「図解 仏像のすべて」花山勝友 1998年 光文社文庫
とてもお手軽な仏像の本。東博に行くときに携帯できると思い、ブックオフで入手。内容は … だけど、軽くて小さくて便利! ありがとうございました。 以下は、印象に残ったところをまとめたものです。
■ プロローグ
釈迦が仏教を立教したのは紀元前四世紀。日本へ渡来するまで一千年の歳月が流れています。須弥世界は、中国で体系づけられた宇宙観。浄土宗・浄土真宗・天台宗の礼拝仏は阿弥陀如来、曹洞宗と臨済宗は釈迦如来。仏像も様々なものになったということです。
■ 菩薩
菩薩の解釈は三つ。悟りを開く前のお釈迦様。修行僧全て(上座部)。世の中の人が救われるまで仏にならない(大乗)。大乗の菩薩は、在家の格好をしています。現世利益の仏像です。
・聖観音
観音の基本形。観音は、施無畏者。怖いことが無い状態を人々に施してくれます。観音は、三十三の姿に変身します(三十三応現身)。自在に行動して衆生を救います(観自在)。
観音菩薩は阿弥陀如来の化身の菩薩。聖観音の頭部には小さな仏(化仏)があり、ほとんどは阿弥陀如来です。
阿弥陀三尊の脇侍では蓮座、独尊のときは蓮の花(美しい心)や水瓶(汚れを除く)を持ちます。
・十一面観音
観音は男性でも女性でもなく、性別を超越した存在。変化観音の第一号として十一面観音が登場し、聖観音にとって代わります。奈良時代から平安時代に変わるころ観音信仰が広まりました。
・千手観音
千手千眼観音ともいい、千の手に一つ一つ眼があります。仏像の持物を全て装備した仏です。
・不空羂索観音
もれなく(不空)救う仏です。羂索とは絹の網のこと。
・如意輪観音
右足を立膝にして座る(輪王座像)、右足だけを曲げて左膝に乗せて座る像(半跏倚像)。如意宝珠は財宝をもたらす願いを叶え、輪宝|宝輪|法輪は煩悩を打ち砕きます。
・馬頭観音
怒りを表す(憤怒相の)唯一の観音。旅の安全を守る仏として信仰されました。
・勢至菩薩
至誠は偉大な力の意。阿弥陀如来の右に立つ菩薩。勢至は智慧の光明で人々を照らします。
・弥勒菩薩
半跏思惟像の多くは、平安時代より前に作られたもの。宝塔が頭についている、手に持っていれば弥勒菩薩です。釈迦が亡くなって56憶7千年後に釈迦に代わって人々を救う未来仏。如来系の弥勒像には持物がありませんが、左手を膝の上で伏せていれば弥勒菩薩です。
・文殊菩薩
釈迦三尊像の場合、文殊は獅子に乗り、普賢は象に乗ります。右手に剣、左手に経巻を持ちます。文殊の獅子は、日本で高麗犬になりました。
・日光月光菩薩
薬師如来の脇侍。右が日光、左が月光です。
・虚空蔵菩薩
虚空は限りない広がり。無限の知恵、特に記憶力がご利益です。宝冠に五智如来を配した五智宝冠を被ります。
・地蔵菩薩
インドの大地を司る神。釈迦の亡き後、弥勒が登場するまでの間の救い主です。
地蔵は浄土へ導きます。水子地蔵はそのためです。また、輪廻する六つの世界(六道)に合わせて、六地蔵が並べられます。
・妙見菩薩
妙見は「よく見る」。別名は北辰です。
■ 如来
如来は「仏陀」、正しく覚めた人。狭義では、釈迦如来です。
釈迦の姿の特徴。頭の肉が盛り上がる肉髻相。乱れることも抜けることもない螺髪。眉間の巻いた白い毛は白毫。手や足の裏には手足千輻輪。仏足石で確認できます。指の間には水掻きがあります。
座禅の座り方で右足が上に来る吉祥座は、如来に多い座法です。
・釈迦如来
お釈迦様の肖像。日本では、誕生と説法の像がよく見られます。説法印を結んだ像の多くは釈迦です。
・大日如来
大日如来は王者。密教の中心仏です。大日は太陽の子。(魔訶)毘盧遮那仏とも呼ばれます。魔訶は大の意。印は法界定印か智拳印。密教系の修験道との接点もあり、智拳印は忍法の印でもあります。法界定印の大日が示す世界は胎蔵界、智拳印は金剛界。
・毘盧遮那仏
