「発達障害の素顔」 山口真美 2016年 ブルーバックス

 気になったことがあり再読しました。今向かい合っている子供への対応で参考になりました。ありがとうございました。 以下は、上記の観点からの、引用と要約です。*印はWEB検索結果です。


■ はじめに

 自閉症をはじめとする発達障害は、遺伝子や生化学の検査で診断できない。

 ASD(自閉症スペクトラム障害)、ADHD(注意欠陥多動性障害)、ディスレクシア、… 障害の程度は違うが知覚認知に歪みがあることで共通している。障害によって独特の視覚認知機能をもち、その背景には視覚や認知にかかわる脳の特性性がある。

■ 発達障害とはなんだろう

 他人の心を推論できない場合、自分と他者の心は同じと考える。

 自閉症者は、知的な操作はできて、心の推測ができない。

 他社の心を推論する4つの構成要素。志向性検出:意図をもって自律して動いているものの検出。視線検出。共同注意:他者が注目している対象に自分も注目。心の理論:他者の信念を推論。

 自閉症のポイントは、「視点のずれ」。何かが欠けているわけではない。そもそも心のすれ違いは誰にでもある。

■ 発達の障害を考える

 発達障害は、刻々と変化する。

 発達障害者は、シナプスの刈り込みが進んでいない。

 発達障害者の1歳の誕生日のビデオを分析すると、名前を呼ばれても反応しない、人に物を見せる、指差し、他人を見る行動が少ない。

 発達障害者は、コントラストの視力が高い。

 発達にとっては、物理的な欠如よりも、心理的な欠如の方が影響が大きい。発達には親子の触覚的な交流が最も大事とされる。

 恐怖の体験は、偏桃体の大きさを変えてしまう。

■ 感覚の発達

 発達障害者の問題は、対人的な衝突と、自分の感覚。学童期に信頼のおける友人がいるかどうかが、その後の人生の適応度を決める。

 外界の雑音を遮断することが、成人するまでの人生の最大の課題。動物にしかとらえられない周波数の音まで聞き取れ、環境音をシャットアウトできない。

 自閉症者は、感覚をフィルターを通すことなく、直接受け止める。彼らの感覚は敏感で、その範囲が狭い。人の声が聞き取りにくい。それが言葉の遅れにつながる。音の高低がわからないと、会話のニュアンスが気づけない。

 頻繁な瞬きや、片目で見るのは、感覚過敏に基づいている可能性がある。蛍光灯が常道行動を引き起こすことがある。

 ADHD(注意欠陥多動性障害)では、記憶容量の発達が遅れる。集中力が長続きしない、周囲に気をとられやすい、忘れっぽい、多動、自分を抑えられない衝動性を持つ。ワーキングメモリーを訓練することで、注意や集中の改善を教育プログラムもある。

*Cogmed(コグメッド)
 ワーキングメモリーのトレーニング・プログラム。
 スウェーデン・カロリンスカ研究所で開発された、臨床・科学的検証済みのプログラムで、世界中で広く導入されています。ADHDや学習障がい、認知症予備群など、注意や記憶に課題のある人向け。多くのランダム化比較試験で効果が示されています。
 https://www.workingmemory.training/?utm_source=chatgpt.com

 自閉症児は周囲に惑わされずに一点に注意を向ける。全体を見ず、細部に注目する。

 ADHDでは、目の前にあるものに注意を向けることが難しい。

 自閉症の子供は一度集中すると、注意をコントロールできない。彼らが注意できる「狭い窓」の範囲内に書いてあげるだけで、集中は途切れなくなる。

 カクテルパーティ効果は、脳のトップダウン処理。このフィルターで使われるのが記憶。文化を共有した「共通認識」のもとで行われる。この先入観が判断の大半を左右する。正しいかどうかではなく、多数派かどうかが問題となる。

 自閉症者は、先入観なしに物事を判断する資質をもつ。感覚をありのまま受け止めるのではなく、先入観によって必要な情報だけを見る健常者との違い。

 全体を把握して理解する。部分を積み重ねて理解する。自閉症者は統合が苦手。個々の場面は理解するが、全体の流れを理解できない。対人での微妙なニュアンスが読み取れない。

■ 脳から見た発達障害

 視覚情報の二つの経路。背側経路は動いているものを見る。腹側経路は形を観察する。

 先に発達する背側経路は腹側経路の発達を促す。発達初期の新生児では、先に発達する皮質下が皮質の発達を支える。

 網膜は、周辺側が先に発達し、錐体細胞の完成は遅い。視力の発達には、刺激による学習が必要である。動いているものへの反応は、皮質下だけが動いている時期から生じる。動きがなければ皮質下は動かないし、皮質に刺激が入力されない。

 背側経路で空間を正確に見ることができなければ、自由に動き回ることができない。

 背側経路は壊れやすく、自閉症児の多くは腹側経路が成長できない可能性がある。

 発達障害の子供の中には、運動が苦手な子供が多い。

*低学力で運動は得意〜知的境界域の場合
 「知的障害」ではないが、学力や処理能力に著しい遅れが見られる。
 抽象的・論理的思考に困難がある。
 安心できる環境や信頼できる大人の関わりで伸びる子が多い。
・指導の原則
具体的・視覚的に教える。
 手順は箇条書きやイラストで「見える化」すると効果的。
小さなステップに分けて教える
 「一つずつ」「ゆっくり」「くり返し」が鉄則。
成功体験を意識的に積ませる
 「できた」「わかった」を実感できる課題設定。
国語
 音読・繰り返し読みによって語彙力を支える。
数学
 具体物(ブロックなど)を活用し、目に見える形で計算する。
 暗算よりも筆算・手順重視。

■ コミュニケーション能力は顔と視線から

 自閉症や発達障害の人の中には、顔を見るのが苦手な人がいる。

 顔の認識は二段階。目鼻口の位置から顔を検出する。知っている顔を区別(認識)する。

 自閉症者は視力が良い。細かい部分で顔を見る癖がつき、全体を見ない。自閉症のトレーニングでは、眉や口の形の変化に注目させて、表情を読み取らせる。

 横長の楕円の目に小さな黒目は、人間特有で、視線がどこに向いているかがわかりやすい。

 赤ちゃんは、視線の合った顔だけを記憶する。目と目を合わせることによって、母も子も成長する。

 視線の検出は、相手の意図を検出することとともに、人が生まれつきもつ機能だとされる。自閉症者は、視線方向に対する感度が弱い。

 言語発達レベルやIQよりも、共同注意はその後の言語発達を予測する。共同注意は、自閉症児では観察されない。


 発達障害者の中には、言葉も音楽も耳にしたことをそのまま示すことができる人がいる。

■ 社会脳と社会性の認知

 社会性の弱さの問題は、誰もが得意不得意を抱えている。社会性には脳の複数の部位が関与している。

 顔認知にかかわる脳は分業されていて、その周辺に共感性など社会性の脳がある。顔を見る、共感する、怖いという感情を持つ、他者の心を理解する、模倣する … 脳の部位は異なる。偏桃体ネットワーク:恐怖の情動。メタライジングネットワーク:他者の心の動きの推定。共感ネットワーク。ミラーニューロンネットワーク:真似をし、他者の身体とシンクロする。

 ブラッド・ピットは、相貌失認であることを公言している。

 表情は文化の違いは無いと言われてきたが、それは西欧の範囲内。東アジアでは表情の区分は曖昧である。

 自閉症者は先入観で判断を絞らない。すべての可能性について情報処理を行うため時間がかかる。