「宇宙になぜ我々が存在するのか」 村山斉 2013年 ブルーバックス
村山さんの本は読み物としてはサイコーなので、ブックオフで見かけたら読んじゃいます。そして、読むとやっぱり面白い!なんですがこの本 … 以前に読んだのを忘れての、また買って読んでしまった!最近増えてるな〜。まあ、惚け老人だからし方ないよね。 以下はこの本の引用と要約です(少し観点を変えてまとめたつもり)。*はWEB検索した結果です。
《はじめに》
人類が初めて反物質をつくったのは1933年のことで、マリー・キューリーの娘夫婦であるジョリオ・キューリー夫婦が、電子の反物質である陽電子を生み出しました。
10憶分の2ぐらい物質の方が反物質より多くあったので、反物質が全部なくなっても、物質が残ることができたと考えられています。
《1.恥ずかしがり屋のニュートリノ》
粒子の数でカウントすると、この宇宙ではニュートリノが一番たくさんあります。ニュートリノは重力や電磁気力とは反応しないので、私たちの体を1秒間に数百兆個もすり抜けています。
イーノは、小さいものを表すイタリア語。ニュートリノは、電気的に中性でとても小さい粒子という意味です。昔は中性微子と訳していました。
《2.素粒子の世界》
地球の内部では、放射性原子は自然崩壊を起し、熱を放出しています。その熱が内部の温度を保つのに使われています。地球から放出される熱量の半分は、地球内部からもたらされたものです。
CP対称性のPはパリティ(反転)対称性、Cは粒子と反粒子の入れ替え=荷電共役。弱い力はパリティ対称性を破り、保存しません。ですが、PとCを組み合わせて保存していると考えられました。ところが、CP対称性を破る現象がK中間子で見つかります。
クォークには三世代あることによって、対称性が確保されます(小林-益川理論)。三角形を一つの対象軸に沿ってひっくり返しても重なり合いません。そして、CP対称性が破られていることが、粒子だけが残っている理由だと考えられます。
《3.とても不思議なニュートリノの世界》
特殊相対性理論によると、物質の動く速度が速くなればなるほど、その物質の感じる時間は遅くなります。高速で動くと、時間は完全に止まってしまいます。光は時間を感じません。光より遅い粒子は、重さがあります。
ニュートリノは太陽の中心でできるので、太陽の中心が見えます。また、ニュートリノは地球の内部を通過するので、地球の断層写真を撮影することができます。
《4.ものすごく軽いニュートリノの謎》
ニュートリノはつねに左巻き。ニュートリノの反物質は右巻きです。左巻きの反ニュートリノは誰も見たことがありません。ものすごく重い粒子だと考えらます。右巻きのニュートリノもとても重いと推定されます。
標準理論では、ヒッグス粒子に影響を受けて速度が遅くなるのは右巻きの粒子だけです。左巻きニュートリノがヒッグス粒子にぶつかると、右巻きに変わります。但し、一瞬右巻きになるだけで、すぐに左巻きに戻ります。
《5.ニュートリノはいたずらっこ》
物質を形作るフェルミオン、力を伝えるボソン。四つの力を統一するためには、超対称性を取り入れて、フェルミオンとボソンを一つにまとめる必要があります。
物質である左巻きのニュートリノを追い越して振り返ると、見えるのは右巻きのニュートリノ。反ニュートリノなのではと、考えられるようになってきました。ニュートリノは、物質と反物質を入れ替える力があるのではないか。だとすると、物質が少し残ったことを説明できます。
普通の物質粒子は電気を持っています。電気の性質が影響して入れ替わることはできません。ニュートリノと反ニュートリノの違いがわかってくれば、なぜ物質が残って反物質が消滅したのかが理解できるかも知れません。
物理学では、99.9999%確実じゃないと、発見といいません。99.9%確実だと、新しいものの証拠を捕まえたということができます。
《6.ヒッグス粒子の正体》
素粒子の標準理論では、すべての素粒子はもともと重さを持っていないことになっています。ヒッグス粒子にぶつかることで遅くなり、その遅くなった分だけ重さを持ちます。私たちはヒッグス粒子がびっしりと詰まった空間の中で活動していることになります。
グリッドコンピューティングは、世界中のコンピュータをネットワークでつないで一台のコンピュータのように使おうというものです。
LHCの実験では、ヒッグス粒子が発生した後にできる痕跡を観測しています。ヒッグス粒子そのものを捉えているわけではありません。
光は光で見ることはできません。私たちは、網膜に光が当たると電子が飛び出す仕組みを持っているので、光を感じることができます。観測機器も光子を電子に変換する装置によって、ヒッグス粒子から生まれた光子を捉えることができます。ヒッグス粒子から生まれるレプトンの特徴は、ミューオンと反ミューオン、または電子と陽電子が二つづつ、四つの粒子が観測されることです。光子とレプトンの両方の結果を得て、ヒッグス粒子発見の発表となりました。
力の働く距離に違いができるのは、ウィークボソンと光子の重さの違いがあるからです。
