「なぜ時間は存在しないのか」 ジュリアン・バーバー 2020年 青土社

 バーバーの時間論。待望の翻訳なのだが … 訳がヒドイ(;ω;)。何を言ってるのか?分からない部分が多すぎます。川崎秀高さん、高良富夫さん。もう少し読んで分かる訳をつけて下さいよ!それでも、バーバーの考え方を紹介する本は読んでいたので、だいたいの見当はつきました。とわ言え、バーバーを読めたのは、私にとっては大きな収穫でした。私にとって、わくわくする新しい知見もありました。 以下はこの本の要約と引用です。*印は私の見解です。尚、「プラトニア」は、元々の意味である「相対配置空間」と表記しました。


《はじめに》

 ギリシャ哲学のヘラクレイトス派は変化する世界観を主張し、パルメニデス派は時間も運動もない世界観を主張していた。最新の物理学はあらゆる運動は幻覚であると示唆している。

《序文》

 ポール・ディラックは空間と時間を融合させた一般相対性理論を疑っていた。リチャード・ファインマンは「時間は何もしないのに何かが起こることである」とした。変化が時間の測定器なのか、時間が変化の測定器なのかによって、物理学は新しい基礎の上に作り直される。

 私は、時間は存在せず、物体の運動は幻覚であると信じている。


単純な語での大きな見取り図

《1. 最大の謎》

 アイザック・ニュートンとアルベルト・アインシュタインは、時間を与えられたもの(=絶対時間/絶対座標)として扱っている。

 一般相対性理論と量子力学の統合された量子重力論は、量子宇宙の静止した映像を生み出す。

 ライプニッツにより提出された、物体と入物(時空)ではなく、宇宙全体の可能な配置が根本の事象である。それは全て異なった「時間の瞬間」である。世界は、無数の「今」から作られている。瞬間はスナップ写真に喩えることができる。我々の連続した経験は、「写真を撮ること」としてイメージすることができる。映画は個々のフレームから組み立てられる。スナップ写真はその順序を識別することができる。この現象は、記憶にあるように、時間の方向を明らかにしている。

 ルドウィッヒ・ボルツマンは、熱が原子のスピードの物差しであると仮定した。ボルツマンは、確率が原子の振る舞いを表すと見ていた。この確率が、エントロピーの物差しである。

《2. タイム・カプセル》

 我々は運動の印象が、脳の中にある動きや変化によって作り出されると想像する。我々は、脳が解釈したものを見ている。運動を想像するパターンをタイム・カプセルと呼ぶ。脳はタイム・カプセルである。我々は、時間の経過を意識の中で感知する。但し、ロジャー・ペンローズと異なり、精神状態と結合した物理学を提唱しているのではない。

《3. 無時間の世界》

 無考えられる限りのすべての状態が、時間で存在し得る。それに順序はない。「ブラックホール」という言葉を作ったジョン・ホイーラー。彼のホイーラー-ドウィットの方程式は、無時間理論である。運動も幻覚である。プラトニア=相対配置空間は、時間と空間にとって代わる。今は「静」である。今は存在確率を持っている。

 それぞれの今は分離している。組織化された今は「関係があり」結びついて「一斉に存在している」。


目に見えない枠組みと究極の劇場

《4. 二者択一の枠組み》

 ニュートンは、相対の運動のみを直接観察することができるが、見えない絶対空間の中の絶対の運動を直接に観察することはできないことを認めた。

 マッハは、目に見える事象は本物として扱わなければならないと主張した。目に見えない時間と空間は疑った。ニュートンは遠心力が相対運動ではないとしてバケツを利用した。マッハは、遠心力を生み出すのは空間ではなく、物質であるとした。相対運動の概念をアインシュタインは「マッハの原理」と命名した。マッハの原理を具体化し相対正理論を作った。

 他の対象物に対する距離は、我々の位置を明らかにする。全ての物は、他の全ての物に対して動いている。我々は、全ての一部分であり、どのような運動も、宇宙の中の変化の一部分に過ぎない。宇宙の真実は、相対の配置である。宇宙(の歴史)は、「相対配置空間」通る一本の経路(連続した曲線)である。「相対配置空間」の中では、場所が異なれば時間が異なる。場所が同じならば時間は変化していない。

《5. ニュートンの証明》

 宇宙論の中では、距離は絶対であり、宇宙は膨張している。マッハが正しいならば、時間は無く、計算されるのは相対の距離である。慣性系の中では、静止しているのか動いているのかを言うことは不可能である。

