「ハーバード・ビジネス・レビュー BEST10論文」 2014年 ダイヤモンド社
それぞれ単行本になっている有名なものばかり。しかも、単行本よりも焦点が絞れていて解りやすい。これは永久保存版ですね。講義にも引用させて貰います! 以下はこの本の要約と引用です。
《イノベーションのジレンマへの挑戦》
クレイトンMクリステンセン&マイケル・オーバードルフ
組織の能力は、メンバーの資質やその他の経営資源とは別個のものである。経営能力を決める三つの要因は、経営資源・プロセス・価値基準である。
企業が成熟するにつれて、社員全員の合意を取りつけるのは至難の業である。ここで、組織文化が管理ツールとなる。
組織の能力の重心が人材にあるうちは、新たな問題に対応するために能力の入れ替えを行うことは簡単である。しかし、企業の能力の重心がプロセスと価値基準に移り、企業文化という形で刻み込まれると、その能力を変えることは困難となる。
破壊的イノベーションの導入初期においては、機能・性能が劣っていることもある(例:PC)。利益率は低く。大企業の価値基準とは合致しない。
新しい能力を必要とする場合の三つの方法。1)社内に新たな組織を作る:専任のメンバーが同じ場所で働く、2)独立した組織を作る(スピンアウト):経営資源の配分が重要、3)別の組織を買収する:プロセスや価値基準を買うのであれば、買収企業を統合しない。
《ブルー・オーシャン戦略》 Wチャン・キム&レネ・モボルニュ
ブルー・オーシャンは、まだ存在しない市場を象徴している。ブルー・オーシャンでは、需要は勝ち取るものではなく、自ら創り出さなければならない。サウスウェスト航空やシルク・ドゥ・ソレイユのように。
グルーバル競争の激化に伴い、様々な市場がレッド・オーシャンとなった。レッド・オーシャンの産業構造は与件であり、企業はその中で競争する。
ブルー・オーシャンは、技術革新によって生み出されるものではない。ブルー・オーシャンは、効用・価格・コスト構造が適切な関連性を保っている場合に限り成立する。コスト削減は、競合他社が競争している要素を自社の事業活動から取り除くことで、実現される。バリュー・ポジションは、これまで誰も提供していなかったものを提供することによって生まれる。
ブルー・オーシャン戦略の模倣は、事業構造を大改革しなければならないために、既存の企業では難しい。
フォードは価格を設定する際、他社の自動車の値段ではなく、馬車の値段を参考にした。やがて、馬車より低価格な自動車を完成した。
《自己探求の時代》 ピーターFドラッカー
これからは、自己をマネジメントできなければならない。目標を決め、結果のフィードバック分析によって、自己の強みが明らかになる。そして、明らかになった強みに集中する。出来ないことはしない。他人の協力を得る。自分を変えようとしてはならない。
《マネジャーの仕事》 ヘンリー・ミンツバーグ
私が調査した5人のCEOの活動の半分は9分とは続かず、1時間を超えたのは1割だった。案件から案件に飛び回り、絶えず時々の必要に応じて反応している。
マネジャーは、6割以上の時間を口頭のコミュニケーションに充てていた。今現在の情報、噂や憶測を大事にする。確かな情報になった時には手遅れだ。判断する際に役に立つのは、頭の中で繋ぎ合わせると、目の前にある問題の裏面が明らかになるような詳細の断片である。口頭の情報は、記憶の中に存在する。マネジメントは、科学とは程遠い「直感」によるものである。
プロジェクトを認可する際によく使われる解決策は、提案内容ではなく人を見るこである。
《バランス・スコアカードの導入インパクト》
ロバートSキャプラン&ディビットPノートン
バランス・スコアカード(BSC)は、様々な戦略目標を首尾一貫した評価指標に落とし込む包括的なフレームワークとして機能する。BSCは、企業変革を促進するために用いられた時に効力を発揮する。
BSCにより、各業務を(縦割りではなく)プロセスで管理することを重視し、社員を動機付け、顧客からの意見を業務にフィードバックできるようにする。
《イノベーションの罠》 ロザベス・モス・カンター
イノベーションは、既存のものを新たな形で結合したものが多い。
イノベーションの罠
・高すぎるハードル
より多くの成功を望むならば、より多くの失敗に身をさらす覚悟が必要である
・厳しすぎる管理
イノベーションは不確実で、既存事業と同じ計画-予算-評価は適用できない
