桜が降り、顔馴染みの家守君が逝った。
このヤモリは今の我が家に縁のあるヤモリでした。このマンションを見に来たとき、家の中に居たのがこのヤモリ。不動屋さんは腰が引けていましたが、虫は苦手でも、爬虫類は平気な女房が、つまみ上げて手に包み、玄関先に逃がした。女房が虫に限らず、羽の生えて飛ぶものが嫌いだ。鳥も好きではない。でも地を這うものは好きだ。虫でも芋虫ならOK。ナウシカと同じように、王蟲でも心が通うと思う。
何軒か下見したして、ヤモリのいたこのマンションを購入した。引っ越してしばらくすると、玄関前の排水管からチョロチョロと、あのヤモリが姿を見せた。女房は喜んだ。この家には「家守」がついていると。娘も矢守と馴染んで?怖がらなくなった。もちろん私も、家守君が玄関前に居ると、誰かに踏んづけられては大変と、排水管に誘導したりして、大切にしていた。
先日、この家守君がじっと動かない。玄関の真ん前ではなかったから、そっとしておいた。翌日、娘が「家守くんの体の色が変わっている」と心配そう。ちょっとつついてみると反応が無い。逝ってしまったのだ。
この家守君は10年の間、我が家を守り続けてくれてた。ヤモリの寿命が10年あるとは思えないが、どうみても同じ姿のヤモリが、(代々?)10年間にわたって我が家の前の排水管に住みつき、家族を見守っていてくれたのは確かだ。
折しも満開の桜が散り始めた。桜吹雪の中で家守君は旅立って逝った。家の前の森に小さな穴を彫り、埋葬した。ありがとう。安らかに眠って下さい。
我が家の前の林の楓は、春と秋に紅葉します。桜吹雪が舞う団地丘陵。緑と赤。白と桃。花と葉が色めき立つ季節。ず〜と我が家を見守ってくれた家守君。君を忘れない。