「ロジスティクス4.0」 小野塚征志 2019年 日経文庫
再読です。前回もそうでしたが、現在の状況を確認すべく、ＷＥＢ検索のキーワードを拾うための閲覧です。 著者は、欧州のロジスティクス戦略今猿のローランド･ベルガーのプリンシパル。信念は無いが、物知りではあるので、助かります。 以下は検索のトリガーとなった内容のまとめと、＊はＷＥＢ検索結果です。
■ ロジスティックスにおける革新の変遷
・輸送の機械化
古来、大量･長距離輸送は、船舶に委ねられてきました。広大な大陸を制した歴代の統治者は、運河の整備に力を尽くしてきました。
蒸気機関車が発明され、内陸輸送の基盤が運河から線路に転換しました。天候に左右されない蒸気船の出現は、海上輸送の定時制を高めました。
・荷役の自動化
フォークリフトとパレットは、「荷物を保管・輸送するときの大きさ」を規格化しました。地域･業界ごとにパレットの標準規格が適用され効率が向上しました。
ＩＳＯ規格の海上コンテナにより、雨天でも夜間でも積み下ろしが可能になりました。欧米諸国のように、海上コンテナと鉄道コンテナが共通化している地域では、陸海一貫輸送も可能です。
・管理のシステム化
ＷＭＳ(倉庫管理システム)は、入庫-格納-ピッキング-検品-梱包の作業状況や荷物のロケーションを管理します。
ＴＭＳ(輸配送管理システム)は、トラックの配車計画を作成し、配車-運行状況を管理し、実車率や積載率を算出し、荷物の数量と輸配送先の情報を記録します。
ＮＡＣＣＳ(輸出入･港湾情報処理システム)は、行政機関、輸出入業者、物流会社、海運･航空会社、通関業者、金融機関などを相互につなぐシステムです。
・物流の装置産業化
省人化と標準化による物流の装置産業化。省人化は、人間が判断する過程を減少させること。標準化とは、様々な機能を繋ぐことです。
■ 省人化による革新
＊トラックの自動運転とその前段階の高速道路の隊列走行の現状
今だに試験段階で社会実装は遅れているようです。
＊自走式配達ロボット実現に向けての海外と国内での進捗状況
・海外の進捗状況
Starship Technologies: イギリスやアメリカの大学キャンパスや都市で、すでに数千台のロボットが稼働しており、累計配達回数は600万回を超えています。
Nuro: アメリカでは、薬局チェーンのCVS Pharmacyと提携し、処方薬の配送を行っています。また、コロナ対策として医薬品や食料品の配送も行っています。
Amazon Scout: アメリカで試験走行を行い、サービスエリアを拡大中です。
・国内の進捗状況
ZMPのDeliRo: 慶應大学や高輪ゲートウェイ駅での実証実験が行われています。カメラやレーザーセンサーを使って周囲環境を認識しながら走行する技術が特徴です。
Hakobot: 宮崎県で設立され、運送業界の人手不足解消を目指して開発が進められています。長崎県壱岐市での実証実験も行われました。
＊貨物船の無人自動運行や無人遠隔操縦
国内の進捗は実証実験の段階。
海外では試験運用に入ったもののあります。「Yara Birkeland」が世界初の全電動無人貨物船として注目されています。この船は、ノルウェーのYara Internationalが開発し、2022年に運航を開始しました。完全自動運航を目指しています。
＊国内と海外の倉庫ロボットの導入の現状
・国内の現状
日本では、労働力不足や物流業界の効率化のために、倉庫ロボットの導入が進んでいます。特に、2024年からの労働時間の上限規制により、トラックドライバーの不足が予想されており、これがロボット導入の一因となっています。
AGV（無人搬送車）やAMR（自律移動ロボット）：AIを搭載し、最適な搬送ルートを自動で計算する機能が進化しています。
自動倉庫ロボット：新興メーカーの採用事例が増えており、例えばRENATUS ROBOTICSの自動倉庫システム「RENATUS」が埼玉のフルフィルメントセンターに導入されています。
・海外の現状
海外でも、特にアメリカや中国で倉庫ロボットの導入が進んでいます。以下のような特徴があります。
アメリカ：AmazonやWalmartなどの大手企業が大規模な投資を行っており、物流ロボット市場の拡大を牽引しています。
中国：EC化率が高く、物流ロボットへの投資が積極的に行われています2。
・市場規模と将来展望
国内市場：2021年の実績で約240億円だった市場規模が、2025年には約600億円に成長すると予測されています。
世界市場：2030年頃には約300億ドル（約5兆円）に達すると予測されています2。
倉庫ロボットの導入は、効率化と労働力不足の解消に大きく寄与しており、今後もその需要は増加していくと考えられます。
■ 標準化による革新
・垂直統合による標準化
シーメンスの「マインドスフィア」や、ボッシュの「バーチャル･トラッキング」。