真理そのものは法身、それを伝えるために出現した人を生身|応身。生身の釈迦が伝える真理の源が毘盧遮那仏です。
・薬師如来
東方の浄瑠璃浄土の教主。修業中の十二大願の一つが、徐病安楽。薬師十二神将は十二大願に依ります。
平安時代になってからの薬師は、薬壺(やっこ)を持ちます。奈良時代は持物がなく、釈迦如来と似ています。
・阿弥陀如来
極楽浄土の主。阿弥陀は無量寿と無量光を合わせた音を漢字に写したもの。
阿弥陀四十八願の十八番目が、弘願。「信心する心の中から全て他力(阿弥陀の力)に任せた人々を救う」。他力本願のもとになりました。
印相は九品。指に輪を作る形になっています。九品は、極楽への迎え方の違い。立像は来迎印を結んでいます。平安時代から広まった阿弥陀信仰と関係があります。
■ 明王
明王は密教によって諸尊に加えられました。明王の前身は バラモン教|ヒンズー教の神々です。明王は如来の化身です。
・不動明王
大日如来の使者。羂索は煩悩を縛る縄、人々を救う縄。不動明王の力によって災いを打ち払うのが護摩祈祷です。
江戸では、仏教の基本五色を冠した不動明王が人気を集めました。目白不動や目黒不動は地名になりました。
・愛染明王
サンスクリットではラーガ(愛)。赤は愛欲の激しさを表します。持物の弓と矢は、キューピッドと同じ。
■ 天
天は仏法の守護神。天の一部が明王になり、天は明王の眷属の位置づけになりました。
特徴は、武人姿。靴を履いた像も多く見られます。女性神では天女系が登場します。布の衣装を着せるため、裸形の弁天もあります。
・梵天
ヒンズー教の宇宙創造の最高神ブラフマン。
・帝釈天
象に跨り、甲冑を着け、独鈷を握るのが密教の帝釈天。インドラは、アーリア人の英雄神。衣の下に鎧を着けています。
・迦楼羅天
鳥頭人身の鳥の神、ガルーダ。
・四天王
帝釈天の部下。四方を守る。
多聞天は小さな塔を手にしています。毘沙門天は別名。独尊で信仰され、武神から福の神へと変化しました。
・弁財天
サラスバティは聖なる川。水の神です。豊穣、財宝、音楽の女神。銭洗い弁天もその一つ。
・大黒天
シヴァ神(マハーカーラ)は、中国では、「摩訶迦羅天」と呼ばれ、日本では「大黒天」と呼ばれるようになり、七福神の一員となりました。
・吉祥天
吉祥は、良いことの兆し。鬼子母神の娘、毘沙門天の妻とされています。
・鬼子母神
吉祥果(ザクロの実)を持ちます。
・聖天
大自在天(シバ神)の息子。象頭人身の男女が抱き合うのは歓喜天とも呼ばれます。
聖天は仏教の神、ガネーシャはヒンドゥー教の神です。
・摩利支天
サンスクリットでは、かげろう。目に見えない速さで掛ける天。
・荼枳尼(だきに)天
本地垂迹説によれば、荼枳尼は稲荷の本尊。荼枳尼天は、女神で狐に乗っています。
■ 諸尊
全ての仏に補佐役がいます。不動八大童子、不動三十六童子、弁財天の十六童子、千手二十八部衆(二十八部薬叉|夜叉大将)、。
実在した人間。役行者は日本。法相宗の開祖、玄奘三蔵(三蔵は高僧の意)は中国。
・金剛力士(仁王)
阿吽は、仁王が元。独鈷の鈷は刀のこと。
・八幡大菩薩
八幡宮は、応神天皇をまつる神社。本地垂迹説では、八幡神は阿弥陀または釈迦と同じ。多くは僧形八幡ですが、弓矢八幡は武人像。
・薬師十二神将
後に十二支と結びつきます。インダラはインドラ、クビラは金毘羅です。
・十王
次の生まれ変わり先を決める裁判官。閻魔王を含む十人。死から七日目に秦広王が始め太山王まで7日ごとに審判をします。初七日に始まり、四十九日まで法要があるのはそのためです。
・達磨
禅宗の開祖。インドから中国へ禅を伝えました。少林寺にこもって9年座禅を組み続けました。
・羅漢
説法する釈迦の周りの弟子たちが羅漢。五百羅漢は、釈迦の教えを経典にまとめるために集まった弟子の五百人。賓頭盧尊者は、像を撫でると病気が治ると独尊で信仰されています。