興味深い記事があったので引用させて下さい。

電カルは全部作り直すべき
2019年3月6日 日本医師会医療情報システム協議会

 日本医師会が3月2日に開催した「平成30年度日本医師会医療情報システム協議会」に東洋大学情報連携学部学部長の坂村健氏が「AI+IoTで変わる社会と医療」と題して講演し、日本の医療業界の「クローズ性」を批判したうえで、電子カルテを巡って「“ゾンビ”的システムを手直しでしのぐのはもはや不可能。最新技術を前提に新たに全部作り直すべきだ」と指摘した。

「オープン」が成長を加速する時代に合わない日本の環境

 坂村氏はコンピュータ科学者で、1980年代に国産組み込みOS(オペレーティングシステム)の「TRON(トロン)」を開発するなど、IoT(モノのインターネット)などのICT(情報通信技術)に長く携わってきた。その上で、最近のICTを巡る状況として、「プログラミングがどんどん簡単になってきている。かつてはITの専門家だけがプログラムをしていたが、今は(課題を持つ)現場の人がプログラムをする時代になっている」と指摘した。

 坂村氏は、AI(人工知能)などで広く使われる「Python(パイソン)」や「Javascrips(ジャバスクリプト)」のほか、開発環境やオープンソースの活用などを紹介した。一方で、医療関係のシステムでは「恐竜時代のプログラム言語を使っているところもある」として懸念を示した。

 講演の中で坂村氏が度々言及したのが「オープン」であることだ。プログラムを書くことのハードルはどんどん下がっているが、そこで重要になってきたのが「オープン」であることだと指摘する。プログラムやデータなどが公開されることで「技術を前へ進めることができる」とした。

 一方で、「これに一番ついて行けていないのが日本の社会だ」と述べた。坂村氏は日本の得意なこととして「クローズ」「すり合わせ」「カイゼン」「メンバーシップ」「ギャランティ」「系列グループ」「囲い込み」「局所最適」を挙げ、不得意なこととして「オープン」「連携」「イノベーション」「オーナーシップ」「ベストエフォート」「コンソーシアム」「エコシステム」「全体最適」を挙げた。インターネットが普及した現在では、オープンやベストエフォートといったことが経済成長を加速する時代となっている。一方で、日本はこうしたことが不得意であり、「現在の競争環境に合っていない」と指摘した。

「電カルは新たに全部作り直すべき」

 医療業界でも、こうした日本の課題がそのまま当てはまる。医療分野ではAIの以前にICT化がなかなか進んでこなかったが、その一番の要因は、システムから組織などあらゆる場面で見られる「クローズ性」だと坂村氏は、指摘した。

 さらに坂村氏はITの立場から医療業界に携わった経験から、その例として「電子カルテ」を挙げた。1950年代に事務処理用に開発され、現在主流ではないプログラミング言語「COBOL」で作られたシステムも少なくなく、「過去に作られたシステムがいまだに“カイゼン”を繰り返して多くの病院で使われている。COBOLで作られていて中核を変えられなくなっているシステムもある」と苦言を呈した。さらに、過去に記憶装置が高価だった時代に、情報量を抑えるために作られた桁数の少ないコードが現在も使われており、世界標準で使われるコードを入力できず、現場の運用で工夫しながら使っている現状を指摘。

 その上で、「電子カルテは抜本的変革が必要。環境が大きく変化した今、“ゾンビ”的システムを手直しでしのぐのはもはや不可能。最新技術を前提に新たに全部作り直すべきだ」と指摘した。

医療でAIを使うのは、医療現場の人たち

 現在のAIブームのきっかけになったのは、2012年にディープラーニング(深層学習)での画像認識が飛躍的に向上したブレイクスルーがあったことだった。「それから数年でいろいろな分野に拡散した。AIの民主化が起こった。それを牽引したのは、Googleだった」と坂村氏は説明した。GoogleはAIの方法や考え方、ソースリストなどを広く公開した。その流れを受けて、マイクロソフトやamazonなどの他の巨大IT企業も、オープンソースのAIライブラリを次々と公開するという流れができた。その結果、ディープラーニングでは当初進められた画像認識だけではなく、翻訳などにも広まった。

 こうした最近の流れから、「AIを進化させているのはこうしたオープンなエコシステム。活用のための敷居はすごく下がり、あとはアイデアと現場だけだ」としたうえで、AIを「使える」のは現場の課題だけを知っている人だけだとして、「医療分野でAIを使うのは、現場の人が使うのが最適だ」と述べた。

AIやICTの活用は、医師の過酷な状況を改善

 では医療分野では具体的にはどこにAIを活用していくのか。現在、医療分野のAI活用は「ゲノム医療」や「画像診断支援」で開発や臨床応用が進んでいる。これに対し坂村氏は、「こうした主戦場だけではなく、”後方支援”的な応用も大きな助けになるはずだ。医療現場でICTを真に活かせば、医師の過酷な仕事状況の改善は可能になる。例えば事務作業の軽減だけでも大きな軽減になる」と指摘した。