「在庫管理の実際」 平野裕之 1991年 日経文庫

 古い本ですが版を重ねる人気本です。読んでみると、製造工場の在庫管理の「家元」が書いた本だけあって、現場感が漂う迫力ありました。久しぶりに、臨場感を味わいました。有難う御座いました。 以下はこの本の要約と引用です。


《まえがき》

 在庫は、仕入-生産-販売の流れの中で発生します。在庫を単独で管理しても意味はありません。

 在庫を持てば、顧客や後工程に迷惑をかけなくなります。在庫に頼れば頼るほど真の問題は解決されません。

《1. 在庫管理とは》

・在庫の種類(場所)

(工場内)倉庫
工程内仕掛り
工程間仕掛り
支給品

・適正在庫の算出方式

 適正在庫=年間売上高/商品回転率

 売上高は揺れ動きます。商品回転率もリードタイムや歩留まりの変化で変わります。分母も分子もままならない数字を基に算出されます。

 適正在庫は「ゼロ」です。最も優れた管理は、「管理をしないこと」です。

《2. 既にある在庫を管理する》

 在庫回転率は、他の係数と尺度を合わせるために、使用金額で算出します。生産性指標の求め方はや指標は、「中小企業の経営指標」に依ります。

 製造のやり方は変わらないのに回転が鈍ってきたのは、売上が落ち込んできた証拠。売上拡大策を検討すると同時に、製造は引取り型に切り替えます。

《3. 統計的在庫管理手法の実際》

・定量発注方式

 定量発注方式は、発注点と発注量を決めれば手間がかかりません。但し、需要の変動の激しい品目には不向きです。自動発注室テムにすることが可能。カンバン方式にもなります。

 一定の発注量は、「経済発注量」です。経済発注量は、在庫維持費用と発注費用の和が最小となるとき/等しくなるときです。

 購買担当や外注担当や資材部門の人たちは、何よりも欠品によるラインストップを恐れます。そこで、「安全在庫」を持って、需要の変動や納期のバラツキに対応しようとします。

 定量発注方式方式は、B-C品目を中心に管理の手間を省くkとが目的。帳簿による管理を避け、「目で見る管理」を採用します。ダブルビン法は、2つの棚や箱を用意し、一方が空になったら発注します。先入れ先出しに近い形が採れます。協力工場との通箱を使った「箱かんばん」方式も可能です。

・定期発注方式

 需要予測と生産計画を基に発注量を決定します。需要変動が大きいA品目に向いています。

 発注量は、発注サイクルとリードタイムを合わせた期間の生産計画数量を求め、計画外の変動を過去の実績から算出して加算します。調達リードタイムが長ければ、予定消費量は精度を欠き、安全在庫量も多くなります。

《4. 入出庫管理と棚卸の実際》

 入出庫伝票を用いて倉入れ・倉出しを行う方法を、「実入出庫」と言います。伝票を用いない入出庫は「みなし入出庫」と呼びます。

 みなし入出庫は、納入され、検収されたら在庫に加算します。工場での内作品なら、製造報告書での完了数量を以て入庫とみなします。

 製造報告書により完成が報告されると、完成のために使われた品目が、それに必要な量だけ出庫されたと見做して在庫から引き落とされます。部品表により、この事務作業が削減されています。リードタイムが長いもの、不良品が多いもの、歩留まりが安定しないものは、在庫を狂わす原因となるので、みなし入出庫ではなく実入出庫にします。

《5. 段階的在庫管理の進め方》

 帳簿在庫と実在庫が一致している企業は、管理体制がしっかりしているか、辻褄合わせがうまい企業のどちから。多くは後者です。

・在庫ゼロ方式への手順

1)工場を資材倉庫と考える 〜 入出を把握する

 経理上の伝票だけで在庫を把握。出庫伝票で資材に展開し、引き落とし(みなし出庫)することで、資材在庫を把握します。資材マスタに、歩留率(ロス率)を登録します。資材に展開するには、製品構成マスタが必要です。ラフな在庫管理難なので、実棚との差異調整を行う必要があります。

 入庫情報:仕入伝票(納品伝票)
 出庫情報:出荷伝票(売上伝票)

2)工場を資材倉庫と製品倉庫に分ける 〜 資材の補充や受注の引合に対応する基礎

 受注引合時に製品在庫の有無を即答し、引き当てることができるようになります。

 入庫情報:資材−仕入伝票(納品伝票)
      製品−完成伝票
 出庫情報:資材−完成伝票
      製品−出荷伝票(売上伝票)

 完成報告書や製造報告書は、生産日報や作業日報で代用することもあります。返品などをマイナス入力せず、「返品」として正規のルールで入力することが必要です。

3)仕掛在庫を資材倉庫から分離する 〜 工場内を一つの工程と見る

 出庫伝票が登場します。製造部門からの出庫依頼票によって払い出しを行います。予め起票する部署と伝票に流れが標準化されていなければなりません。受払担当者を配置します。余った資材は、「戻入(れいにゅう)伝票」を起票して入庫します。

 入庫情報:資材−仕入伝票(納品伝票)
      仕掛−出庫伝票
      製品−完成伝票
 出庫情報:資材−出荷伝票
      仕掛−完成伝票
      製品−売上伝票

4)工場の外の仕掛在庫も管理する

5)工程別仕掛在庫の管理

 工程別の仕掛在庫を把握するには、製造現場でのコンピュータ管理が必要だと言われますが、作業日報によって工程間の移動を行うこともできます。作業指示書が作業日報を兼ねている方式だと、工程進捗管理にも利用できます。

