入院中に読んだ最後の本「EQ」の抄録と感想の続きです。

● EQの応用

結婚生活について筆者は、「夫は妻が理不尽な要求をつきつけて爆発すると不満を漏らし、妻は夫が(殻に閉じこもって)自分の話を聞いてくれないと嘆く」「男の子と女の子が情動的にかけ離れた世界で育つことにも原因がある」と述べています。「女の子は親しいものだけの小さなグループを作り、男の子は大きな集団で競争しながら遊ぶ」と育ち方の違いを指摘します。

犬も食わないと言われる夫婦喧嘩の前に、心を静めることを著者は推奨しています。
・思い込みを問い直す − 否定的な思考から自身を解法する
・心を開いて聞く − 平静になって、相手の感情を鏡映する

職場で上司が部下に注意する時は、気づいたらその場で、具体的に、解決策を示して、直接伝える、のが良い指導法です。偏見について、「差別行為に目をつぶる行為こそ差別を助長する」と指摘しています。

組織の生産性は人間関係に左右されます。面白いのは、「参加意識の強過ぎる人間は、張り切り過ぎて他のメンバーに対して支配的になってしまう」ことです。そして、「調和のとれたグループでは、傑出した能力を持つメンバーがいることによってグループ全体の成果が向上します」。また、「非公式な組織の真価は、予期せぬ問題が持ち上がったときに発揮されます」。

医療について、「重病の治療に関しては情緒面のケアを医療行為に組込むべき」としています。免疫系は中枢神経と結びついていて、ストレスや否定的感情、不安が免疫細胞の効果を弱めることになります。

リラックセーションと希望、楽観主義は、健康な生活をもたらします。また、社会的な孤独感は心身に害を及ぼします。筆者はヨガを癒し効果があると推奨しています。ヨガは、本当に体得しているかどうかは別にして、欧米ではかなり普及しています。

心の悩みは吐露させ(嘆き悲しませた)方が有益です。ですからまず、共感を得られる相手を見つけることが必要です。

「破壊的な心的外傷を受けた者は、生物学的には元通りにはならない」が、つらい記憶に囚われないように制御することができます。

筆者は、EQは教育で高めることができると主張します。ます。4歳までの時期に、「情緒面で賢い両親に恵まれることが子供にどれほど多大な利益をもたらすかが明らかにされた」としています。

気質は変えられるとする筆者は、例えば、陰気か陽気かは、前頭前野の左右どちらが活発に活動しているかに関係があるようですが、「赤ん坊が泣いたからといってすぐ駆けつけて抱き上げたりしない、愛情ある親に見守られて不安に対処する練習を重ねた赤ん坊は、自力で不安な場面を乗り切ることを学習する」と論じます。

幼児期は脳の発達において重要です。「新生児の脳には成人の脳より遥かに多くのニューロンががあるが、誕生直後の刈り込みと呼ばれるプロセスによって、あまり使われない神経結合は失われ、よく使われる神経回路が発達する」のです。そして、「情動の安定に関する部分は、脳の中でも特に成熟に時間がかかる。間隔野は幼児期の早い段階で成熟し、大脳辺縁系は思春期までに成熟するが、前頭前野(情動の制御)の成熟は思春期後期(18歳頃)までかかる」のだそうだ。

「大人から慰めて貰う経験を重ねて自分の感情を静めることを学習した幼児の脳では、情動ストレスに対処する回路が発達し、一生を通じて情動のコントルールが巧くできる」と推測されています。「親は子供の迷走回路の感受性を和らげることができます。子供が抱いている感情について話し相手になり理解を助けてやること、批判や断定をしないで感情の問題解決に手を貸してやること、喧嘩の相手を殴ったり、悲しい時に殻に閉じこもる替わりにどうすればいいかを教えてやることです」(ジョン・ゴットマン)。

生活力を高める≒EQ教育は可能だとの立場から、筆者はセルフ・サイエンスを学校教育に取り入れることを主張しています。情動を自己認識し、情動を制御するコツを身につけ、共感能力を高め対人関係のスキルを高めます。教育プリグラムではプログラムでは、知性でも情緒でも同じですが、何歳で何を教えるか、が重要です。

ライフ・スキルを導入した小学校には、以下のようなポスターが貼られているそうです。

・心を静めて、行動する前に考えよう
・何をどう感じるか言葉で言ってみよう
・前向きに目標設定しよう
・いろいろな解決策を考えよう
・結果も先に考えておこう
・ベストプランを試してみよう


また、学級の仲裁係は、
・双方の言い分を主張させる
・双方が相手の主張を理解したか確かめるために、相手の言い分を自分の言葉で言い換えさせる
・両者が納得できる解決策を探す
役割を担うそうです。

筆者は最後に、発砲事件が自動車事故を抜いてアメリカ人の死亡原因の第一位になったこと、それは情動教育おざなりにしてきた結果だと訴えています。