ＺＡＲＡのサプライチェーン全体の最適化（２週間で企画から販売まで＆スマート試着室による顧客の試着-購買過程の把握による需要把握-形成）。
・水平統合による標準化
＊トラック輸送(求貨と求車)のデジタルマッチング
「トランコム」だけでなく、新しいマッチングプラットフォームが登場し、サービスの選択肢が増えました。例えば、「トラボックス」や「PickGo」などが人気です。
フォワダーは、荷主に代わって、輸送手段(船舶･航空･鉄道･トラック)の確保、保管や通関などの業務の手配を代行する「利用運送事業者」。旅行者に代わって手配を代行する旅行代理店のようなものです。
＊デジタルフォワダーの現状
デジタルフォワーダーは急速に発展してきました。この進展は、特に技術の進化や需要の変化に伴うものです。デジタルフォワーダーの主な役割は、従来のフォワーダーの業務をデジタル化し、貨物の見積もり、ブッキング、トラッキングなどをオンラインで簡単に行えるようにすることです。
多くの企業が高度なプラットフォームを開発し、ブロックチェーンやAIを活用したサービスを提供するようになっています。例えば、ドイツのFortoはマルチモーダルな貨物輸送に対応し、オンラインでのリアルタイム見積もりや通関管理を提供しています。また、Nowports（メキシコ）は、出荷追跡や最適化された物流ルートの管理に力を入れています。
さらに、コロナ禍の影響で、物流業界全体でデジタルフォワーダーへの需要が高まりました。郵船ロジスティクスが提供する「Yusen Vantage」などのサービスは、オンライン上での見積もりやブッキング、トラッキング機能を提供し、企業のサプライチェーンを最適化しています。
売上面では、デジタルフォワーダー市場は着実に拡大しており、2024年にはさらに大幅な成長が予想されています。2023年のトップ企業の売上データによると、デジタルフォワーダー業界全体の売上は年々増加し続けており、特に大手企業が市場シェアを拡大しています。
ＤＨＬはロジスティックスの統合管理システムを開発しました。
＊ロジスティック･プラットフォーム
現在、世界の主要なロジスティック・プラットフォームには、次のようなものがあります。
・Kale Logistics
Kale Logisticsは、空港や港湾コミュニティシステム、貨物フォワーディング、税関業務などを提供しています。特にブロックチェーン技術を利用して透明性とセキュリティを向上させる取り組みが進んでおり、特に海上貨物や航空貨物の管理において重要です。
・GoFreight
GoFreightはクラウドベースのロジスティックソリューションを提供しており、リアルタイムのトラッキングやスマート倉庫管理、フリート管理が強みです。IoT（モノのインターネット）技術を活用して、倉庫運営やフリート管理を効率化し、市場の変動に迅速に対応できるようにしています)。
・Elastic Logistics
Elastic Logisticsは、需要の変化に応じて柔軟にサプライチェーンを調整できるプラットフォームです。たとえば、Shoragesは短期的な倉庫ニーズに対応するオンデマンド倉庫サービスを提供しており、企業が必要に応じてスペースを迅速に確保できるようにしています。
＊ロジスティック･プラットフォームの今後の成長
・Kale Logistics
2023年に Kale Logisticsは、クラウドベースのCargo Community Systemsを提供し、グローバルに展開しています。2023年にはシリーズBで3000万ドルの資金調達に成功し、北米やヨーロッパ市場への進出を加速させています。世界的な物流のデジタル化の進展に伴い、特に航空貨物や港湾管理システムでのシェア拡大が予想されています。2030年には、さらなる成長を遂げ、売上は大幅に増加すると予想されます。
・GoFreight
クラウドベースの物流管理ソフトウェアを提供するGoFreightは、リアルタイム追跡やスマート倉庫管理に強みを持ち、現在では成長著しいSaaS企業となっています。デジタルフォワーダー市場の成長により、2030年までにGoFreightの売上は急激に増加すると予想されています。特に、中小規模の物流企業向けのデジタルツールの需要が高まる中、成長を続けるでしょう。
・Elastic Logistics
Elastic Logisticsは、オンデマンドでの倉庫や輸送ソリューションを提供する企業やプラットフォームによって拡大しています。eコマースの成長により、フレキシブルな物流サービスの需要が高まっています。電動車両やドローン、AIを活用した物流の自動化が進む中、Elastic Logisticsの市場は急拡大する見込みです。柔軟なサプライチェーンを提供する企業は大きな成長を遂げ、2030年には売上が飛躍的に伸びると予想されます。
■ 物流の装置産業化
日本では、決算の情勢弁や人材の受け皿として物流子会社を傘下に置く大手荷主が数多く存在しました。
