「ビッグデータ・ビジネス」 鈴木良介 2012年 日経文庫

 日経文庫のビッグデータの本なので一応読んでおこうかと・・・。内容はガッカリだったけれど …、紹介されている事例もほとんど既知のもので …、でもほんの一部だけれど知らない事もあったので …、ブックオフで百円だったし、ありがとうございました。 以下はこの本の引用と要約です。*印の部分は生禿の見解です。


《1. ビッグデータ・ビジネスとは何か》

 スマートホンなど消費者自身による情報通信技術への投資に事業者がただ乗りすることが可能になりました。

《2. 顧客の好みを先読みする個客対応》

 陳列棚に設置されたセンサーによって、どの商品が手に取られているかを自動記録することができるようになりました。マイクロソフトの3Dスキャン技術のキネクトにより、POB(購買時点)のデータの取得が容易になりました。ミディが提供していた購買時点映像分析作業の大部分が自動化されます。デジタルサイネージ(電子広告システム)との連動が工夫されています。

 ドラッグストアにおける滞在時間の長い売り場を見ると、男性用化粧品領域が多く含まれます。雑誌や店頭で得られる情報が少なく、「売場迷子」になっています。スポーツクラブや理髪店などでのサンプル提供を強化し、売場で迷わないようにします。

 トリンプ・ジャパンは、試着したにも拘らず購買にいたらなかった商品のデータをi-Padを介して入手しています。

 ライフイベント発生の兆し。結婚情報誌購入の瞬間に結婚指輪の販促を行うことが合理だが、二週間後にDMを送るのは不可。一定の割合で破局が生じるからです。

 米国のVISAとGAPの提携により、GAP以外の店でVISAを使用すると、GAPへの来店を促すクーポンが携帯電話に配信されます。利用店舗や現在位置などの条件が設定されています。

 複合イベント処理は、データを即時に分析し、医療現場での患者の望ましくない行動の検知や、金融取引の実現に用いられています。

 個客対応への顧客の反応は、「気が利く」か「気持ち悪い」です。知り得る情報であっても違和感は残ります。

*お客様との距離感を設計するのは、マーケッターの仕事です。生禿は20年以上にずっとやってきました。データ屋の仕事ではありません。例えば、以下のような取り組み行ってきました。

*個客満足をビッグデータで推測するこよは不可能です。例えば、旅館の仲居さんが馴染み客から予約を受けた時に、「いつもの朝日新聞をご用意させて頂きます」と言って喜ぶ人と怒る人がいます。喜ぶお客様は「気を遣って貰うのが嬉しい」人。怒るお客様は「気を遣って貰うのが当たり前」で、(他人に優しい気持ちを持ってはいても)それ自体に感謝する習慣の無い人です。さて、何をすればお客様が満足するかは誰でも/機械でも解ります。つまり、データ解析で明らかにできます。しかし、どのようにしたら満足させられるかは、データ解析では判断し難い課題です。それは、(人工)知能に任せるべき問題です。

 お客様からデータを取得することの合意を得て、かつデータの取得を明示し、それによってお客様に利益を与えていることを実感させます。また、お客様が自身でコントロールしているという感覚を得られる工夫も大切です。

 インターネット広告は、数多くのWEBサイトを束ね、行動ターゲティングによって、大規模な集客を可能にしています。自動車のニュースを読み、売ろうとしている車種を検索し、試乗会が行われる店舗の地域に住んでいる人に公告を配信します。また、自動車ローンに関するサイトを閲覧していれば購買意欲が高いと判断されます。

 消えやすい購買意欲を購買に繋げるためには、即時の処置が必要です。*こんなことをするから「この会社からは二度と買わない」という『金輪際切れ』になるのです。

《3. ソーシャルメディアの限界を超える》

 その時その場で状況を把握し、瞬時に購買に誘導する。*このような「押し売り」により、事業の可能性は短時間で食い潰されていきます。・

 データはその由来によって、ソーシャル/センサ/業務の三つに分類できます。

 ソーシャル由来データ。SNSはソーシャルグラフと呼ばれる人と人との関係情報の収集と活用を行っています。センサ由来データは、GPS受信機を用いた位置データや監視カメラの映像データや無線タグ(RFID)データ。業務由来データは、携帯電話会社の利用者所在地データやPOSデータやCRMデータ。

