に通販の顧客が集中しているため、1都3県に物流センターを借りる通販会社が増えました。

 在庫を持つDCと、在庫を持たないTC。TCで成功している企業は、生産地を地方に持ち、生産立地の倉庫を工場内に持って、大型で運びTCで積み替えるやり方を採用しています。

 アイリスオーヤマの大山健太郎社長は、「物流拠点に工場を作ろう」と言います。消費地を見据えて、販売先の納品センターや店舗への納品に便利な場所に物流拠点を置き、そこに工場を作ります。

 仁川国際航空は、世界最優秀空港賞」を7年連続で受賞。あまりにも他空港を圧倒しているので、この賞がなくなることになりました。ランニングコストを下げる工夫として、天下りを受けている会社とは契約しないという規則があります。空港には出店しないルイヴィトンが、この空港だけは出店しています。

 貨物量世界2位は、米国フェデックスのハブ航空メンフィスです。ハブ&スポークの考え方を大学の論文に書いたフレッド・スミスは、フェデックスの創業者です。

 世界5位は、USPワールドポートがあるルイビルです。米国の航空貨物は、基本「翌日配達」です。

3.物流で起こす流通革命 − ネット専業vsリアル店舗

 今では、家族一人一人別のシャンプーを使っています。多品種少量消費-生産の時代です。物流現場も、今はバラ単位になりました。

 CVSでは、1アイテムあたりの店頭在庫量を減らし、倉庫を小さくして在庫を減らしました。多頻度配送が必要になります。物流センターを一元化しました。日本の小売業は、寡占化が進んでいないので、バイイングパワーは強くありません。

 歩いて行ける場所のお店や宅配するお店がお客様から要求されています。小型店舗化が進み、「まいばすけっと」や「マルエツプチ」が展開されています。

 カクヤス(酒販店)は、東京23区内は1時間以内で無料でお届けします。カクヤスでは、飲食店の利用が増加しています。商圏内の顧客密度が採算性の鍵です。オンラインなどで買わない理由の36%は送料です。オフィスグリコは、お客様の近くに商品を「置きに行く」商売です。

 ネットスーパーなど、宅配サービスは増加しています。CVS留置サービスは、店舗を地図でないと選べないので、インターネット以外の注文方法では使えません。顧客の近くに商品を置くには、マルチチャネルでなければなりません。

 直接販売には、通信販売とネットワーク(人脈)販売があります。ネット通販の売上は、百貨店を超え、CVSさえも超えました。人脈販売の商品は、説明が必要なものが多くなっています。商品が代引きで届くと、受取拒否が多いのも特徴です。

=欠品を防ぐ=
・買われてから商品を補充するまでの時間を短くする
・自動補充
・店頭での検品をさせない(ノー検品)
・物流センター経由の物流(一括納品センター)

 納品時間を決めて棚入れの予定時刻を定め、人件費を抑えます。定時納品によって売れる時刻以前に棚入れをします。食品卸では、生鮮食品も含めたフルライン化が進んでいます。

 トイザらスは、1店舗の納品量がトラック1車分になるまで集めてから出庫します。店内作業効率を高めるために、商品分野別や店舗レイアウト別や店舗通路別に分けて、納品するが増えました。

 海外で商品検品と店舗別仕分けを終わらせ、日本の物流拠点に納品し、ケース別に仕分けして店舗に納品することも増えました(直流)。日本に輸出する際には、SCM(出荷ケースごとの)ラベルを発行します。そのラベルのバーコードをスキャンして店舗配送を簡便にしています。

 アスクルの、ECO-TURNは、梱包する箱(通い箱)や紙(通い袋)を持ち帰るサービスです。

 宅配の不在対策として、ガスメーターボックスや洗濯機の中を指定する、置き場所指定お届けがあります。

 誤出荷率は、100PPM(PPMは100万分の1)が目安です。[誤品数/出荷(行)数][誤アイテム/出荷(行)数][語数/出荷(行)数][配達時間に関する苦情件数/出荷(行)数]が指標になります。

