「ロジスティックス4.0」 小野塚征志 2019年 日経文庫

 物流好きな生禿としては、読まないわけにはいかない本です。思考力不足で上っ面な面が目立ちますが … 、それは読者が補うことを期待しているのでしょう?著者の言う「自ら目指す世界を創造し、世界を変える」行動が読者に投げられています。 以下は、この本の要約と引用です。*印は検索結果と生禿の見解です。


《はしめに》

 次世代テクノロジーは、省人化と標準化による装置産業化をもたらします。

《ロジスティクスにおける革新の変遷》

 第二次大戦中の「兵站」に活用されたフォークリフト(フォーク:爪)は、パレットともに物流の現場に普及していきました。パレットは、荷物の大きさを規格化しました。海上コンテナも荷役作業を効率化しました。当時の貨物船は、港湾内に停泊している時間の方が海上で航行している時間よりも長かったと言われています。鉄道コンテナが共通化している地域では、一貫輸送が可能です。

 WMS(倉庫管理システム)とTMS(輸配送管理システム)が導入され、1978年には、NACCS(輸出入・港湾関連情報処理システム)が稼働しました。

 ドイツを本拠とするインダストリー4.0の中で、ロジスティクス=サプライチェーン4.0の役割は高まってます。

《1. 省人化による革新》

 ダイムラーは2025年までに自走運転トラックを実用化を目標としています。「フレイトライナー・インスピレーション」は、高速道路を時速80Kmで自動走行できます。

 日本では2018年にCACC(強調型車間距離維持支援システム)を活用したトラック隊列走行の実証実験が開始されました。2020年からは、後続無人隊列走行に移行し、2022年には事業化を実現する目標です。先頭車両は運転手が運転し、2台目以降は自動走行システムで無人走行します。インターチェンジには、無人隊列走行されたトラックをまつ運転手の待機所が整備されます。

 アマゾンは、ドローン配送システム「アマゾン・プライム・エア」のテスト飛行を各国で実施しています。DHLは、離島や山岳地帯への輸送手段としてドローンを活用する計画です。このドローンは、パーセルコプター(オスプレイのようにプロペラと固定翼が水平になり高速で飛べるタイプのもの)です。

 ラストワンマイルの配送には、自走式配達ロボットも実験されています。配達先に到達すると、注文した人のスマートフォンに連絡する仕組みです。

 無人自動運鉱船も開発されています。人手不足はトラック以上に深刻です。

 現在の自動倉庫は、入出庫が特定の場所に限定され、取扱量の増大にも対応できません。ECや店舗出荷用の物流センターは、パート・アルバイトの集めやすい住宅地付近に配置されます。

 アマゾンは、2012年にロボットメーカーのキバ・システムズを買収。棚搬送型ロボット“ドライブ”はアマゾン専用。既に10万台が導入されています。
*アマゾンの新型ロボットPegasusシステム
Kivaが大型の棚を備えてフェンスに囲まれた「グリッド」の中を動き回っているのに対して、Pegasusは個別の荷物を仕分けして運ぶ。
*Amazonプライムの荷物を運ぶ6輪自動配達ロボット「Scout」の試験を開始
ロボットが「ペットや歩行者、そのほか通り道にあるすべてのものを安全に、効率的に避けることができる」ことを確認する。歩道を走る自律走行ロボットは、「ラスト1マイル」の新たな方法になる。ロボット研究者は道路を比較的“整った”環境であると考えている。車道であれば普通は信号や車線、標識などが整然と並んでいるからだ。しかし、歩道は純然たるカオスと言っていい。ラストマイルの部分を歩き回ってこなす人間の能力に勝つのは、かなり大変なこと。アマゾンのScoutは歩く速度と同じくらいのペースで動く。また、人に蹴飛ばされない程度には、ぱっと見は親しみやすい雰囲気が求められれる。一方で、親しみやすすぎれば、子どもたちが駆け寄ってハグしたりして、ロボットが仕事をできなくなってしまう。サンフランシスコ市は2017年末、こうした配達ロボットに厳しい規制を設けた。街を走らせるために許可を求め、スタートアップが配達ロボットをテストする際には、ひっそりと工業地域で実施することを義務化した。

