「脳の探検 上」フロイド・E・ブルーム 1987年 ブルーバックス
古い本ですが評判になった本です。挿絵が綺麗なので買ってみました。ブックオフで上下で二百円ですからね。 やっぱり内容は少し古いけど、挿絵が良いので満足です。 以下は、この本の要約と引用です。
《1. 脳・神経系への招待》
思考の働きついては、まだ解っていません。
単細胞生物も、感覚を持ち、運動し、体内の栄養、呼吸系を調節し、生殖し、環境の変化に適応します。脳のないものもあるものも、同じことをしています。
神経科学は。脳が身体の内と外の環境に反応し、働きかける時に、脳内で起こる分子・細胞、細胞間の出来事を研究します。心理学は、生命体が特定の外的あるいは内的な刺激に、行動的にどのように反応するかを研究します。心理学の中で、言語や音声や形象などの抽象的な認識に焦点を合わせるのが認知科学です。
脳は、頭蓋骨内にある中枢神経系の一部。末梢神経系の一部で、自律的に働いている自律神経系。消化管の内在的自立神経系である散在腸管神経系。
小脳は、身体と四肢の位置情報が視床と皮質に至る前にその情報を受け取ります。小脳は、学習性運動反応の基本的な種類を蓄えています。辺縁系は、皮質の内縁の結合します。辺縁系は情動状態の調節を助けます。
間脳以下の脳の発達と主要な機能と構造は、鳥や爬虫類から霊長類に至るまで、殆ど変わりません。
《2. 脳の細胞組織》
どの神経回路も、ある瞬間には、そのほんの一部だけが活動しています。
ミトコンドリアは、糖分と酸素をエネルギー分子に変換します。小胞体の一つは、物質を合成するリボゾーム。もう一つは、輸送を担う平滑小胞体のゴルジ器官です。
軸索のシナプス小胞は、伝達物質の容器です。神経細胞には、感覚細胞と運動細胞があります。
生きている細胞は全て電気分極の性質を持っています。私たちの体液、血球が浮遊している血清、器官の細胞間を埋めている細胞外液、脳室を満たしている脳脊髄液などは、塩分を含んだ液です。ナトリウム・カリウム・カルシウム・マグネシウムなどはプラスの電荷として存在し、塩酸・りん酸・炭素と酸素から合成される酸などはマイナスの荷電(イオン)として体液中に存在します。
細胞の内側では、陽イオンが外側と比較して少ないので、細胞膜を境に全体として陰性になっています。この陰性電位は、原形質膜がすべての塩を同じようには通過させないために発生しています。カリウムなどのイオンは、ナトリウムやカルシウムのイオンと比べると、容易に膜を通過できます。細胞外液には、ナトリウムが多くカリウムが少なく、細胞内液の組成は、逆にナトリウムが少なくてカリウムが多いのです。興奮反応(ナトリウムの流入)は、正の電位の時間は大変短いのです。
シナプスの伝達には二通りあります。興奮(分極の減少)と、発火を妨げる抑制です。進化を通じて、脳の基本的構造は変化していません。但し、構造が高次に特殊化されていることは、重要な意味を持ちます。
単一源による発散性回路は、中脳と脳幹にのみあります。神経系の多くの活動を統合するのに重要です。
グリアの数は、神経細胞の5〜10倍あります。神経細胞と違ってグリアは分裂することができます。星状細胞は、神経細胞にブドウ糖を送り込み、血流の指令を出して、活動性の高い領域に酸素を送り込んでいます。グリアは、シナプス機能の活動を制御する信号を出すことに関与している考えられています。
中枢神経系の血管は、高分子をその壁面から送り込むことができません。脳の血管は、星状細胞に覆われて、脳側から隔離されています。
脳膜と脳脊髄液は、衝撃吸収系として働き、ねじれ、回転、衝突などを吸収します。
《3. 感覚と運動》
感覚連鎖における上位統合中枢は、他の情報源からの感覚や、過去の経験からの情報を付け加えます。検出されたものを決定されたものを「知覚」と呼びます。
血液などの化学的な調整は、内分泌器官によって支配されています。
同じ刺激に対する反応は弱まります。新しい信号と前から続いている信号が同じように強ければ、全ての受容器から流入する感覚情報の洪水は、私たちの能力を上回ってしまいます。
皮質の活動は、(縦方向に)柱状構造の中で局所的に起こっており、この柱状構造が皮質の単位となっています。
対象物の識別と空間位置の識別が、平行処理されます。第一次感覚情報の源は分離しており、独立にフィルターにかけられ再構築されます。平行処理により、敏速性が増します。平行処理されたチャンネルは、大脳皮質で再構成されます。
体にある骨格筋は、1つの関節で繋がった2つの骨に付いています。骨や眼や舌をある方向に引っ張る筋肉には、そんp反対方向に引っ張る筋肉が対応しています。
随意運動と反射運動。筋繊維の固有感覚は、筋紡錘と腱紡錘。脊髄反射の引き金になります。脊髄内での体のバランスなどの調整は自動的に行われます。
運動を引き起こす大脳皮質は、体表面の体性感覚の地図にあたる帯状の皮質部分と隣接しています。運動機能における小脳の正確な役割は分かっていません。
《体内環境の維持 − ホメオスタシス》
自律神経系の運動要素は、心臓や血管の平滑筋を神経支配し、内分泌線も神経支配しています。脊髄にある自律神経細胞は、内臓などから感覚情報を集めます。脊髄からの自律神経節への伝達物質はアセチルコリンです。交感神経系は攻撃や逃避に備えます。筋肉は交感神経だけの支配を受けています。
副交感神経の迷走神経と呼ばれるものは、心臓や肺や消化管の活動を担当します。副交感神経の活動は、安静と回復の条件を整えることです。散財性腸壁神経系も、独立した自律神経の一種。消化器の筋壁を神経支配します。
中枢神経は、自律神経と視床下部と延髄で結びついています。視床下部は内蔵機能を統合する場と考えられています。延髄には、呼吸と血圧と心臓のリズムを除く、全ての生体機能を維持する中枢があります。
内分泌器官は、別の器官の細胞活動を調節するために、血管中にある物質を分泌する器官です。内分泌器官は「線」と呼ばれ、分泌する物質はホルモンと呼ばれます。ホルモンは、伝達物質として働くものもあります。
《5. 脳のリズム》
身体のリズムは、脳を持たない生物でも存在します。ペースメーカー神経細胞は解明されていません。
光による生物時計は、ヒト以外では、松果線が働いていると考えられています。松果線内では、セロトニンは、ホルモンであるメラトニンに変換され血中に放出されます。
人体のリズムの大部分は、睡眠・覚醒周期に同調しています。科学者は、睡眠の目的を解明できていません。セロトニンは、眠りを引き起こす作用物質と思われます。
外界から隔離された人々は、24.8時間という太陰暦の周期に近づく傾向があります。
睡眠は脳の休止ではなく、意識の別の状態です。レム睡眠は覚醒状態に似ています。筋肉は麻痺状態ですが、脳は活発で、鮮明な夢を見ます。哺乳動物はレム睡眠を持ちます、脳が複雑になるほど、レム睡眠が長くなります。しかし、哺乳類の間では、レム睡眠には何の規則性もありません。
ヒトの女性の生殖周期は28日です。女性の場合、目覚めた時の体温が、先行する5日間の平均体温より0.7℃以上高いときは、排卵が起こりつつあることを示しています。
生物時計は複数あります。地球に住む生物にとって、最も顕著な環境は、毎日の明暗周期です。リズムは遺伝的にプログラムされています。