放送大学「フィールドワークと民族誌」

 問題意識は共有しているものの、どうも踏み込んでこない。学者の戯言と言ってしまえばそれまでか? 少々残念な内容ではあった。とは言え、参考になる部分は随所にあった。ありがとうございました。 以下はこの講義の簡単なメモです。


■ 民族誌の功罪

・人類学

 原住民との出会い
 近代の内外を行き来して差異を観察し、人類の共通性を理解する

 全体論(ホリティクス) ⇔ 社会・経済・政治・宗教・技術・芸術…

 参与観察による実証主義の人類学
 人びとの生き方を内側から記述する
 違和感を大切にする
  〜 自分自身を実験動物として利用する

・文化相対主義

 文化多様性の尊重
  ⇔ 民族差別の温床となった進化主義人類学
   自己中心主義と言う暴力

 他者の道理を探る
 他者は謎であり続ける
 共に変わっていく

・本質主義の陥窄

 文化の違い=本質の違い 〜 自文化中心主義の亜種
 そういうやり方(文化)なのだからし方ない
 共約不可能性 ― 共通基盤が無い → 民族主義の台頭
 民族は動物の種のように固定された同一性がある
 民族誌は、独りよがりのレトリックになってしまった


■ 同一性の政治

 規則を守るように監視するのではなく
 自ら規範を守るようにさせる

 民族の伝統文化を創造し誇りを持たせる
 自己同一化〜文化へのアイデンティティによる愛国教育

 「単一栽培(飼育)の思考」レヴィ=ストロース


■ 関係としてのフィールド - マルチサイテッド民族誌

グローバリゼーションの影響を受けて先住民の文化も変わっていく

複数地点を横断して、文化事象をつながりの中で捉える
例:貧しい土壌で共生する赤松と松竹 ⇔ 手入れをする人間
  米国のベトナム難民と、中国の少数数民族が、松茸を採集し日本へ輸出

・「知的所有権の人類学」 中空萌

インドの在来知と西洋近代の知的所有権
薬草の知識は誰もが使えるもの
在来知を守ってきた人々には権利がある
 製薬会社への権利の主張
 「アーユルベーダ」の知的所有権を主張できるようにする
 生物多様性登録プロジェクト
 薬草の栽培をする現地の人びとなどの所有権の明確化

偶然で不安定で創造的な関わり合い
 NGO:利益配分の問題に取り組む/押しつける
 ヴァイディヤ:知識の提供は慈悲であり義務である
 ちぐはぐな関りともつれ合いから生まれる創造性
 状況に応じたコミットメント


■ 法の民族誌

・奄美の自然の権利訴訟(アマミノクロウサギ裁判)

 原告適格
 アマミノクロウサギの代理人として原告と認められるのか?

 自然の権利
 自然破壊に対する自然の生存権ではない
 人間と自然の関係性の中で認められる「関わりの権利」
 自然と人間を分けない 〜 先住民運動との交わり

■ 臨床のフィールドワーク

 患者に寄り添う医療を目指して
 病者の体験と医療者が考える疾病は異なる
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 ケア=お世話をする、とは何なのか