《2. 標準化による革新 〜 垂直統合による標準化と水平共用による標準化》

 垂直統合による標準化は、トヨタが生み出したジャスト・インタイムを、サプライチェーン全体に拡大し、デジタル技術の活用により実現するものです。

 スマートスピーカーのアマゾン・エコーは人工知能「アレクサ」を搭載し、ユーザー情報を収集しています。2018年に回転した無人CVS「アマゾン・ゴー」も、来店客の買物動態情報を収集しています。

 ザラの商品企画から販売までの期間は2週間。スペインの本社に多くのデザイナーを配し、週二回の頻度で店舗に出荷しています。試着されたが購買に至らなかった商品を把握して、非購買要因を解析しています。

 フォワダーは、荷主に代わって、輸送手段(船舶・航空・鉄道・トラック)の確保や通関業務を代行します。トランコムは、求荷求車のマッチングで成功した会社です。DHLは、様々な物流関係のシステムと接続し、統合管理できるプラットフォームを開発しています。*物流の最適化を実現する企業には、多くの事業機会があります。

 航空測量会社のパスコは、TMSを核とした物流サービスソリューションを提供しています。気象情報を活用することで、災害の発生による輸配送への影響を最小化します。

 宅配トラックにセンサーを付ければ、地域の防犯対策や道路交通情報が把握できます。宅配ドライバー配達先の情報を収集できます。

《3. 物流の装置産業化》

 現在のAIが不得手とするのは、データが十分にない状況下での判断です。物流の基本オペレーションには、AIロボットが不得手とする作業はありません。物流センターでのロボットの活用が日本より5年程度進んでいる欧州でも、2030年でも過半の作業は人間が担うと想定されています。

 味の素とカゴメと日清オイリオと日清フーズとハウス食品の5社は、物流を共同化しました(味の素物流)。日本通運と三井倉庫は、家電業界で複数の物流子会社をグループ化し、国内での寡占体制を築きました。三井倉庫は、三洋電機とソニーの物流子会社を買収しました。電機メーカーが三井倉庫に在庫を置けば、家電量販店の物流センターは不要になります。医薬品業界では、物流機能を3PL化することで外部化が進みました。スズケンは、メーカー物流と卸売物流のターミナル機能を同一の物流センターに集約し、医療機関までの一気通貫の高品質な製品管理を実現しました。

 物流業界は、重層下請構造。労働集約産業の必然です。装置産業化は、業界構造を覆します。

 SPA(製造小売業)では、RFID(非接触タグ)を用いた一貫管理が有効です。大日本印刷は、2020年までに、RFIDを1円にすることを目標にしています。経済産業省は、2025年までに、大手CVSの全ての取扱い商品にRFIDを取り付ける政策を策定しました。RFIDは複数のタグを同時に読み取れます。籠の中に入ったままで1度にスキャンできます。レジでの精算が不要になります。カメラとセンサーによる画像認識システムは、タグ無しで商品を認識することができます。タグなのか画像認識なのか?の動向を見定める必要があります。

 人が作業していた手順で機械化するのは無駄を発生させます。新しい作業手順を考案することが革新につながります。

《4. 物流会社の勝ち残りの方向性》

 一つは、資本集約な事業に転換し、プラットフォーマーを目指す方向。寡占地位を自ら構築します。

 日本で最も装置産業化が進んだ物流は宅配便です。ラストワンマイルは労働集約ですが。あらゆるサービスに定価が存在します。ヤマト運輸・佐川急便・日本郵便の3社の占拠率は90%を超えます。

 物流の装置産業化が進めば、サービスは定型化・定額化します。物流に関する様々な機能と情報が繋がります。荷主と物流リソースをマッチングするビジネスが台頭します(プラットフォーム化)。

 プラットフォーマーは3社程度。CVSでは、7-11・ファミリーマート・ローソン。携帯電話は、NTTドコモ・KDDI・ソフトバンク。食品卸は、三菱商事・伊藤忠商事・国分。医薬品は、メディパル・アルフレッサ・スズケン・東邦。医薬品物流は、三菱倉庫・日立物流・スズケン。

 物流+オペレーションアウトソーサーの価値を提供する。国内有数の低温物流会社であるQPの物流子会社のキューソー物流システム。ヤマトロジスティクスは、インプラント・カテーテル・人工臓器・内視鏡をメーカーに代わって一括管理するローナー支援サービス(突発的な手術などの緊急時にも、医療機器や手術工具などを欠品させずに在庫を削減。管理から出荷、輸配送、回収、洗浄、メンテナンス(検査)までをワンストップで提供するサービス)を展開しています。