物流業界は重層下請構造。労働集約型の産業であるがゆえの必然の帰結です。
＊物流におけるＲＦＩＤの活用の現状と展望
RFID（無線周波数識別）は、物流において効率的な管理や追跡のために広く利用されています。特に、在庫管理や輸送管理において、その活用が進んでいます。
・現状のRFIDの活用
RFIDは、製品やパレットにタグを付けることで、倉庫内の在庫を瞬時に把握できます。これにより、従来のバーコードに比べて効率が大幅に向上します。例えば、複数のアイテムを一度にスキャンでき、物理的な接触が不要なため、ピッキングや検品作業が迅速になります。WalmartやZaraなどの企業は、RFIDを使って在庫のリアルタイム管理を実現し、商品の欠品や過剰在庫を防止しています。これにより、流通の迅速化とコスト削減が進んでいます。
RFIDは、サプライチェーン全体での追跡に役立ちます。製品が製造元から倉庫、そして顧客に届くまでの各段階でRFIDタグを利用することで、正確な位置情報や輸送状況をリアルタイムで把握できます。これにより、輸送中のトラブルを迅速に察知し、対応することが可能になります。例えば、FedExやDHLなどの大手物流企業は、RFID技術を利用して出荷の透明性を高め、顧客満足度を向上させています。
・今後の展望
RFIDは、IoT（モノのインターネット）と連携することでさらに進化する可能性があります。RFIDタグがIoTネットワークに接続されることで、リアルタイムでのデータ分析が可能になり、サプライチェーン全体の最適化が進むと予想されています。
RFIDによるデータは、AI（人工知能）技術と組み合わせることで、自動化された在庫補充や配送計画が可能になります。AIが物流データを分析し、需要予測や供給チェーンの改善策を提案することで、物流の効率が飛躍的に向上すると期待されています。
ただし、RFIDの導入にはコストやインフラの整備が必要であり、特に中小企業ではそのコスト負担が課題となっています。また、RFIDタグの読み取り範囲や環境要因（例えば金属や水の影響）による信号の減衰も技術的な課題です。
＊物流業界での画像認識技術の活用の現状と展望
物流業界では、画像認識技術の活用が進んでおり、特に倉庫管理や輸送の効率化に貢献しています。また、RFID技術と組み合わせることで、より精度の高い物流オペレーションが可能になっています。
・現状の画像認識技術の活用
画像認識技術は、倉庫内での在庫確認やピッキング作業に利用されています。従来のバーコードやQRコードに依存せず、カメラを通じて商品の位置や数量を自動的に把握することができます。たとえば、Amazonの倉庫では、ロボットと連携した画像認識技術を使って、商品を自動的に識別し、適切な場所に保管したり、出荷の準備をしたりしています。
物流センターや倉庫において、画像認識技術は梱包の確認やパレットの積載状況の自動検査にも活用されています。これにより、ヒューマンエラーの削減や、作業効率の向上が図られています。また、画像認識技術はトラックの積み降ろし作業の監視にも活用され、効率的な積載と空間利用を実現しています。
画像認識はセキュリティ強化にも役立っています。例えば、物流センターへのアクセス制御や出荷時の映像記録を通じて、不正行為の防止やトラブルの追跡が可能です。
・今後の展望
画像認識技術がAI（人工知能）や機械学習と組み合わされることで、さらなる進化が期待されています。AIは大量の画像データを分析し、リアルタイムでの在庫管理や需要予測に役立てることができます。これにより、物流の最適化がより精度高く行えるようになります。
自動化された倉庫や配送センターでは、AGV（無人自動運搬車両）が画像認識技術を活用してルートを認識し、自動的に荷物を運搬するシステムが広まっています。これにより、物流のスピードと効率が大幅に向上します。
5Gの普及により、画像認識技術はリアルタイムで大容量のデータ処理が可能となります。これにより、物流オペレーションの高速化や即時のトラブル対応がさらに向上すると期待されています。
画像認識技術はRFIDと組み合わせることで、さらに強力な物流管理ツールとなります。RFIDが物品の識別を行い、画像認識技術が状態をリアルタイムで確認することで、物品の移動や管理がより正確かつ迅速に行われます。RFIDで個別の物品を特定し、画像認識技術がその映像記録を保持することで、不正やトラブルが発生した場合でも迅速な原因追求が可能です。
倉庫ロボット化の導入条件は、2019年時点で、商品は箱に入っている、ピーク時の入出荷量が平常時の２倍以下、区画面積は2000�岼幣紂∈邏醗�数は100人以上、作業員の時給は1000円以上、今後５年以上の継続利用、を満たすことです。
人が作業していたときの手順をそのまま置き換えるのではなく、ロボット作業ならではの手順を考え出す＝創造が必要です。
自らが目指す変化を、自らが起こす。その展望を共有し、未来を共創する仲間を作ります。
