「時間とはなんだろう」 松浦壮 2017年 ブルーバックス
時間の物理を探求する道標がぼんやりと見えてきました。そこで、この本を再読して頭を整理してみることにしました。 以下はこの本の予約と引用です。
《はじめに》
私たちは、動くものの背後に時間を感じます。私たちが感じる世界では、「時間」と「運動」は不可分です。時間は、運動を理解するために仮定される原理の一つです。運動法則が更新される度に、時間の認識も変化しました。
《1. 時を数える》
時計は、周期運動をするもの。
《2. 古典時間観》
私たちが測れるのは、物体の運動の速度の変化だけなので、力の大きさもそれに基づいて定義するしかありません。質量も目に見えないので、加速度を基礎にして定義されます[F=ma]。「力」は、物体が相互に及ぼし合う「相互作用」です。
時刻は連続な実数のパラメターtで表され、物体の位置は時刻の関数で表現できます。古典力学では、宇宙全体の全ての物体に共通の時刻を用いて得良いと仮定します(絶対時間)。
《3. 時間の方向を決めるもの》
素粒子の世界には、時刻を反転する物理法則があります(CP対称性)。
多数の物質があると相互作用が非線形性になり、カオスが現れます。反転できない時刻とは、多数の物体が絡み合い、可能性が多い方向へ進んでいく過程です。運動法則と矛盾しない、一方向の時刻の流れ〜エントロピーはまだ構成されていない。
記録/記憶は外部から得られた信号と、判断の結果が積み重なった形の情報が一方向に蓄積します。
《4. 光が導く時間観》
「空間には場が満ちている」マイケル・ファラデー。場は物質ではなく、空間の一部。
ローレンツ変換では、時空の原点と(ct,x,y,z)の距離を、√((ct)^2−x^2−y^2−z^2)で測ります。
《5. 揺れ動く時空と重力の正体》
重力が強い所では、時刻はゆっくりと進む。
物体は何もしなければ、時空の最短経路を進む。
時刻が物体の運動を通じて測られる概念である以上、時刻観は物体の運動をどのように理解するかに左右されます。
《6. 時空を満たす場の働き》
力は離れた物体間に働く。ある地点での現象は、近傍の情報だけで決まります。局所性に拘るなら、粒子は空間から力を受けていることになります。空間には「流れ」があり、粒子はこの流れから力を得ます。例えば、川に浮かぶボートは、ボートの周りの水の流れから力を受けます。
接触した時に働く力は、同じ状態に複数の電子は入れないという性質が強く働きます。結果として反発力が生じます。
電場は電荷から作られ(ガウスの法則)、磁場は電荷の動き(電流)から作られる(アンペールの法則)。磁場の時間変化は電場の渦を生み出す(ファラデーの電磁誘導の法則)。電場の時間変化は、磁場の渦を生み出す(マクスウェルの法則)。
電磁場こそ「場(媒力)」。物体が場を刺激し、場が物体に作用する。波でも粒でもあるものを「量子」と呼びます。
《7. ミクロな世界の力と物質》
グラスを叩いたその時には、雑多な音が出ています。残るのはグラスを回り込んでできた波と、その場所の振動が重なる特定の波長を持つ波だけです(共振)。量子は場の振動ですから、その振動は存在する内部空間内で共振します。
あらゆる振動は重ね合わされたものです。錬成振り子は、2個の振り子とそれを繋ぐロープが一体となって振動する共振現象です。2個の振り子が電子、繋ぐロープが電磁場です・
電子が粒子に見えるのは観測した時だけです。物質を作る量子場と、力を伝えるゲージ場が調和し、共振しながら運動します。
作用の値を最小にする運動だけが実現される。
《8. 量子重力という大統一》
時空は、内部空間として場を備え、場の量子振動が素粒子として、場の共振が素粒子間に働く力として映るのです。
どんな理論も対象となる自然現象が起きているスケールだけを相手にすれば良いように作られています(有効理論)。
一般相対性理論は、ピタゴラスの定理からの距離のズレから、空間の曲がり具合を測ります。各点間の距離を決めているものを「計量」と呼びます。一般相対性理論は、計量を変数とする場の理論です。
弦理論は、「超対称性」を導入して「超弦理論」になりました。量子重力理論が完成すれば、時間が1次元で、空間が3次元であることの理由が提供されるだろう、と期待されます。時間・空間・物質・力に共通する何かに触れようとしているのです。
《おわりに》
時間観は、物体の運動の捉え方と表裏一体です。