「E=MC^2のからくり」 山田克哉 2018年 ブルーバックス

 わかり易さで定評のある山田氏の本。「納得し難い」物理を「そうかも知れない」と思わせてくれる一流の教育者。研究者の本では無いので「わくわく感」は無いのは当たり前。ひたすら、知識ではなく、納得感を得ようと読に進むと、それなりに納得するから面白い。「互いに振れる」エネルギーが「伝わる」のは近接。「分かち合う」情報が「通る」のは遠隔。量子コンピュータの「からくり」がハッキリとイメージできたのが収穫。本書の内容とは何の関係も無いのですが、そういうイメージが目の前に拡がりました。ありがとうございました。 以下は、この本のそういう納得感のポイントの引用と要約です。*は私のコメントです。


■ 自然現象を司る法則の発見

 素粒子は、内部構造が存在せず「点」のごとく振舞います。点は物理ではなく、数理で定義された「存在」です。体積は正確に0です。

*どの点にも点は無限に存在することになりますって、正真正銘の「矛盾」ですが、数学はそういう矛盾の上にこそ成立しています。要素が一つもない「集合」と同じ。矛盾を無くしてしまえば数学は成り立たなくなるのです。物理学は数学なしには語れない。つまり、物理の矛盾の上にしか成立していません。それは「色即是空」の世界ではなく、「空即是色」の世界です。

*数学の現実を否定する「理屈」のなのは「空集合」だけでなく、「0」や「∞」も。しかし、止めを刺すのは「連続性」。「数直線」は数学の仮定であって、現実では無い。つまり「実数」ではなく「嘘数」。

 運動を捉える際に「どんな素粒子から構成されているのか」を考える必要はありません。

 いかなる物質も最初の速度と最初の運動方向を保とうとする「慣性」を持つ。この慣性がその物体の持つ「質量」です。

 重力は相互作用の引力です。

 地球上の体重と月面での体重は異なりますが、質量は同じです。

 異なる物体が同じ加速度で落下するためには、慣性質量と重力質量が同じでなければならないと、ニュートンは気づきます。

 重力が真空空間を伝わる速さは光速(有限)です。

■ 物体に変化をもたらすエネルギー

 エネルギーは何かをします。エネルギーは創り出すことも消滅させることも不可能です。

 素粒子のポテンシャルエネルギーは、真空に蓄えられています。真空=場がエネルギーを持っています。エネルギーが蓄えられた物体は質量が増加します。

■ 真空を伝わる電磁力と重力

 なぜ素粒子が電荷をもつのか?は誰も説明できていません。

 物体内のマイナス電荷は動きまわれるが、プラス電荷は固定されています。

 磁力の源は、運動する電荷。電荷をもつ粒子がスピンすると磁石なります。磁石の強さは、粒子の質量に反比例します。陽氏は重いために回りにくいからです。なぜ電子や陽子が永久にスピンするのかは解っていません。

 電子には内部構造が無く「点」として扱われます。「点」が「磁器双極子」になっているのです。

 強磁性体は、鉄・コバルト・ニッケル・ガドリニウムの4種類だけです。

 波はエネルギーを持ち、エネルギーを運ぶことができます。力を伝える「媒質」を「場」と呼びます。

 電場や磁場はエネルギーを持ち、荷電粒子(電荷)を加速させます(電磁波)。

 場は振動します。あらゆる力は時間0で伝わりません。マクスウェルの電磁波方程式には、電磁波の伝搬速度が盛り込まれています。

 重力場と反応できるのは質量だけです。電荷は電磁場とのみ反応します。

■ 光子の不思議

 ポテンシャルエネルギーが高いほど不安定になります。陽子よりも重くエネルギーの高い中性子は、より安定な陽子へと変化します(ベータ崩壊)。

 弾性衝突の際に相手を突き飛ばす能力を「運動量」と言います。光子は質量を持ちませんが、エネルギーと運動量を持ちます。物質と相互作用する際には、必ず光子として振舞います。