ヒグス粒子にはエネルギーが低くなると自然に対称性が破られる仕組みが組み込まれていると考えられます。南部陽一郎博士は、その仕組みのことを自発的対称性の破れと表現しました。
宇宙が冷えてヒッグス粒子が凍りつきました。氷の場合は水の分子の席が決まって、結晶を作ります。個別の分子が区別されて対称性が破られます。同じようにヒッグス粒子が凍りついて、素粒子が重さを感じるようになります。ヒッグス粒子が真空中にビッシリ詰まっているお陰で、原子はその場にとどまって秩序を作ります。
ヒッグス粒子が凍りついても電気を持っていませんので、光子はヒッグス粒子に気づくことなく進みます。電磁気力や重力は邪魔されず遠くまで届きます。
素粒子の顔はスピンで表されます。電子は1/2、光子は1。ヒッグス粒子だけはスピンがありません。つまり、ヒッグス粒子は真空そのものであると言ってもいいでしょう。
素粒子を統一的に表現できる方法があるのではないかと考えられます。
*国際リニアコライダー計画(ILC)について
2020年、宇宙の謎に迫る大型加速器「国際リニアコライダー(ILC)」の国内誘致について、高エネルギー加速器研究機構(KEK)が、国が優先的に進める大型研究の基本構想「ロードマップ」への申請を取り下げたと発表した。岩手県などが求める早期の誘致実現は極めて難しくなった。
重力子はどれだけエネエルギーがあるかだけで働きが決まります。重さがヒッグス粒子からきたのか、運動からきたのか、位置エネルギーからきたのかは関係ありません(等価原理)。
《7.宇宙にはなぜ我々が存在するのか》
スティーブ・ホーキング博士は、宇宙に広がる時間や空間には境界や端が無いと考えました。そうすると特異点も無くなってしまいます。宇宙は点から始まっていないということになります。
すばる望遠鏡に新しいカメラと分光器をつけて観測する「すみれ計画」。銀河までの距離や時間は光の明るさで測れます。宇宙が膨張してきた歴史を調べることができます。
*すみれ計画の成果
HSCによる観測で、ビッグバンからわずか1億年後の宇宙の姿を捉えることに成功しました。これは、これまでに観測された最も古い宇宙の姿です。
HSCと、PFSを用いて、宇宙の起源と未来
望遠赤外線線形撮像分光装置(PFS)による観測で、宇宙の膨張速度をより正確に測定することに成功しました。この結果は、ダークエネルギーの正体を解明する上で重要な手がかりとなります。
超広視野カメラ(HSC)とPFSを組み合わせた観測で、遠方の銀河の進化や、宇宙におけるダークマターの分布など、これまでに知られていなかった多くの事実を明らかにしました。
具体的な成果としては、HSCによる観測で、ビッグバンからわずか1億年後の宇宙の姿を捉えることに成功しました。これは、これまでに観測された最も古い宇宙の姿です。この観測結果は、宇宙の初期の状態や、ダークエネルギーの働きについて新たな知見を与えるものです。
PFSによる観測で、宇宙の膨張速度をより正確に測定することに成功しました。この結果は、ダークエネルギーの正体を解明する上で重要な手がかりとなります。
HSCとPFSを組み合わせた観測で、遠方の銀河の進化や、宇宙におけるダークマターの分布など、これまでに知られていなかった多くの事実を明らかにしました。これらの成果は、宇宙の理解を大きく進展させるものです。
すみれ計画は、日本の宇宙研究の新たな時代を切り開くプロジェクトとして、今後も大きな注目を集めていくことが予想されます。
《おわりに》
PET(ポジトロン断層法)。ポジトロンは陽電子。反物質は物質と出会うと、ペアで消滅してエネルギーに変わる。このエネルギーを光子として捕まえることで体内を調べます。
*ニュートラリーノは暗黒物質なのか?
ニュートラリーノは、電荷を持たない素粒子です。超対称性理論によって存在が予想されており、Zボソン、フォトン、中性ヒッグス粒子の超対称パートナーであるジーノ、フォティーノ、中性ヒッグシーノが混合状態にあると考えられています。
宇宙には、ニュートリノが大量に存在することが観測されています。ニュートリノは、電荷を持たないため、通常の物質とほとんど相互作用しません。そのため、暗黒物質の候補として注目されています。
現在のところ、ニュートラリーノが暗黒物質であるかどうかは分かっていません。しかし、ニュートラリーノは暗黒物質の性質を満たす多くの特徴を持っています。
ニュートラリーノの特徴は、以下のとおりです。
電荷を持たない
質量がある
安定している
暗黒物質の特徴は、以下のとおりです。
電荷を持たない
質量がある
宇宙の約8割を占める
これらの特徴を比較すると、ニュートラリーノは暗黒物質の候補として非常に有力であることが分かります。
ニュートラリーノが暗黒物質であるかどうかを確かめるためには、ニュートラリーノの直接観測が必要です。しかし、ニュートラリーノは非常に微弱な粒子であるため、直接観測は非常に困難です。
現在、世界中の研究機関でニュートラリーノの直接観測が進められています。
ニュートリノの直接観測
ニュートリノの質量の測定
ニュートリノと暗黒物質の相互作用の研究
これらの研究が進むことで、ニュートラリーノが暗黒物質であるかどうかが明らかになることが期待されます。