 位置エネルギーは、立体位置によって決定される。運動雨エネルギーは、系の中の運動の総計を計測する。孤立した系の中では二つの合計は一定である。

《6. 天空の二つの巨大な時計》

 落下するボールを分析するために、ガリレオは慣性と落下を結合させた(放物線)。水平成分は一定に保たれているので、時間の測定器となることに気づいた。時間は動いた距離になる。

 宇宙の中の全ての物質は、相互に作用し合っている。相互に影響し合っている物体の系の中では、それらの内のどれかを独立に扱うことは不可能である。系の全ての物体は時計を持っている。

 運動エネルギーは絶対空間の中で定義される。位置エネルギーは立体配置によって決定される。

《7. プラトニア=「相対配置空間」の中の経路》

 ピエール・ド・ファルマーの最小時間の原理。ライプニッツは、ファルマーの原理に感銘を受けた。現実の世界は「可能な限り多くの変化を集めて、その上で最も優れた可能性(完全性)を実現する」。この原理は、レオンハルト・オイラーとジョセフ・ルイ・ラグランジュによって発展した。ある状態から別の状態に移り変わるとき、ある量の作用で、系の中の物体の運動を最小にする。ウィリアム・ローワン・ハミルトンは、最小作用の原理を、滑らかに湾曲した曲面上の「最短の」経路によって説明した。任意の小さな領域の中では、その表面は平坦であり、任意の隣り合う二地点間の最短の結合は一本の直線である。二つの配置の間で質点が通過する道は、その運動の総量である。質点の動きは、その質点が瞬間の速度と位置から計算される。各質点の位置が位置エネルギーを決定し、速度が運動エネルギーを決定するので、その動きは両者を関係付ける。この方法で計算された作用を最小にする。

 「相対配置空間」の中で測地線を定めることができる。最小値となる位置は、「最適整合位置」と呼ぶ。「相対配置空間」の中の最短の経路(歴史)を決定することができる。ニュートン力学の全てが絶対の時空無しで説明される。


一般相対性理論の深部構造

 アインシュタインの理論は深部構造を持っている。この深部構造が無時間性である。

《8. 晴天の霹靂》

 ポアンカレは、離れた地点について、人はどのように同時性を定義するのか?に注目した。持続時間とは?時計とは何であるか? *一緒にその場に居るとが、同時に在ることである。

 マイケル・ファラデーは、力線と場の概念を導入した、場は宇宙全体に存在し、絶え間なく変化している励起と考えられる。電磁波:ラジオ波・可視光線・X線・ガンマ線。物質は何と一緒に移動しない。それ自身は静止している。

 アインシュタインは、物差しと時計の問題を避けた。相対論の中で時間と空間は独立した存在として扱われた。アインシュタイン自身の言葉によるこの「過失」は修正されなかった。古典物理学の中では、時間は変化をしている法則の複合体である。

《9. 魔術師ミンコフスキー》

 ヘルマン・ミンコフスキーの時空は、ニュートンの時空と似ている。物質は、その絶対構造を作ることも変えることも無い。物質とは独立した存在と考えられている。

 時空間は事象の集まりである。ミンコフスキー時空でも、経験している「今」に対して対応しているものは何も無い。アインシュタインは、「今」の経験は、物理学の中では起こらないし、起こりえない。これは彼にとって避けられない問題に見えた。「科学の領域の外側にある」と「今」を結論づけた。

 私は相対性理論が間違っていると言っているのではない。異なった方法で時空の上に「座標」と結合した同時性の構造物を描くことができる。世界の中の実際の事象は、膨大な数の異なった配置の任意の一つを持つことができる。時空は三次元のレンガで建てられている。

《10. 一般相対性理論の発見》

 時空の中の「距離」だけがいつも同じだ。アインシュタインは、時空に座標を割り付けた(*観察者の固有時を相互に変換する空っぽの絶対時空)。しかし、座標系などどこにも存在しない。

 回転する電荷は電磁場を発生させる。回転している質量は重力場を発生させるかも知れない。そして、内部で測定できる遠心力を発生させるだろう。

 ガウスは、滑らかな表面に関して、湾曲した座標を想定した。数学者は任意の座標系を使えることを「一般共変性」と呼ぶ。全ての座標系に同じ形をとるならば、その法則は一般共変性があると言う。

 アインシュタインは、この一般共変性を採用した。グレゴリオ・リッチ・クルバストロによって研究されたリッチテンソルが、零に等しくなるだろう。空っぽの空間の中のリッチテンソルの消滅が一般共変性であるかも知れない。アインシュタインは、エリッヒ・クレッチマンが、一般共変性が物理としtねお意味を持たないことを指摘され、それを認めた。

《11. 一般相対性理論 − 無時間の概念》

 一般相対性理論の量子化(正準量子化)が時間の量子理論についてヒントを与えてくれる。

 一般相対性理論は、幾何力学と呼ばれる。「変化する」とは、時空の内部ではなくて、時空に重ね合わされている三次元空間の内部の距離である。物体の任意の集合は「相対配置空間」を形成できる。