・弱い連携と組織の壁
一つの組織に二種類の集団が存在すると、衝突が生まれる
・弱いリーダーシップとつたないコミュニケーション
イノベーションに伴う混乱は、予め緩和しておく
イノベーションを成功させる処方箋
・イノベーションを探索する範囲と活動領域を拡大させる
アイディアを幅広く募り、小さいアイディアをたくさん集める企業の方が、大きなアイディアを獲得できる可能性が高い
イノベーションを生み出している企業は、試行回数が多い
・計画立案と管理システムの柔軟性を向上させる
別勘定の資金(本社勘定の特別予算)を用意する
・イノベーション・チームと既存部門を連携させる
相互信頼を醸成する場を儲ける
部門の枠を超えて連携する
市場別の組織編成により顧客とR&D活動を直結させる
・人間関係を重視するリーダーを選抜する
イノベーションに、ミドル・マネジメントは反感を抱く
《企業変革の落とし穴》 ジョンPコッター
落とし穴
・変革は緊急課題であることが、全社に徹底されない
中高年の社員は受け入れない。モラールが低下する。収拾がつかない事態に陥る。当面の業績が落ち込む。などの心配で、経営陣がすくむ。
顧客満足度調査の惨憺たる結果を公表するなどして、危機意識を浸透させる
・変革推進チームのリーダーシップが不十分
変革プログラムの1年目は3〜5人の陣容
チームの規模が大きくなった時に、問題意識を共有するには、合宿形式のミーティングを開く
・ビジョンが見えない
変革の失敗例を見ると、肝心のビジョンが欠けている
5分以内でビジョンを説明し、理解を得る
・社内コミュニケーションの不足
ありとあらゆる手段を活用する
言葉と行動の両方が必要
行動が重要 言葉とは裏腹な幹部の行動は変革を潰す
・ビジョンの障害を放置してしまう
イノベーションを現実化させるには、障害を取り除くことも不可欠だ
・計画的な短期成果の欠如
達成可能な短期目標を設定しておかないと、変革の勢いを失速させかねない
変革は時間がかかる ⇔ 変革は喫緊の課題である
・早すぎる勝利宣言
個々の成果を祝うのは結構だが、勝利を宣言してしまうと変革は終わる
変化への信頼感を追い風に、より大きな問題に立ち向かう
様々な変化が企業文化に定着するには、10年が必要である
・変革推進チームのリーダーシップが不十分である
変革を成功させるべく人々を駆り立てるには単純明快なビジョンが必要である
《マーケティング近視眼》 セオドア・レビット
生産量の増加に伴い、製造の限界費用は低下する。企業努力は生産に集中する。代替品が現れない製品はない。買手のニーズに重点を置けば、製品領域で事業を定義することはない。産業活動は、顧客を満足させるプロセスである。
「売上が増えると確信するところまで、まず価格を引き下げる。その後で、その価格で経営が成り立つように努力する。このように、製造方法や販売方法について、発見を重ねていく。コストを計算しても、それに基づいた価格で製品が売れなければ何の役にも立たない」ヘンリー・フォード。顧客に価値を提供できないと、セールスマンに向かって「売らないと利益が出ないぞ」という泥沼にはまる。
消費者は、ガソリンを買う手間を嫌っている。人々はガソリンを買っているのではない。ガソリンを見ることも試してみることもできない。自分の車が走り続ける能力を買っている。ガソリン・スタンドを無くすしかない。
《戦略の本質》 マイケルEポーター
戦略効果と業務効率は異なる。TQMやベンチマーキングやリエンジニアリングなどによって、業務効率は改善した。業務効率は必要条件だが十分条件ではない。日本企業のベストプラクティスはあっという間に広まった。日本企業は、利益率の低さに悩まされている。
アウトソーシングは、それを専業としている企業の効率は高いことを基礎としている。アウトソーシングの結果、活動は同じようなものになっていく。競争は勝者のないレースになる。多くの企業が利益減に直面している。
・サウスウェスト航空 ⇔ ハブ&スポークのフルサービス航空
中都市の空港と大都市の二次空港を結ぶ短距離のサービス
− 大空港を使わず長距離は飛ばない
ゲートでのターンアラウンド時間は15分
− ゲートや地上業務を担当する職員に高級を払っている
→ 飛行機の数が少なくても多くの便を飛ばせる
機種はボーイング737だけ
→ メンテナンス効率を高める
