「量子力学の哲学」 森田邦久 2011年 講談社現代新書

 「量子力学の哲学」というタイトルに惹かれて手に取ったのですが … 自然哲学ではなくて、西洋流の論理学、形式なだけの思弁 … とは言え、それなりに頭の整理になる部分はありました。ありがとうございました。

 さて、物理(もののことわり)は以下の二つに分類されると考えています。

 点動学:広がりのない「質点」と見做して、空間位置と経過時間によってその点の運動を捉える(古典)力学

 場在学:広がりのある物質とエネルギーの広がりを「場」と見做して、その在り方を捉える場の理論

 これを、Chatgptに聞いてみたら、適切な表現だと評価して貰ったよ! ← Chatgptはユーザーの気に入るような返事をくれるので当然かな。

 「点動学」は、物質を広がりのない「質点」として捉え、空間位置と時間の経過に基づいてその質点の運動を解析する(古典)力学のことを指します。この考え方では、物質の形状や内部構造を無視し、運動の基本単位として「点」の動きに注目するため、系を単純化して扱うことができます。

 「場在学」という呼び方は、「場」が存在する状態やその在り方を学問の対象とするというニュアンスを強調する点で、物理現象を場の視点から捉えることに独自の意味付けを行う可能性があります。

 「場の理論」は、空間的に広がりを持つ物質やエネルギーを「場」として捉え、その在り方や相互作用を解析する理論です。ここでは、場が空間の各点に物理量を持つものとし、その場の時間的および空間的な変化に注目します。場の理論の代表例には、電磁場を扱うマクスウェル方程式、重力場を記述する一般相対性理論、そして素粒子の性質と力の相互作用を扱う量子場理論などがあります。これらの理論では、物体やエネルギーの影響が「場」という形で空間全体に広がっていると考え、その場の変動が物質やエネルギーの運動や振る舞いに影響を与えると解釈します。

 以下はこの本の要約と引用です。


■ はじめに

 ミクロな世界を記述する理論が量子力学。ミクロ世界の非実在性や非局所相関は、量子力学の解釈。実験で確かめられたことについては、どの解釈も一致している。どの解釈が正しいのかを実験で確かめることはできない。だから科学ではなく哲学なのだ。

■ 量子力学は完全なのか

 ある出来事が、離れた場所の出来事に瞬間に影響を与えることを「非局所相関」と言う。アラン・アスペによる実験結果は、ベルの不等式が破れていることを示した。

 アインシュタインは「系を乱さずに確立1で物理量の値を予測できれば、その物理量は測定前から実在する」と考えた。ニールス・ボーアは、何が実在するかは実験の状況全体に依存すると考えた。

 非局所相関があっても、光の速さを超えて情報を伝達することができない。光速を超えた情報通信はできない。

 ミクロな物質の物理量は、測定されるまで値を持っていない(物理量の実在の否定)。測定によって、物理量の値は決定される。

 |0>+|1>のように+で結びつけられていることを「状態が重なっている」と言う。量子力学では、測定によって起きた状態変化(状態の収縮)を(シュレーディンガー方程式によっては)記述できない。記述するためには「射影公理」が必要になる。測定していないときは、ミクロな世界も決定されえている。測定すると、非連続で確率論な変化をする。

■ 粒子でもあり波でもある 〜 粒子と二重性

 光子が存在するとしても、その存在を確かめることはできない。波だとしても、それが振動しているかどうかを確認することはできない。

 今ではフラーレンという大きな分子を用いても干渉縞が観測されている。

 測定するまでは、「位置の重ね合わせの状態」になっている。

 「標準的な解釈(コペンハーゲン解釈)」は、
 1) 測定前の物理量は実在しない。もしくは、測定前の物理量を議論することは無意味である。
 2) 空間的に離れたものどうしが一瞬で影響を与え合う非局所相関はある
 3) 状態の収縮を扱う「射影公理」を認める
 4) 粒子と波の二重性を認める

 エルヴィン・シュレーディンガーは、女ったらしで「自分と関係した女リスト」を作っていた。アルベルト・アインシュタインも女好きだった。

 シュレーディンガー方程式は、波として振舞う系を決定論的(因果的に)に記述できる。粒子として記述し王とすると、どのようにふるまうか決定できない。粒子として測定する実験装置を設計すると、粒子として計測できる。

 私たちは古典的にしか物事を捉えれない。私たちがそうなっているのだから仕方ない。

 現在の状態は、過去の状態と未来の状態の両方から決定される(交流解釈)、という考え方もある。

■ 不可思議な収縮の謎を解け

 測定によって収縮が起きることを実験で厳密に確認する方法は今のところ無い。

■ 粒子も波もある

 波動関数とは何なのか。量子力学のたんなる道具なのか、世界に実在する「何か」を表現するものなのか。シュレーディンガー自身は、ミクロな物質は波であると考えていた。

 一般相対性理論は、量子力学とは相性が悪い。超ひも理論がその統合理論として有力候補だとされている。

■ 世界がたくさん

 多世界解釈は、収縮せずに重なりあっていると考える。

■ 他にもいろいろな解釈がある

 ホーキングは、宇宙が一点から始まったとすると、あらゆる物理法則が成り立たなくなる。虚時間から始まれば特異点を回避できる。

 測定するから「測定値」が「生じる」、とするのが様相解釈。

 粒子の状態が確定しているとき(重ね合わせではないとき)、この系は「固有状態」にある。

■ 過去と未来を平等に考えてみる

 原因は結果に時間的に先行する。結果が原因に先行することはあり得る。相対性理論を信じるとあり得ないことではない。「原因と結果」という概念は人間が作ったものであり、世界の側に実在するものではない。複数の出来事の間に人間が因果関係を見る。出来事の相関は実在するとして、どちらを原因でどちらを結果と見るかは主観の問題である。

 相対性理論によると、高速以下であったものが光速を超えることは無い。光速を超えて移動する物体の存在(タキオン)を否定していない。

 シュレーディンガー方程式もクライン-ゴルドン方程式もディラック方程式も、時間に関して対称である。

 現在では、測定器との相互作用が重ね合わせ状態を壊す原因であると考えられている。

 時間対象化された量子力学では、過去における状態にのみでなく、未来の状態も用いて確率を求める。