 リーマン空間は、数学上の可能性として存在している。それらは、物体を含むことができる。最適整合位置にある「今」の間の「距離」を全て持つならば、「相対配置空間」の中の測地線を測定することができる。これは、アインシュタインが問題解決に取り組まなかった継続期間と時計の理論である。

 一般相対性理論は、四次元時空の理論として発見された。それが同時に、三次元事象の変化を表す力学理論であるという事実は、重要視されていない。

三つの時空

 ニュートンの時空のそれぞれのカードは「今」である。それらは全て水辺線上にある。一般相対性理論の中では、時間の相対性が現れる。「今」は光円錐を横切らない。アインシュタインは、「今」の概念は存在しないという見解に導いた。

 バイエルン=シャープ=ホイーラーの「時間に関する情報の運び手としての三次元の幾何学」では、「三つの」「今」の中の情報が必要とされる。


量子力学と量子宇宙論

《12. 量子力学の発見》

 波動と粒子の二面性は、全ての粒子が場と結合しており、場の励起として描写されることを示している。

 スカラー場・ベクトル場・テンソル場は、座標系の回転のもとで同じ種類の規則に従っている。ディラックは、「スピノル場」を見つけた。座標系の一回転は値をマイナスにして戻ってくる。二回転が最初の値に戻るのに必要とされる。電子はスピノル場と結合しており、陽子はベクトル場と結合している。多くの陽子は同じ状態の中に存在することができる。電子ではそれは不可能である。スカラー場に対応した粒子は、まだ発見されていない。

《13. より小さい謎》

 複数の粒子の複合系の振る舞いは不可解に相関している。数学上の構成物であるヒルベルト空間。しかし、その要素は絶対時空によって定義されている。疑わしい基礎であるにもかかわらず、量子力学はそれを受け入れている。

 事象とそれらの存在は「相対配置空間」の中にある。それはヒルベルト空間にとって代わる。空間と時間は蒸発し、時間の無い「相対配置空間」と共に残される。

 波動関数が複素数であるのは、数の対であるに過ぎない。波動関数は、実体の無い無形物であり、物理の事実では無い。事象は「相対配置空間」にある。ψは粒子が観測される場所の確率である。その粒子が何処に「衝突するか」を推測する。量子力学は、個々の衝突がどこで起こっているかについては何も示していない。

 波動関数の消滅。量子力学の中で「測定」は厳密な意味で使われている(測定問題)。

 ナポレオンの将軍の一人であったジョセフ・フーリエは、任意の波動が正弦曲線の重ね合わせで作ることができることを示した。雲が幅が狭く存在し、ある値でスパイクになっている。その粒子はその時、その場所に存在することができる。任意の波動関数は、位置の重なり合いか、運動量の固有状態の重なり合いである。重ね合わせの中の全ての運動量はポテンシャルとして存在している。測定はそれらの一つを実現させる。

 ハイゼルベルクの不確定性原理。その明白な理由は、方程式の中には無い。

《14. より大きな謎》

 量子力学の核心は、複合系=多数の粒子から成る系を表す方法である。量子力学の大部分の説明は、単一粒子の振る舞いだけを考慮しているので、人々は、波動関数が配置空間に対して定義されていることに気づかない。

 量子世界を直接に観測することは可能ではない。絡み合った状態の波動関数は、粒子の位置確定が、直ちに他の粒子の位置を決定する。粒子が、ψの広がっている所にはどこにでも、同時に存在していることを、干渉現象が示している。確かなことは、それらが絡み合っている、相互に関連していることである。

 可能性の重ね合わせが、どのようにして一つの状態に崩壊するのか(測定問題)。ヒュー・エヴェレットは、崩壊は起こっていない。複合した可能性が共存している、と想定した。

 粒子の相関関係は、充分に理解されていない。マッハの原理は、宇宙の瞬間の立体配置によって決定されていると暗示している。

《15. 創造の規則》

 シュレーディンガーが見つけたのは、創造の規則である。波動巻子ψがどのように変化するか。粒子自体は移動しない。配置空間Qの可能な立体配置や構造は、全てに対して与えられている。過ぎていく時間も、動いている地点も無い。その風景を通り抜ける無時間の経路が存在する。

 シュレーディンガーの時間に依存しない定常方程式は、どの量子系に関しても、それが持つことができる定常状態を見つけるために使うことができる。それらのそれぞれの中で、一定不変の周波数で振動している。異なった周波数を持った二つの解を加え合わせた時、それらは干渉する。異なった定常状態が一緒に加えられると、ある不規則な振動が始まる。量子力学における全ての変化は、異なったエネルギーの定常状態との干渉から生じる。