 工程の順序を認識するために、工程の順序を示した「工順マスタ」が必要です。工程別仕掛をつかむ上で問題になるのは、工程が枝分かれする場合です。共通部品の場合は、中間在庫に入庫した形をとり、そこからの払い出しは出庫伝票に基づいて出庫処理します。MRPが稼働していれば、出庫指示書が自動で発行されます。

《6. MRPの実際》

 MRPもJITも、多品種少量・短納期生産という背景の中で育ってきました。MRPは、在庫管理の手法というより、生産管理システムです。

 MRPは、米国生産・在庫管理協会の提唱により誕生しました。MRPは「資材所要量計画」や「材料所要量計画」と訳されています。生産に必要な材料や部品の手配計画をする、日程計画の一つです。

 MRPでは製造の手順通りのストラクチャ型部品表を用います。MRPは、生産計画表を渡されてから、作業指示書と注文書の発行までを行います。必要な情報は、生産計画と部品表と在庫です。リードタイムは部品表に記載されます。

1)部品展開
2)総所要量算出
3)正味所要量算出
 発注残(注残)や在庫を割り当て、不足となる所要量を求める
4)リードタイム計算
 製造予定日もしくは発注予定日を決めます
5)オーダー作成
 作業指示書と注文書を作成します

 在庫ポイントを製品構成のどのレベルに設定するかを、「生産形態」と言います。

1)製品引当生産
 製品まで造ってしまい、注文を受けてから完成している製品に引き当て出荷する方式です。顧客が要求するリードタイムが短い場合です。
2)部品中心生産
 予め部品までを造っておき、注文を受けてから在庫ポイントの部品を払い出し製品にして出荷します。
3)個別受注生産
 材料レベルを在庫ポイントするか、在庫を持たずに注文を受けてから生産する方法です。

 現実に即した部品表を作る仕組みと、設計変更などにより変化する部品表を維持していくシステムが重要です。

 ロットの大きさを決める方法。固定数量方式は、需要が安定している品目に適しています。大きさは、経済ロットサイズとします。固定期間方式は、需要が不規則で高価な品目に適しています。各期間に発生した正味所要量をそのままオーダー数量とする素正味発注量。最小総費用法で大きさを決める方式などがあります。

 リードタイムの長さは、在庫の大きさに比例します。短くする工夫や改革が必要です。リードタイムを部品表に登録するか、製品構成データに記録するかでリードタイムの持つ意味は違ってきます。製品構成データにリードタイムを設定することで、資材の在庫期間が短縮でき、加工や組立の計画をより細かく行うことができます。

《7. 在庫ゼロ生産の実際》

 工場の柔軟性を高めるにはリードタイムの短縮が最大のテーマとなります。在庫量を1/2にしたければ、リードタイムを半分にします。出荷ロットを1/2にして、出荷回数を倍にします。

 生産には、金型や刃具の切り替え、組立工程での部品の切り替えなど、段取り作業が発生します。経済ロットは在庫維持費用と段取り費用との総費用が最小になる数量を言います。需要は考慮されていません。経済ロットで造るということは、不必要なものを、不必要なときに、不必要な量だけ作ることになり、当然、在庫がたまります。段取りの改善を図り。顧客の要求に従ってより細かく品種の切り替えをする方が経済的です。

 一個ずつ完成品にする造り方を「流れ生産」と言います。流生産とは、一個ずつ工程の順序に従って規則正しく作ること、と定義できます。流れ生産では、一つの工程で一加工をしたら、そのワーク(加工物)は次工程の加工をします。そして一個のワークが完成品になるまでこれを繰り返します。

 流れ生産ではマテハン(運搬)を無くす/小さくすることが要求されます。工程の順に機械を並べます。通称「ライン」と呼びます。

 工場に問題はつきものです。欠品・不良・機械故障などの工場内の問題や、購入品・外注品の納期遅れや販売部門とのやり取りのまずさなど工場外の問題も起こります。このような問題を隠すように、在庫は溜まります。在庫ゼロで物を造るといいうことは、これらの問題を表面化し、これを改善改革していくことを意味します。

・流れ生産を実現する手順

0)意識改革と5S
 社内セミナーや勉強会、実際の改善活動を通じて、固定観念を打破します
 整理・整頓・清掃・清潔・躾を実行します
1)工程の流れ化
 モデル職場での点の改善から入ります
2)工場内の流れ化
 モデルラインのノウハウを活かして横展開します
3)工場間の流れ化
 販売と工場、設計と工場、協力工場との関連 … 全体の流れ化

 各工程が同じピッチで物を造ることを同期化と言い、このピッチ(時間)は「タクトタイム」と呼ばれます。機械は、ラインの中に組み込める小さなものにします。汎用機能は取り去ります。タクトタイムで、標準化された作業順序で一つずつ造ります。「問題があればラインを止めよ」と公言し、「止まるライン」にすることが大切です。

 各工程の担当者を決めてしまうと、受注量が増減しても、人数は一定でやるしかありません。受注量の変動に合わせて最も少ない人数で対処することを「少人化」と言います。少人化を実現するには、加工手順に従ってより多くの工程を持つ「多工持ち」が必要です。

 どうしても同期化ができない工程では、引取り生産(カンバン方式)=後工程が「必要なものを、必要なときに、必要なだけ前工程から引き取る」方法を採ります。必ず後工程が引き取りに行きます。前工程は、引き取った分(かんばん)だけ生産する。かんばんは、現物と一緒に動きます。物と一緒の時は部品の表示の役目。物とかんばんが離れた時は、作業指示の機能をします。

・5Sの意味

整理:要るものと要らないものを分け、要らないものを捨てる
整頓:要るものを使いやすいように置き、誰にでも判るように明示をする
清掃
清潔:整理・整頓・掃除を維持すること
 躾 :決められたことを、いつも正しく守る習慣をつける