 従業員の笑顔は、顧客満足度を決定する要因。カジノ運営会社のハラーズを訪れたお客様は10分に一度はほほ笑みかけられます。オムロンTSSの「スマイルスキャン」は笑顔度合いを評価します。コールセンタースタッフが笑顔で応対しているかの表示に用いられています。

 温度・湿度・加速度(振動・衝撃・挙動)・色彩検知などの汎用センサ。センサーが何を感知した時に何をするかをスマートフォンなどに設定する機能を持ちます。

 顧客理解の方法は「AskからListenへ」。質問するのではなく、聞き耳を立てる/感知する。

《4. 何を作ればいのか、何を作ってはいけないのか》

 アマゾンの書籍リーダーKindleは利用者が下線を引くことができます。サーバーに蓄積された「どの部分に下線が引かれたか」のデータを分析できます。

 グリーの「データ駆動型開発」。データに基づいて即時にPDCAサイクルを回します。

 3Dスキャナや3DプリンターやPC制御ミシンにより、個別仕様の商品を受注生産することが可能になりました。スチームコンベクションオーブン(スチコン)は、ヒーターと蒸気を併用してあらゆる料理を行うことができます。

 fitbit ultraは健康機器デバイス。fitbitは、外部事業者にデータの公開しています。プラットフォーマーが提供するデータや機能を利用して、独自の商品を開発することができます。

 理化学研究所の「京」は、2011年のスーパーコンピュータ性能ランキング1位。

 部門別の“サイロ化”が著しい場合は、データが共有されません。外部事業者からデータを購入した方が手間が少ないということが起こります。

 「失業保険」をWEB検索した人数により、失業率を予測することができます。

《5. 何円ならば買いますか》

 需要と供給を整合させる方法は、1)需要予測、2)(即時の)供給調整、3)価格調整。

 価格の特性は、比較し易いこと。ショールーミングによって現物を確かめ、購入は価格を比較して行う消費者が増加しています。

 運転のし方によって保険料率を変える自動車保険は、安全運転を促しています。

 航空会社やホテル業者は、需要予測と料金設定の施策を工夫しています(イールド・マネジメント:収益管理)。

 電力・通信・交通などの社会インフラには、需給調整の仕組みが適用されています。電力需要が供給を超えそうになると、利用者が節電に取り組むように促す「デマンド・レスポンス(料金)」。通信機器のエリクソンは新興国を中心に提供している「ダイナミックディスカウントソリューション」。通信が集中する時間帯の通信料は高くし、虚弱なインフラでも耐えられるよう混雑を平準化しています。「空いている時間帯は割安にする」形で、空き時間への誘導が行われます。集中を緩和し、インフラ投資の圧縮と収益率の向上を実現しました。*社会インフラはピーク時に合わせて設備が計画され料金が設定されます。しかし、需要のピークを抑制することで、投資と価格を圧縮することができます。

 イケアは低価格で商品を提供するためには、顧客の協力が必要だと明言し、そのことが高い顧客満足度に繋がっています。価格についてお客様に丁寧に説明する姿勢が重要です。

 CRMは、事業者がお客様に関するデータを収集・活用します。VRM(Vendor Relayional management)は、お客様個人がデータを保有・活用することにより事業者との関係を管理します。

《6. 社会課題の解決と『心地よさ』への挑戦》

 本田技研と埼玉県の実証実験。急ブレーキが多い地点を抽出。現地を観察し対策を行ったところ、ブレーキの回数が7割減少しました。

 Kimetricは、マイクロソフトのモーションキャプチャーシステム「キネクト」を応用して「万引きと思われる振る舞い」を検知し、警備員の業務を支援します。

 日本国は、1998年以来14年連続して、年間の自殺者が3万人を越えています。人口当たりの自殺率は世界第6位。15〜34歳の世代の死因の第一位が自殺となっているのは、先進7カ国っでは日本のみです。

 自殺を示唆する兆候の探索。硫化水素を用いた自殺では、特定の洗剤と薬品を混ぜると硫化水素が発生することがネットで流布していました。自殺は防ぐことができます。

*自殺の兆候を探索して自殺を減らすという不見識には呆れます。自殺の兆候を捉えて自殺を阻止することは自殺を解決することにはなりません。自殺の原因は、格差の大きな社会と希望の無い未来です。残念ながら根本は、現存する人間の性。とは言え、日本国の自殺率の高さの要因は、これを助長している非人安部と、非人を首相にしている日本国民にも起因されます。