 マッハが考えた宇宙は、エネルギー零を持つ。量子化されたニュートン動力学は、時間に依存するシュレーディンガー方程式を導く。量子化されたマッハ宇宙論は、定常のシュレーディンガー方程式を導く。

 配置空間Qを覆って変化しているポテンシャルV。[E−V]の値が零よりも大きいところでは、弦の長さφは振動する。エネルギーEに対応している値は、エネルギー固有値と呼ばれる。エネルギー固有値の最小値を持つ固有関数は、「基底状態」と呼ばれる。高いエネルギーを持った固有関数は「励起状態」と呼ばれる。負の固有値は、離散スペクトルを形成し、対応する状態は「束縛状態」と呼ばれる。

 無時間系においては、エネルギーEは零であり、配置空間Qの全ての点で、曲率数とポテンシャル数の合計が零である。

 位置・運動量・エネルギー・角運動量。角運動量は、活動が存在しているき、いつも不連続の固有値を持っている。

 距離は、相対立体配置を使って最適整合の手順によって定義される。我々が望んでいるのは、相対配置空間に関して、波動関数を操作するための規則である。曲率とは何なのか。それは、距離の一種である。その最適整合の条件は、角運動量が零であるニュートンの解を導く。

《16. あのダメだと判定された方程式》
 
 静止質量零の粒子は、光と同じ速さで移動する。質量零の縦方向の振動は凍結され、二つの横方向の振動だけが存在する。光の二つの独立した二つの偏光に対応している。ミツバチは、光の偏光を識別し、方位確認のために使う。

 ホイラー・ドウィット方程式は、宇宙のエネルギーの一定不変の値=零のための静止したシュレーディンガー方程式であるに違いない。この方程式が世界を描写するだろう。


無時間宇宙の歴史

 時間の無い世界の中で、運動はどのように見えるのか?

《17. 無時間の哲学》

 私は、時間を見ることができないので、時間の無い宇宙を信じている。

 宇宙には分岐は無い。初期条件や境界条件の間に何も区別が無い。静的シュレーディンガー方程式は、宇宙の静的立体構造を序列化する。その方程式は、「相対配置空間」で存続することができる全ての可能な波動関数を「調べ」て、共振していないものを全て捨てる。残ったものは、調和している。

 ホイラー・ドウィット方程式の答えは、「何も無い」であろう。

《18. 静的な動力学とタイム・カプセル》

 タイム・カプセルは、それぞれ静止している。それは「相対配置空間」の形式の一つである。それは高度に組織化されている。

《19. 隠れている歴史と波束》

 「相対配置空間」は巨大な数の次元を持つ空間である。時間が流れるように、「相対配置空間」の中を通っていく一本の経路に沿って動いている様をイメージできる。ただ時間の無い経路だけが存在している。

 平面波は、伝搬方向と波長を持っている。シュレーディンガー方程式は線形なので多くの解を加えることができる。それらの間の干渉は、驚くべき契機を作り出すことができる。

 三つ以上の波の山が、共通の点で交差しているならば、その波は相を同じくしてそこに存在する。それらの振幅は変化させられる。これは、粒子のように見える。

物質粒子と結合している波動は、いつもそれらの波長に依存した異なった速度で伝搬している。波長と伝搬速度との間の関係は、「分散関係」と呼ばれる。スパイク数(波束)は、小さな範囲の波長で異なった角度の波の重ね合わせである。「分散関係」は、異なった速度で動くそれぞれの波を、重ね合わせの位置に持ってくる。波が動くつれて、全ての波が相を同じくしている位置が動く。この調和が自然界でどのように起こるかは説明できない。

《20. 記録の創造》

 歴史は、単一の立体配置の経路によって描写される。

《21. 多くの瞬間の解釈》

 ホイラー・ドウィット方程式の複数の解。時間を否定すれば、特別な初期状態を要請することはできない。ただ状態が存在し、発展は存在しない。

《22. 時間の出現とその矢》

 都合よく振る舞う解は、一種の予定された調和を示すだろう。ホイラー・ドウィット方程式の無時間制は、アインシュタインの理論の深い構造を反映している。

 「相対配置空間」の経路の穏やかな端は、我々が「過去」と呼んでいるものである。乱れた端は未来である。時間の矢が、無秩序の増加に基礎を置くことを暗示している。

*我々の知覚する世界では、宇宙が膨張しているとすると、そのエントロピーの増大は時計になり得る。しかし、量子宇宙論の描く世界とは、有効範囲が異なっている。

 私の考えを支持する証明は何も無い。