機内食は出さない/座席指定もない/ファーストクラスもない
ゲートでの自動発券
→ 旅行代理店に手数料を支払わない
・イケア ⇔ オーダーメイドとサービスに重点を置く家具店
セルフサービス
− わかりやすい店内展示 部屋に置かれているように展示
倉庫から顧客自身が製品を運ぶ
− 返品できる自動車用ルーフラックを販売
低価格のモジュール式組立家具
− 自社で家具をデザイン
店内に託児所があり、夜遅くまで営業している
戦略ポジションにはトレード・オフが伴う。ニュートロジーナは低刺激石鹸。流通経路も薬局に限定していた。あらゆる顧客にあらゆることを提供しようとする企業には混乱が生じる。ニュートロジーナも様々な製品に進出した。同社のイメージは希薄化し、ついには価格プロモーションを始めるようになった。利益は落ちるが、売り上げが伸びているため、間違っていないように思える。当初のポジションに戻るためには、事業縮小が必要になる。
コストと品質のトレードオフは、多くの場合、無駄と不正確さと調整不足が原因である。但し、ベストプラクティスを実現している時には、コストと差別化はトレード・オフになる。
サウスウエスト航空のコア・コンピタンスや主要成功要因は「全て」である。戦略は、各活動を一つのシステムにまとめ、その全体を包含したものである。部分の寄せ集めではない。各活動が相互に補完し、経済価値を創出している。
適合性が重要なのは、個々の活動は相互に影響するからである。適合性は、一貫性を生み社内をまとめる。適合性は、各活動が相互に補強する。適合性は、部分ではなく、全体が重要である。競争優位は、活動システム全体に起因している。コア・コンピタンスや最重要資源によって説明することはできない。競合他社が活動システム全体を模倣するのは難しい。
適合性を実現するのは難しい。複数の部門にまたがる意思決定や行動を統合する必要があるからだ。
顧客第一主義を誤解して、あらゆる顧客に対応しなければならないと考えるマネジャーもいる。ある顧客グループを除外すると、売上が伸び悩むと思い、戦略を曖昧にしていく。対象市場の飽和により、製品ラインを拡大する。
成長に注力すると独自性が曖昧になる。成長の追求によって戦略は曖昧になる。グローバル化により、戦略を曲げることなく成長を実現できる。さもなければ、異なるポジションのブランドで事業を展開する。
戦略は「何をすべきか」と同時に「何をすべきでないか」を示す。戦略は独自のポジションを定義し、適合性を強化する。業務は不断の改善に取り組む。
ほとんどの日本企業は、互いに真似し、押し合いへし合いをしている。日本企業各社は、自国経済の拡大と、グローバル市場への進出によって成長を果たした。
・独自性の核を発見する
商品の中で一番の特徴は何か
収益性の高いものはどれか
満足度が高い顧客は誰か
どの顧客-流通経路-購買機会が収益性が高いか
他社と差別化されている活動は何か
《コア・コンピタンス経営》 CKプラハラッド&ゲイリー・ハメル
1970年代初め、NECはC&Cを戦略として掲げ、半導体分野のコンピタンスが獲得できるかどうかが鍵を握ると判断した。コア製品と(半導体)コア・コンピタンスの開発全体を統括する経営陣による「C&C委員会」を発足する。コンピュータとコンポーネントと通信は融合すると考えた。
SBU(戦略事業単位)思考の罠にはまった経営者は、重要性の高いコンポーネントを外部依存してしまう。SBUや事業ポートフォリオは、多角化企業を経営するために考案されたもの。コア・コンピタンスは、部品の共有化ではない。
ホンダのコア・コンピタンスはエンジンである。キャノンのレーザー・プリンターのシェアは小さいが、そのコア・コンポーネントでは8割以上のシェアを占めている。コア・コンピタンスの目標は、特定の機能に関する設計開発においてリーダーシップを築き上げることにある。韓国企業のLG電子・サムスン・大宇電子・起亜自動車は、欧米企業とのOEM契約を通じて、コア製品のリーダーシップを築きつつある。
コア・コンピタンス-コア製品-最終製品が、どのように関連し発展するかを描き、その中での自社の優位性を把握する。
コア・コンピタンスを備えた人材の適材適所を実現する仕組みを持つ。部門の垣根を越えた人事異動を命じる権限を、開発担当事業部に与える。キャノンでは、コア人材はカメラ事業とコピー機事業の間を定期的に異動し、事業横断のプロジェクトに参加させる。