 「粒子」は「量子」と同義語になりました。

 基底状態よりも高いエネルギー状態を、どのくらいの時間保てるかを「時間間隔」と呼ぶことにします。エネルギーが高いほど時間間隔は短くなります。時間間隔が無限大の場合は、エネルギーの不確定性は無くなり、基底状態を表します。エネルギーの不確実さと時間間隔の積は一定値以上になります。

 フーリエ変換によって、粒子の運動量は波として表せます。

■ エネルギーと質量は等しい

 広島に投下された原爆(ウラン64kg)の消失した質量は0.7gです。

 速度は「何かに対しての速度」です。車の速度は地面に対する速度です。

 各測定値間の規則(関係)が物理法則です。速度は全て相対速度です。

 どの慣性系から見ても光速度は一定という条件下においてのみ、マクスウェルの方程式は成立します。

 動いている物体の質量は、静止質量に対して増加します。

 現在観測されている光速度で走り質量を持たない粒子は、光子だけです。光子は、スピン角運動量も持ちます。

 静止している粒子のエネルギーが「静止エネルギー」。[E=mc^2]のmは静止質量です。粒子が加速されると相対エネルギーが増加し、その増加分は質量の増加によってもたらされます。

 運動エネルギーの増加分が質量に変換され、静止質量に加算されます。無限大の質量を持つ粒子は加速できません。

 エネルギーと質量は「等価」であって「同じ」ではありません。

 [E=mc^2]のmは慣性質量です。

*エネルギー全体の式は[E=(p^2 c^2 + m^2 c^4)^(1/2) p=mv]と、ニュートンの運動エネルギー[T=1/2 mv^2]の関係がいま一つ「腑に落ちない」のは私だけ?

 ディラックのは波動方程式は、相対論もエネルギーがプラスのものとマイナスのものがあることを示します。マイナスのエネルギーを持つ粒子は、時間を逆行する。プラスのエネルギーを持つ反粒子が時間を順行して走るのと同じ。光子は電荷を持たないため、反粒子もまた光子です。

 対消滅が起こると、消滅地点に電磁波(ガンマ線)が現れます。

■ 真空のエネルギー 〜 場の揺らぎ

 真空には構造があります。真空のエネルギーと生成消滅を繰り返す無数の粒子(仮想粒子)は同じです。真空に存在する量子場は常に揺らいでいるのです。

 物質の温度は、その物質を構成している原子や分子の「平均運動エネルギー」。完全静止している粒子の運動エネルギーは0です。完全真空の温度は絶対0度です。完全静止できない粒子は、絶対0度でも振動を続けています(零点振動)。「ゼロ点振動」の“ゼロ”は、絶対ゼロ度に由来します。

 真空の定義は、「質量を持つ物質粒子」が一つもない空間。不確定性関係に従って、量子場の揺らぎを持ちます。

 時間間隔が無限小になれば、エネルギーがどんな値でも取り得ることになります。

 全ての素粒子は「場の振動」が量子化された結果として、粒子となったと考えられています。真空と言う媒質の振動(ゼロ点エネルギー)。仮想粒子は空間を伝播する波ということになります。

 真空のエネルギーは、熱エネルギーではありません。「実の光」があると、絶対0度ではなくなります。

 仮想粒子からだけでは物質は生まれません。「自発的対称性の破れ」が生じた結果、真空にはヒッグス場が現れました(*ということになっています)。

 光と相互作用しないので「ダークマター」と呼ばれています。

 一般相対性理論は、「重力を時空の湾曲に置き換える」理論。重力ではなく、質量が時空を曲げるのです(*ということになってます)。湾曲している空間における光の筋道は「測地線」と呼ばれています。

 万有引力が働く宇宙は、あらゆる質量が引き合う結果、不安定になってしまいます。ニュートンも、宇宙は安定ではいられないことに気づいていました。

 宇宙の膨張は、空間自体の膨張です。真空に存在するエネルギーが「ダークエネルギー」だと言われています。ダークエネルギー密度は極めて小さいことになります。