放送大学 「認知行動療法」

 放送大学の「認知行動療法」を視聴した。学生時代に精神病院のボランティアで森田療法を学び、実践したのでもともと関心は高かったのだが、学習困難児の学習支援をしているので必要でもあるので、勉強したんです。心理臨床として最も「科学的」な手法。「誰でもある程度はできる」のも良いのだが、「人間と向き合う」深みは … なんてことを言っちゃいけないんだよね。 以下は、講義内容の概要です。

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■ 認知行動療法

 行動主義 〜 条件付け
 |
 認知 ← 精神分析
 ↓
 認知行動療法 : マインドフルネス認知療法など

■ 問題理解

             認知
 環境 ⇔ 行動 −|− 情動
              生理

 1)学習する 問題行動を含めて
 2)総合/統合 問題は悪循環の中で起きる
 3)現実の問題である

 悪循環に気づいて改善する。

■ 介入の原則

 ・生活の中で行動の改善を図る
本人の動機づけが重要
 ・仮説-検証(妥当性)
 ・実証に基づく介入

 情報収集(アセスメント)を行い、クライアントとセラピストの信頼関係の下で、本人に説明し、課題(宿題)を出して、認知と行動を変容させる

■ 依存症

 治療は半年が1クールで、治療期間は2年が目安

 依存の機序
 快感が伴う行動(ドーパミン)→行動を覚える→(衝動の喚起により)脳が命じる

 治療
 行動記録をつけセルフモニタリングをする
 行動の引金を確認し、どうやったら止められるかを一緒に考える
 問題行動が起きなかったそのブレーキは何だったのかからヒントを得る
 問題行動を回避するために「自分にどんな言葉をかけるか」かを考える
 問題行動のコストを高くするものは何かを考える
 →代替行動と回避行動を特定(仮説)し実践(検証)する
  科学の根拠のある治療を行う

■ 心理アセスメントとケースフォーミュレーション

 クライエントの主訴
 何を困っているのか、何が問題なのか
 ↓
 心理アセスメント(情報収集分析)
 様々な観点から情報を収集し、介入方針を決定する
 ↓
 ケースフォーミュレーション(仮説=療法検討)
 問題の成り立ちを考える
 ↓
 仮説をクライエントに提示し、相互に検討し、合意し、介入する

 原因は理解できない。問題が維持されている要因を見当する。
 仮説の合意過程で、クライエントとの共通理解を形成する

  環境 −−−→ 認知
   ↑−−行動 −|− 情動
            生理

 仮説の設定
 1)ターゲット問題を特定する
 2)問題を維持している悪循環を識別する
 3)仮説の妥当性を検討する
   介入する
 4)仮説に基づいて介入効果を評価する

 ターゲットの決定
 具体行動をターゲットとする
 本人が変えようと望むものを優先する
 変化を観察し易い行動を優先する
 変化が起き易い行動を優先する

 機能分析
 問題行動の形成[刺激-反応-結果]の悪循環をまとめる
 ・問題を引き起こした刺激
 ・刺激に対する反応
 ・反応から引き起こされる結果

 問題の全体把握
 [刺激→認知(考え方)→行動・生理・情動]の全体認識
 素因:体質や家庭 → 認知傾向/考え方(信念)
 発生要因:端緒となるトラブルなど
 発展要因:親や仲間などの環境 〜 問題が発展する要因

 認知モデル
 自発する考え方←思い込み/先入観/認知の偏り←育ち

■ 心理教育・セルフモニタリング・行動活性化療法

・心理教育
 自分の病気を知る/療法を説明する/仮説や方針について話し合う

・セルフ・モニタリング
 (2時間単位で)生活[行動と気分]を記録する
 →行動と気分に関する具体の気づき
  悪循環の端緒や良循環を生み出す行動

・行動活性化法 〜 生活に変化をもたらす
 プラスの行動に取組む〜予定して実践し振り返る
  成功をとりあげ、うまくいく方法をみつける
  活動を妨げている物事への対処を事前に考える
 悪循環に陥るのを減らす回避行動≒代替行動を見つける
  難しい場合は、スモール・ステップに分解する

