「営業デジタル革命」 角川淳 2019年 日経文庫

 今猿の書いた本だから … でも日経文庫だからそれなりの水準は期待したのだけれど … B2B系の営業関係の本って …。 以下はこの本の要約と引用です(中身が無いので、というほどのことはないのだけれど)。

■ はじめに
 顧客は営業担当に相談する前に、Webで情報を得ています。営業には専門性の高いスキルを求めます。

■ 営業デジタル化の苦難
 報告や報告に対するフォローなど、顧客接点以外の社会業務が増えています。顧客対応のための時間が減り、資料作りに長い時間が費やされます。なんでもかんでも営業の仕事になってきています。
 エクセルで情報をまとめるアプリが現場で作れます。場当たりな帳票は増え続けます。SFAとは無関係な商談データができてしまいます。
 IT部門が、帳票の棚卸をして整理することをしなくなり、SFAからデータをCSVでダウンロードしてエクセルで好きなように加工する流れになっています。
 訪問回数や提案回数を管理すれば成果は上がる、という時代ではなくなりました。
 カタログと見積書だけで営業するのは稀になり、提案書を準備するのが一般的になりました。誰でも提案書を作れるようになったからです。提案書の作り方の研修は不充分です。
 営業は資料の説明が中心。アポなしで訪問することが不可能になっていることもあり、何らかの資料が必要だと考えているのです。資料をきっかけに話を広げ、顧客の課題を聞き込むことができなくなっています。
 MA(マーケティング・オートメーション)は、顧客情報を一元管理し、メールやSNSやWebサイト、DMや電話、セミナーなどのイベントを組合せ、顧客育成や商談発掘の活動を自動化・可視化するシステム。
 日米のデータ活用に大きな違いがあります。日本は、部署単位・人単位の「問題探し」に活用されます。営業という仕事は個人が行うもの、マネージャーはできない担当者を支援するのが役割だという考え方が根底にあります。米国では、生産性の高い「営業の法則」を導こうとしています。データ間の関連性や、全社で見た顧客関係など、より広範に気づきを得ようとしています。日本では、組織の壁を越え、データを連携させて分析するニーズが存在しません。
 MAを活用するためには、マーケティング部門や営業企画部門の仕事を見直す必要があります。多くの企業は、縦割りの組織の壁に阻まれて、全体のパフォーマンスを向上できていません。何より問題なのは、そのような現状をトップが認識していないということです。
 全社共通のシステムから、それぞれの部門で必要なシステムを使うという方向に変わっています。SFAやMAはクラウドサービスを利用すれば現場でも導入できます。IT部門が推進することは少なくなっています。ポリシーもなく、船頭もおらず、現場のニーズを聞いても「このエクセルの入力を簡単にして欲しい」などという些末なものばかり。営業の革新は漂流しています。

■ 顧客の変化についていけない営業現場
 Webで情報を集めている顧客に、コンタクトしたいと思って貰える工夫が不可決になっています。
・米国の調査結果では、顧客が参考にする情報源
  同僚や専門家からの推薦
  展示会やWebでのセミナー
  営業からの紹介
  オンライン上のユーザー評価
  eメール
  Web広告
 経費削減の流れから、購買のルールが複雑化し、上席者の判断が必要になった。ルーチンで購入している以外のものを買って貰おうとすると、購買プロセスを進めるための支援が不可欠になっています。キーパーソンを見極めることが、今まで以上に重要になっています。
 意思決定プロセスを前に進めるために、資料を作ってくっれたり、上席者を説得してくれたりする営業担当者は貴重な存在になります。
 顧客の相談相手になる営業を育成する方法は、ほとんどの企業で確立されていません。
 IT化の影響を受けて日本国内の会計業務の担当者は100万人減少しています。今後は営業職が対象となります。
 日常の購買に関してはオンラインで十分。2017年にはアマゾンの法人向けサービスがスタートしました。
 営業担当者は、顧客の購買プロセスの一部を支援する機能しか果たしていません。
 BtoB営業では、顧客の課題をヒアリングし提案するのは当たり前です。
 提案や見積では、進捗を測れなくなっています。現場の担当者からOKを貰った上で、社内説明用に提案書を見直し、最後は稟議書の付属資料を出し直します。
 顧客はWebから情報を入手します。自分たちが何をやったかだけの管理は無意味です。
 営業企画部門、販売促進部門、Web担当部門、広報部門。既存の組織が、マーケティングとセールス活動を連携させるMAの妨げになっています。