 リアル店舗のショールーム化が進んでいます。店頭で見てバーコードスキャンしてネットショップで買う。価格がネットと同等なら、自社アプリを導入することを検討します。

4.先進の物流への取り組み

 アスクルは、顧客視点の「翌日配達」という言い方をします。物流センターの従業員は自社雇用。配送の6割を自社グループのBizexが担っています。ドライバー研修では、挨拶研修/身だしなみ研修/応対研修を実施しています。顧客が直接にドライバーに電話連絡し、間違い無く速いお届けも実現しています。
*アスクルとヤフーとの資本業務提携の行方はまだ不透明です。

 顧客第一主義で有名なザッポスは、「(生産性は気にせず)お客様のことを考えて行動しよう。そうしたら利益は後でついてくる」がモットー。従業員を大切にすることで、「ハッピーな人は自主で動く」ことが期待されます。

 靴下屋(タビオ)は、書籍の短冊をヒントに、靴下一足一足にカードを付け、売れた商品のカードを送ってもらう仕組みを作りました。自社POSを設置できない場所には出店しません。製造企業はPOSを見て製造計画を決めます。染色会社や糸商にもPOS情報は流れています。直営店やフランチャイズ店を作り、販売状況を把握しながら、商品を送り込むようになっていきました。

 青山は、無人ピッキングの物流センターを開設。閉店後発注したものを、夜間ピックングし、店が開く前に納品します。バックヤード在庫を削減し、必要な店舗面積を削減しました。

5.物流管理をしよう

 物流過程の再構築は、顧客の受注から納品までのリードタイムの変化を伴います。販売戦略と整合性をとり、調整する必要があります。

 予算管理をしている会社でも、物流原価を出せない会社が多いものです。物流原価は管理会計から得られます。管理会計では、物流拠点ごとに、人件費、配送費、保管・流通加工費、資材費、自家倉庫費、マテハン費用、情報処理費を捕捉します。

*マテハン(マテリアルハンドリング)とは、機械による作業。物流業務に用いるのが「マテハン機器」。物流拠点内の原材料・仕掛品・完成品の移動に関る取扱いを指します。

 物流外部委託(アウトソーシング)では、委託先からの請求の妥当性を評価する為にも、自前の物流原価を把握する必要があります。生産部門や営業部門に埋もれたいた原価が、支払物流原価として顕在化します。

=在庫管理の基本=
・在庫数…1)帳簿と実棚との在庫差異 2)安全在庫数:リードタイムと販売数量
 まず、欠品率で適正在庫数を管理します
・在所…在所(棚番)管理 固定在所:決められた番地に決められた商品を保管する

 棚番と商品コードを紐付けし、同類商品は隣同士に保管しない。欠品率の高い商品を納入している仕入先の検品を行い、ご納品が無いか確認する。ハンディ端末を使用していない現場では、作業員の思い込みによる間違いを防ぐために注意書きを掲示する、などの工夫が必要です。また、暗い場所には照明器具を取り付けます。補充のタイミングのルールを決め、棚に入りきらない場合にどうするかも決めます。

7.人材育成と物流品質

 企業方針に基づいた「物流方針」を立て、物流方針に沿った改善目標を定め、目標達成のための過程を設定します。そして、必要な教育訓練を計画します。

 他社の物流を学ぶ時には、自社で改善したいことが明確になっていなければ学びになりません。

=ドライバー教育=
・安全運転
・運転技術
・荷扱い
・マナー
・荷主とお届け先との接客

=誤納品の防止=
・出荷前の商品確認と、配達時の商品確認
・総品確認(トータル・チェック):トータルピッキングの後、個別仕分け
・誤数を減らす:1個受注が多い場合は、複数個のみ個数の表示を変える
・ピッキングリスト:品番でピッキングと確認(下3桁)ができるようにする
・在所:似た色、近いサイズを隣どうしに置かない
・伝票:ピッキングリストと荷札と納品書を一体型伝票にすることによる誤配送先が減る
・出荷先:出荷先名だけでなく、住所の市区町村を確認する
・配達先の規則:配送員に配達先ごとのルールを書面化し携帯させる