「発達障害と人間関係」 宮尾増知 2021年 講談社現代新書

 発達障害の本は数十冊読んでいるが、その人間関係と対応方法について書かれている本は珍しいので、手に取りました。この本の後半、対応の具体策は参考になりました。ありがとうございました。 以下はこの本の引用と要約です(後半を中心に)。


■ はじめに

 知的障害を伴わない自閉症スペクトラム障害(ASD)は、仕事を始めてから診断されるケースも多くあります。

 ASDの人は「字義通り」という特性があります。相手の表情や言葉の裏を読む、TPOに合わせて使い分けることが苦手です。自分が気になった言葉に支配されてしまうという偏りがあります。

 指示する言葉には、正確性、論理性、具体性を持たせます。

 「カサンドラ症候群」は、ASDの配偶者と情緒的な相互関係が築けないために生じる身体-精神症状を表します。身体症状が顕著です。

■ 発達障害とカサンドラ症候群

 発達障害は、生まれつきの障害であり、脳の機能になんらかの先天的な問題があり、不適応の状態になります。

 発達障害のDSN-5の分類
 ASD(自閉症スペクトラム障害)
 ADHD(注意欠如・多動性障害)
 SLD(限局性学習障害)

 ASDは、社会的コミュニケーションの障害と、限定された興味の二つを満たすと定められています。コミュニケーションの障害は、「視線が合いにくい」などがあげられます。他人との波長が合わず、相手の立場になって考えることが苦手です。限定した興味と反復行動。こだわりに強さも特徴です。物事を決まった順序でやらないと気がすまないなど、新しい事態に混乱しやすい傾向があります。学習を重ねれば、感情を頭で理解することができます。

 木を見て森を見ず状態になっている。聴覚過敏を伴うケースも多い。ASDの症状は様々で個人によって特性も広範囲にわたります。

 ASDの分類
 積極奇異型 知らない人にも話しかけ、馴れ馴れしくします
 受身型 誘われれば付き合う
 孤立型 他人との関わりに苦痛を感じる

 カサンドラ症候群は、正式な診断名ではありません。パートナーとの情緒的な相互関係が築けないために生じる身体的精神的症状です。

 カサンドラはアポロンに求愛されて予言の能力を得るが、アポロンの間が冷めるのを予見します。アポロンは、カサンドラの預言を誰も信じない呪いをかけます。トロイの木馬を予言しますが、誰からも信じて貰えません。

■ 職場と人間関係

 ASDの上司には、選択肢を二つ示し、上司に決断をしてもらいます。面従背腹で接した方が無難です。真正面から反論するのはNGです。上司が得をすることを提案します。

 ASDの人はマルチタスクが苦手。サービス業などの場合、完了までのプロセスが複雑で、想定外のことが発生した際、うまく対応することができません。

 ASDの人は論理的。評価基準などを明確にしておくことが大事です。

 ASDの人は、予定を視覚化しておくことが必要です。

■ 家族と人間関係

 カサンドラの妻たちが、特に傷つくのは、夫の子供への冷たい仕打ちに接するときです。悪意がないため、謝る必要性を感じません。

 ASDの人たちは自分自身の能力と責任だけで生きてきたと感じています。事実を絶対視しているので結果しかみていません。

 母親が子供と遊ぶ姿を見て学ぶことができます。妻が教える必要はありません。

 統合失調症やASDの場合、シナプス刈り込みが不十分ではないかと考えられます。

 ASDの人が感情的な言葉を口にした場合、冷静に共感してあげることが大切です。

 「バカヤローと言われたら、バカヤローと言えばいいんだ」「…よくわかった。いったやつも悪い。でも殴ったことだけは謝れ」。

 どんな人でも、5回同じことを繰り返せば理解できるものです。

 イライラしたときなど、瞑想健康法「マインドフルネス」も有効です。スマホにも座禅のアプリがあります。

 ASDの母親は、乳幼児の要求を推測できません。その様子は、ネグレクトと捉えられるときもあります。

 ASDの人は全体の一分しか見えないことがあります。

 ASDの原因の半分は遺伝。多遺伝子性です。

■ 発達障害と夫婦関係

 仮想空間ではASDの人たちがアバターを通じて円滑なコミュニケーションを取り合っています。第三者的な視点で話せば、相手の立場や気持ちがわかるのです。

 初めての妊娠と出産はどんな女性にとっても不安を感じるものです。妻は誰よりも夫が支えてくれることを望みます。

 妊娠・出産時の記憶は、いつになっても鮮明に思い出すことができます(フラッシュバルブ・メモリ)。

 ASDの人たちは「目的」がなければ行動を起こす動機にはなりません。妻との間で必要とされる共感が目的になるとは思っていません。

 ASDの人に対しては、はっきり具体的に口に出して言わなければいけません。

■ 発達障害と親子関係

 ASDの夫は、父親としての問題の方が深刻です。父親としての役割を自覚していない、と言われることがあります。

■ どうすればラクになれるのか

 カサンドラ状態からの回復は、治療のみによって達成し得るものではありません。

 周囲から夫婦間に問題があることを信じて貰えないことが、カサンドラの本質です。周囲の理解には計り知れない効果があります。

 ASDの人は突然の出来事に弱く、予測することが苦手です。相手の世界を想像することができないので、疎外感を持ちやすくなります。相手から自分を認めるメッセージが無いと、自分が否定されたように感じ、相手を敵だと判断する傾向があります。

 ASDの人には、感情的にならず、無機質な情報として伝えます[つぶやき]。

 ASDの人は、他人から指示されることを嫌います。その一方で情報収集はします。