「オムニチャネル戦略」 角井亮一 2015年 日経文庫

 著者は、通販物流企画会社イーロジットの経営者であり、今猿でもあります。事例の紹介を中心に、手堅くまとめてあります。薬学部の講義の参考になりました。ありがとうございました。以下は、この本の要約と引用です。*印は、生禿の見解とWEB検索の結果です。


《1. オムニチャネルとは》

 2014年の小売・サービスに占める電子商取引の割合は、4.37%になりました。

 オムニチャネルとは。「消費者が、複数の経路と方法で商品の情報の入手と購買を行い、複数の経路と方法で商品を受け取ることができる仕組み」。どの経路で購入しても、同じ受け渡し方法が可能。店舗受取りや宅配が選べます。決済も同様に、現金やクレジットなどを選べます。

 ネットとリアルの関係はスマホの登場で変わりました。クーポンを印刷して店舗に持参する必要がなくなりました。その場で商品を検索し購入できます。平成25年の調査では、1年間にネット通販を利用した人は44%になります。

《2. ネット通販の成長、リアルとの攻防》

 店舗に買物に行くことが困難な消費者(買物弱者)が増えました。女性も有業率が増加しています。

 インターネットが生活インフラになり、どこで購買するにしてもネット(スマホ)利用の情報収集が普通になりました。

 少子高齢化の社会環境では、顧客都合の時所に合わせた接点を組み合わせるオムニチャネルが必要になります。

・オムニチャネルの条件 〜 いつでも-どこでも、同じ
商品マスターの統合
在庫の一元管理(数量管理とロケーション管理)
販売価格の統一
受発注-物流管理-顧客管理の一元化
仕入-受注-配送-接客のプロセスの統合
*販売促進の統一

 米国百貨店チェーンのメイシーズは、実店舗とECの購買部門とマーケティング部門を統合しました。

《3. オムニチャネルが成功する条件と実践のステップ》

 オムニチャネルはロジスティックスの課題。

・在庫引当とピッキング
店舗在庫/物流センター在庫
店舗ピッキングは固定費が少なくて済む
物流センターから引当てる場合は、配送時間に留意する
物流センターは、店舗への供給ラインとは別に、通販センターを使うことが多い
荷姿も手順も異なり、兼ねるのは不能率

・売上の計上
 売価が同一が前提
*顧客接点の責任によって売上を帰属

 カメラのキタムラでは、受取店舗で売上が計上されます。また、スマートフォンアプリに「電話で相談」ボタンがあります。東急ハンズでは、店頭で商品がスキャンされたEC購買の売上は店舗に計上します。「スマートフォンのスクリーン内にアプリがあるかどううかが、顧客接点としての必須条件」。ブランドのファンにクーポンを発行しても売上効果は望めません。

・顧客接点の課題
 商品を渡すだけ/返品するだけのお客様に、好印象の残る応対ができるかどうか。スタッフの教育訓練が大切になります。*「私のお客様」から「我社のお客様」へ。

 オムニチャネルは、受注とお渡し方法がお客様のご都合で自由に選べるサプライチェーン・マネジメントであり、高度な顧客管理(CRM)が必要です。

・在庫管理
 どういう状況にある在庫なのか。すぐに動かせるのか、出荷までにどのくらいの時間がかかるか。在庫状況(店頭/倉庫/移送中/取り置き/予約)を即時(リアルタイム)に把握します。

 お客様の最も都合の良い時と所で受け取れるように、受注-配送の業務過程を管理します。

《4. 先行する米国 − 最新ビジネスモデル》

 ウォルマートの店舗で買うお客様の53%がアマゾンの利用者。全ての小売業はオムニチャネルにならざるをえません。ネット通販の普及により、小売業では、売価と原価の調整だけで収益を維持することができなくなりました。

 米国の宅配は発注から1週間程度かかり、休日の配送はしません。配送料は有料。不在時は玄関先に置いていきます(置き配/ハン取不要)。米国のサービス率(注文を受けて納品できる率)は90%程度(日本では99%以上)。結果として、日本では、米国の3倍の在庫を持っています。日本のCVSの1日3回配送体制は、米国では不可能。アマゾンは、物流に膨大な投資を行い、日本水準のサービスを追求しています。

 物流センターは、生産か消費の場所に配置します。ウォルマートは、全米158ヶ所に物流センターを保有しています。半径300kmの7店舗に商品が供給できるように拠点を作ります。7200人のトラックドライバーがいます。

 北米で38%のシェアを持つアマゾン。UPSはB2Cの宅配の9割以上のシェアを持ち、アマゾンでさえUPSの配送料を受け入れざるを得ません。

 米国の外出がちな人にとっては、宅配は便利ではありません。ウォルマートでは、ネットで買って店舗で受け取ることができます。ウォルマートは、全米3位のEC企業でもあります。

 「シップ・フロム・ストア」は、ネット注文品のピッキングを店舗で行い、店舗から配送する仕組み、配送ルートを短縮でき、経費も削減できます。また、小型店は大型店の在庫から移動してもらう「テザリング」も増えています。ネット注文品を店舗で受け取るのは「サイト・トゥ・ストア」。

《5. 日本のオムニチャネルの行方》

・配送能力の整備

 1989年の宅配個数は年間10億個。2013年には36億個を超えました。運送業界の問題は、ドライバー不足に尽きます。給料が相対的に低くなってしまったからです。荷主から値下げ要求と、規制強化で長時間運転ができなくなり、賃金が下がりました。

 荷物のピーク数量の飛躍的な増大。特異日には、配達能力を遥かに超えます。

 再配達率は2割。配達の時間指定がある場合でも、再配達率に違いは無いのは、再配達依頼をしなくても何回も届けに来てくれるためだと言われています。


□事例□

【omni7】
複数の業態の店舗からの注文品を、全国1万8千の7-11で受け取れる。
主催;セブン&アイ
参加企業:
 セブン・イレブン/セブン・ネットショッピング
 イトーヨーカドー
 そごう/西武
 ロフト/赤ちゃん本舗
受渡場所:参加店舗の店頭
*上記以外にも参加企業を募りましたが、当初より増えていません。そのことからも、思うように展開できていないと推測されます。

【SGローソン】
佐川急便とローソンの合弁会社
店舗から半径500m圏内の世帯が対象として、配送を請負う
店舗バックヤードの一部を配送デポとして使用
店舗を再配達の受け取り場所とする
宅配便の配送スタッフがローソンの御用聞きを行う
ローソンは、アマゾンの商品受取りサービスも行っている

【楽天とヤマトの提携】
楽天市場で購入した商品を、ヤマト運輸が契約するCVS(ファミリーマート/サークルKサンクスなど)や、ヤマト運輸の営業所(合計2.5万店)で受け取れるサービス。冷蔵・冷凍品も可能。
ヤマト運輸の営業所では、アマゾンの商品受取もできます。アマゾンでは、ローソンやファミリーマートなど2万8千店舗で受け取れます。

【マツモトキヨシ】
専用アプリによる処方箋送信サービス。