 クワイエット・ロジスティクスは、キバ・システムからロボットが買えなくなり、独自のロボット「ローカス・ボット」を開発しました。世界で最も使用されている強調型ロボットです。

 3PL事業者の日立物流は、2016年、佐川急便のSGホールディングスとの資本業務提携を発表。2018年、中国から日本への海上輸送のフォワダーAITとの資本業務提携。IoTソリューションのウフルとの業務提携を締結。シェアリング型のプラットフォームセンターを開設する予定。

《5. 物流ビジネスでの新たな事業機会》

 アマゾンの企業向けのクラウドインフラサービスAWSは、世界の占拠率34%。アマゾンはECでは赤字ですが、AWSが営業利益の殆どを稼いでいます。空きスペースを提供し、コスト構造が他社とは異なります。アマゾンは、顧客の要望に対応しサービス水準を高める会社です。

 アマゾンの物流ネットワークはEC事業のために投資されたアセット。世界に200以上の物流センターを擁し、米国では数千台規模のトラックを運用しています。5015年からは、一般個人に宅配業務を委託する「アマゾンフレックス」を開始。日本では、地域配送業者「デリバリープロバイダ」を利用しています。航空輸送では、自社専用の貨物機を40機リースし、運用しています。北米・中国間での非船舶運用会社の事業承認を取得しました。アマゾンは、世界最大の物流会社でもあります。「アマゾンはロジスティクス・カンパニーである」ジェフ・ベゾス。そして、世界一の1to1マーケティングのデータ・プラットフォームでもあります。アマゾンは、全ての機能について、自前主義を貫いています。サプライチェーンの全てを運用管理することができます。

 アスクルは、BtoCの通販サービス「ロハコ」を開始。マーケティングラボに参加した企業は、アスクルの顧客-購買-アクセス-問い合わせ-レビュー-配送のデータを自由に利用できます。現在は、参加企業が百社を超え、企業の壁を超えたコラボレーション企画や、通販専用のパッケージが開発されています。自社主義を貫くアマゾンとは真逆な方針でプラットフォームを構築しようとしています。

 運ぶ・荷役する・梱包する・手配する=物流のオペレーションは、活動結果(パフォーマンス)の数値化が簡単で、価値を訴求しやすい分野です。

 自動運転のトラックを売ることの危険を回避すべく、また収益源泉であるアフターサービスを取り込むために、メーカーはリース会社となります。傭車を利用していた物流会社の委託先がトラックメーカーに代わります。トラックメーカーが元請の機能を担おうとするかも知れません。

 ロボティクスの最終目標は、自動倉庫の利用に適さないECと店舗出荷用の物流センターです。汎用ロボットを開発し、量産効果を高めることができる。その為にも特定の場所での使用を前提としたロボットを開発し、運用方法を確立することが重要です。

 カーシェアやライドシェアは、自動運転の時代にはタクシーに乗ることと同じになります。車の生産は、自動運転タクシーの提供になります。ロボットは、買うものではなく、利用するものになります。

 物流管理ステムは、物流に関連する様々な機能と情報を取り込むことで進化してきました。交通情報・気象情報・市場価格と販売実績・消費者選好 … ビッグデータを取り込み、ロジスティクスの全てを最適化します。
*その究極のシステムは、米国国防省の調達-生産-物流-保守の全ての供給システムを管理するロジスティクス=「コミニュケーションズ」です。

 受け入れる荷物の大きさと出荷量を限定すれば、省人化を実現しコスト競争力を発揮できます。

 HISは、受付・案内・清掃・運搬をロボット化した「変なホテル」を開設し高収益を得ています。

《6. 未来のロジスティクス》

 日本は世界屈指の物流品質を誇ります。個別対応の分だけ管理費は高くなります。欧米の物流会社は最適化を重視します。マニュアルにない作業はできません。ロボットの導入は進んでいます。

《あとがき》

 顧客第一主義の姿勢が日本経済の成長を支えてきました。そのロジスティクスを世界標準とします。*それをやるのは、アマゾンです。