「サピエンスの未来」 立花隆 2021年 講談社現代新書
「人間様は偉いんじゃ〜」と叫ぶ、傲慢不遜な邪教サピエンス教の教祖?立花氏の本。ここまで徹底していると優れた?反面教師かな。空前絶後に論理思考力が欠如した東大出のお勉強ができる御仁によくある症状です。オウム真理教の信者と基本は同じ。読むに堪えない部分も多いが、人間の醜さの半面をえぐっている。 以下はそういう部分の要約と引用です。

■ 解説
1996年、東大で行われた講演「人間の現在」を元にした講義録。
テイヤール・ド・シャルダンは、イエズス会司祭にして進化論研究者。
■ はじめに
世界の全ては進化する。非線形の大変化により世界の様相が一変する。それが進化の本質である。
■ 全てを進化の相の下に見る
ホメオスタシスの反対語はカタストロフです。
地球を人間が住める状態にしてくれているのは、地球環境の生物全体なんです。
世の中には考えてもわからない問題があります。人が死んだらどうなるかなんて、わかるはずがない。
ビッグバンというのは、理論的存在であって、歴史的存在ではない。
進化は全宇宙で普遍に展開している現象です。
人間はこの惑星の未来の進化に対して全ての責任を持っています。
■ 進化の複数のメカニズム
流行思想の変種の一つに、流行批判があります。批判も流行するんですね。流行思想に乗っかるのもみっともないけれど、流行批判に乗るのはもっとみっともないことです。
■ 全体の眺望を得る
「純然たる事実と言うものは存在しな。いかなる経験も、それを公式化しようとするとすると仮説体系に包まれてしまう」テイヤール・ド・シャルダン。
そもそも自然は、色づけしないと見えないんです。データを取るということ自体がナマの自然に対する一次の意味づけと言ってよい。
網膜にある視細胞は2億5千万個。蝸牛管基底膜の有毛細胞は1万5千個。視覚系では多数のセンサーからの情報が統合されて一本の神経線維の情報になる。聴覚の方は、一つのセンサーに何本もの神経線維がついている。網膜は、そこである程度の情報処理をしてから送り出しています。一つのセンサーに神経線維が何本もついていると、系としてはロバスト(頑丈)になるけれど、情報の質は高くならない。
側頭葉の3分の2以上は視覚情報を処理しています。知的コミュニケーションは、視覚中心になります。伝統的な人文科学は言語情報偏重ですが、いずれ衰微します。
この世界を本当にとらえようとすると、日常の尺度ではとらえきれません。べき乗で考えます。
■ 人間の位置をつかむ
氷期が終わった1万年前、新石器時代の総人口は550万人。紀元1年頃で1億3千万人。19世紀の初めで9億人です。
網膜の受光素子を並べただけだと、ものの輪郭が浮かび上がりません。光の明暗を強調することで輪郭が浮かびます。コントラストの強弱によるエッジの検出と、面の塗りつぶしが形の認識の基礎になります。
断片から全体を作り上げるとき、人間の脳は幾つかのルールに従います。何を持って合理的とするか、よりまとまりがついているとするかは、かなり文化的な問題です。
■ 人類進化の歴史
新約聖書の半分以上は、書簡という形をとっています。主としてパウロの書簡。当時キリスト教はできたばかりで教義体系はありません。信徒たちは様々な疑問を指導者にぶつけ、それに対する回答が書簡の形で送られたわけです。それがやがてバイブルという形に編纂されました。
[猿人→原人→新人]。北京猿人の発見ではテイヤール・ド・シャルダンが中心的な役割を果たしました。
■ 複雑化の果てに意識は生まれる
物質にも意識があるという考え方は、古代インドの思想(ウパニシャッド)の中にもあります。石にも意思がある。植物の中で神は目覚め、動物の中で動くようになる。
大きな変化は、小さな変化の積み重ねとして起こるとするのが古典進化論。非線形の大変化が突然起こるとするのが現代進化論の主流となっている断続平衡説です。
エントロピー増大が成り立つのは断熱系。開放系では熱力学の第二法則は成り立たない。
物質の結晶化も星の生成銀河の形成も、自己組織化現象。
神経回路形成の基本は、ある神経細胞が相手の標的細胞に向かって軸索を伸ばしていってシナプスを作ること。標的細胞がシグナル分子を出して、軸索を誘導しているらしい。
多数の要素の現象を記述する方法としては統計がありますが、全体を丸めて見た記述です。多数の要素が関わる現象=複雑系を扱う数学が無かった。三体問題は解けません。
本当に混沌状態にあって何がどうなるか解らないものはカオスとは言いまん。カオスは、アトラクターと呼ばれる収束状態に落ち着きます。あらゆる複雑系がカオスで扱えるようになったわけではありませんが。
「万物は虚無から発し、無限に向かって運ばれていく」(パスカル「パンセ」)。
エルヴィン・シュレディンガーは、ネゲントロピー(負エントロピー)という言葉で生命化を表現しました。逆エントロピーを認めれば、「生物学は無限複雑の物理学になる」テイヤール・ド・シャルダン。
■ 進化論とキリスト教の調和
「主なる神は土の塵で人を造り、命の息をその鼻に吹き入れられた」。神の息が人間を生かしている、それが霊魂(スピリット)です。
アダムとイヴの神話が否定されると、原罪という考えも否定されてしまい。原罪が無くなると、キリストがなんのために十字架にかかったのかもわからなくなってしまいます。
ヨハネ・パウロ二世は、ガリレオ・ガリレイの名誉回復をしました。進化論も容認しました。進化論を容認するにあたって、人の霊魂だけは神が直接に作ったことにしました。
■ 超人間とは誰か
「ツァラトゥストラかく語りき」でニーチェは、「人間は乗り越えられるべきものである」と言います。神は妄想と憶測が生み出した妖怪であり、観念の病気に過ぎません。神の死とは、妄念が消え、観念の病気が快癒することです。
テイヤール・ド・シャルダンの超人は、人間より高次の意識を持ちます。
■ ホモ・プログレッシヴスが未来を拓く
「地球の全ての機械もまた、しだいに組織された大きな機械を形成する。ただ一つの巨大な、地球を取り巻く複合体を形成するに至る」テイヤール・ド・シャルダン。
■ 終末の切迫と人類の大分岐
「いずれ人類は、全てを「抱括」し、最終的な思考によって、全てを自己の中で一つの共通の観念と一つの共通の情熱に還元する」テイヤール・ド・シャルダン。「地球の単一な精神」が超人間なのです。複雑化の法則に従って、世界が進化を続けた結果、超人間を生みます。神はその全体が一切の中にある。