■ 物流会社の勝ち残りの方向性
＊日本のロジスティックスプラットフォーマー
1. MonotaRO
MonotaROはB2B向けのeコマースプラットフォームで、工場や物流のための機械部品や消耗品を販売しています。高度な物流ネットワークを持ち、AIを活用した在庫管理と最適化システムを導入しており、顧客への迅速な配送を実現しています。今後は、国内だけでなく、アジア市場への拡大も視野に入れており、物流プラットフォームとしての重要性が高まると予想されています。
2. SBSホールディングス
SBSホールディングスは、倉庫管理から配送までを一貫して提供する総合物流サービス企業です。特に、冷凍・冷蔵食品の物流や医療機器の輸送など、専門的な分野での需要に応えています。近年はAIとIoT技術を活用したスマート物流の開発に注力しており、デジタル化を推進。将来は、AIによるリアルタイムの需要予測や効率的な配送ルートの最適化により、さらなる成長が期待されています。
3. Hacobu
Hacobuは、日本のデジタル物流プラットフォームで、トラックや倉庫の効率的な管理を目的としたクラウド型ソリューション「MOVO」を提供しています。MOVOは、物流拠点での作業効率を改善し、トラックの稼働率を最大化することに焦点を当てています。今後は、データの活用を通じて物流の透明性を高め、物流ネットワーク全体の最適化を進めていく計画です。
4. Kintetsu World Express（近鉄エクスプレス）
近鉄エクスプレスは、国際的な物流ネットワークを持ち、航空・海上輸送や通関サービスなどを提供しています。今後は、デジタルツールとAIによるリアルタイムの追跡と物流管理に注力し、サプライチェーンのデジタル化と効率化に取り組むと見られています。
物流の装置化が進めば、物流サービスは定型化･定額化します。
＊医薬品卸のロジスティックスを担う大手企業の現状と展望
・メディパルホールディングス（Medipal Holdings）
メディパルは、医薬品や医療機器の卸売事業に加え、物流機能を強化しています。特に、コールドチェーン（温度管理が必要な医薬品輸送）における対応力が高く、国内外にネットワークを展開しています。また、AIを活用した物流最適化や在庫管理の効率化に取り組んでおり、顧客のニーズに応じた迅速かつ正確な供給を目指しています。
・アルフレッサ ホールディングス
アルフレッサは、日本国内に強力な物流拠点網を持ち、医薬品や医療機器、健康関連商品の卸売を行っています。同社は、物流センターを中心に最新の自動化技術やAIを導入し、配送効率の向上や在庫管理の最適化を図っています。また、医療機関への直送機能も強化しています。
・スズケン
スズケンは医薬品だけでなく、医療機器や検査機器の物流も手掛けています。多様な医療ニーズに応じた柔軟な供給体制を構築しており、特に医薬品のコールドチェーン物流において競争力があります。高度な温度管理システムを導入し、品質管理を徹底しています。
・将来展望
リアルタイムトラッキングや需要予測を通じて、供給連鎖全体の最適化が期待されます。これにより、納品の遅延や在庫不足を防ぎ、効率的な運用が可能となります。
新型コロナウイルスワクチンの輸送や、バイオ医薬品の普及に伴い、コールドチェーンの需要が急増しています。将来的には、より精密な温度管理や効率的な輸送システムが求められると考えられます。医薬品卸企業は、温度管理技術や専用車両の導入を拡大し、高品質な輸送サービスを提供していく必要があります。
医薬品物流は、医療機関との緊密な連携が重要です。特に高齢化社会が進む中、医薬品の需要がさらに増加するため、迅速かつ正確な供給体制がますます求められます。これに応じて、遠隔医療や地域医療ネットワークとの統合も進んでいくでしょう。
＊物流システムのインテグレーションサプライヤー
・国内
キーエンス、三菱電機、オムロン、川崎重工業、豊田自動織機など、FA分野で強みを持つ企業が、物流システムのインテグレーションにも力を入れています。
・海外
Amazon、FedEx、UPSなどの物流大手企業が、自社の物流ネットワークを基に、インテグレーションサービスを提供しています。また、ドイツのKUKAやスイスのABBなど、産業用ロボットメーカーも、物流システムのインテグレーションに参入しています。
■ 物流ビジネスでの新たな事業機会
アマゾンは「ロジスティックス･カンパニー」。サプライチェーン全体の統合管理サービス。１to１マーケティングを実現するためのデータプラットフォームサービス。［サーバーシステム＋物流ネットワーク＋顧客情報］。
マルチテナント型の大型物流施設が増加しました。物流センターの床面積の広さは、オペレーション効率に比例します。
■ あとがき
グローバルスタンダードから外れた意思決定をしたからこそ、日本は世界一便利で品質の高い宅配サービスを手頃な価格で利用できていました。