■ 曝露療法(エクスポージャー)

 [トリガー→不安(強迫)→(問題/回避)行為]の連鎖を、馴化(じゅんか)によって消去する療法。回避行動には、引きこもり型(受動的)と、儀式実行型(積極的)があります。

 慣れによって、無意味と思っても止められない問題行動へのつながりを弱めます。虐待になりかねないので、本人の理解と合意が不可欠です。

 トリガーに曝露された状態に放置し、強迫が鎮静するのを待ちます。不安を回避するための行動をしないように、歌などを歌うなども有効です。

 エクスポージャーは、少しづつ持続して行うものと、集中しいて行うものがある。持続エクスポージャーでは、1回30分以内、15回以内、3ヶ月以内とする。

・手順

 提示:バーチャル・ロールプレイ 〜 イメージ想起
  ↓ リラクゼーションなどの緩和措置をとる
 実施:クライエント主体で セラピストが宿題を出すこともある

・トラウマ記憶への介入

 PTSD(外傷後ストレス障害位) フラッシュバックなど

 想起による持続エクスポージャー
  辛さの自己評価により治療の進捗を測る
  「過去の記憶」として処理する

・習癖への介入

 チック症 / 抜毛症 / 自傷(リストカットなど)

 抜毛症 〜 退屈な時間に刺激を楽しむ
 手を上げさせない:手を挟む/何かを持つ
 毛を触って「ムズムズ」して我慢する → 肩の力を抜く/深く息を吐く

■ 認知変容技法

 鬱病などの「気分」の問題の場合は、考え方を変える

 急性期では薬物療法や休養を優先。落ち着いてきたら認知行動療法を適用する。

・物事の捉え方(認知)

 自分について、環境について、将来について

      /気分\
出来事 → 認知 + 行動
      \身体/

 推論の誤りをもたらす自動思考(スキーマ)
  破局視 / 全か無か / 過度の一般化
  例)自分は嫌われている

 自動思考の把握:面接 / モニタリング(記録法も)/ 質問

・認知再構成(リワーク) 鬱病の場合

 認知の誤りが起こる状況の把握
 自動思考の根拠 それが正しい根拠 / それは間違っている根拠
  間違いの根拠〜他人が同じような立場だったらどう声を掛けるか
 妥当な思考を検討する
  ポジティブ・シンキングが目的ではない
  妥当な第三者の考え方を身につける

 集団で行うことも効果がある

 職場復帰などのでは、コミュケーション・スキルのリハビリテーションも行う

■ 認知行動療法のプロセス

・導入

 守秘義務の説明
 進め方の説明

・見立て

 アセスメント
 症状を「描写できるよう」に情報を多方面から得る
 本人の主訴/困っていることを中心に聴取する
 問題が起こったとき、何を感じたのかを知る

 ケースフォーミュレーション
 問題維持メカニズムについて仮説を立て共有する
 分かり易く図示する
 本人の「良さ(特徴)」も盛り込む
 例)鬱病から抜け出す行動レパートリーを示して話し合う
 治療へのモチベーションが持てる

・介入

 作業仮説と目標設定
 技法の説明・試行・検証

 面接
 前回からの経緯のおおまかな様子を聴く
 症状の確認
 アジェンダ(次第)の設定
 ホームワークの振り返り
 セッションの主要部(本日のテーマ)の実行
 新しいホームワークを課す
 クライエントによる振り返り

・終結

 再発防止
 セルフカウンセリングができるようなサポート

■ サービスギャップを超える

 生きづらさは、個人の問題でもあり、社会の問題でもある。

 利用者と支援サービスが適切につながらない。
  医療への不信 … 薬漬け/低い技能
  社会の偏見
  クライエント自身の抵抗感
  費用負担の重さ
  サービスへのアクセスが不明

 蓄積されたエビデンスと標準化された手順をICTを利用して、セルフケアが可能なアプリを作成する。

 例:Awarefy 〜 https://www.awarefy.com/app *例はWEB検索による