■ 自社のデジタル化度合い診断する
 顧客にタブレットで提示すれば、各ページの閲覧時間などが残ります。対話型に設計すれば、履歴をデータベース化できます。
 「適切なタイミングで、適切な活動を促す」ナビゲーション機能、Webやメールやメルマガやチャットの問い合わせに対する自動対応。システムを活用するには、営業の「デザイン」が求められます。
 社内の顧客に関するデータを集約し、全社で顧客データを一元管理して、購買プロセスを把握し、営業活動を統合します。営業とITを理解し、企画ができる人材が必須です。
 どの顧客に、どのコンテンツを、どんなタイミングで送れば有効性が高いかをAIが示します。そのためには、説得力のあるコンテンツが既に揃っている必要があります。資料作りとプレゼンのスキルは、今の営業の大きな課題です。

■ 営業を構造化して考える
 商談を発掘する前に、自社の「商談」を定義しなければなりません。「提案が欲しいと言われた」など自社の行為ではなく、顧客からの何らかの反応があったときに商談と見做すという条件になります。
 共同で商品開発する、一緒に技術開発を行う、法人を立ち上げる、トップ同士の関係づくりなどが行われています。
 ソリューション営業などは「やり方」。顧客にどう思われたいか、を考えます。
 顧客の購買プロセスとニーズを軸に必要な営業手法を設計します。
 営業活動の自動化。メールやWebサイトやセミナーなどを組み合わせて営業活動を進める。顧客用にカスタマイズした提案書作成を代替する。AIを活用した精度の高い予測。営業担当者の報告を聞き、アドバイスをする。

■ 最新ツールの基礎知識
 営業マネジャーには、SFAはスマホで使う営業日誌だと思っている人が少なくないでしょう。営業自動化システムは、営業関係者内のコミュケーション機能と、帳票を自動作成する管理機能を持ちます。CRMは、顧客情報を蓄積し管理します。
 AI機能による「ナビゲーション」。必要なアクションを示し、そのアクションに必要なものを準備します。顧客の情報に基づいてメールを作成し発信します。
 メールの中のどれを開いて読んだかの履歴から関心領域を認識します。顧客の反応を体系的にまとめます。反応の良いコンテンツを、ホワイトペーパーなどに展開します。
 MAは、シナリオに沿って、プログラムされた通りに、条件を満たす相手に行うだけです。
 AIは膨大なデータが必要です。100名の担当者が年間100件の商談を行っても、一万件にしかなりません。構造化したデータにする工夫も必要です。世界中のSFAに蓄積されたデータをもとに営業のやり方を助言することが可能です。

■ 高度なリアル営業への変革
 インサイト営業。顧客を深く理解した上で、専門家として価値のある情報を提供します。ヒアリングシートなども用いて「顧客と一緒に考える」ツールを開発します。専門家として意見が言える人材の育成と活用の仕組みを作ります。

■ 営業活動の評価
 個別に提案を仕掛けるのではなく、顧客から「提案下さい」と言われる関係を作ること。 何をしたら商談が始まり、どんな提案をしたから商談が決まったのか。その情報は蓄積されていないことが殆どです。
 営業活動を人軸ではなく、どの施策どんなコンテンツの効果という施策軸で評価します。
 Webサイトを閲覧すれば、IPアドレス=どの企業から見たのかが識別できます。問い合わせにつながりやすいページ、受注確率の高い提案書。各種施策をトータルでデザインし、目標達成度合いを数値管理します。営業ツールがどれくらい活用されて、どのステップアップに成功したか。ツールを活用するスキル研修を、ステップアップ成功率で検証します。

■ 営業デジタル改革を成功させる組織作り
 研修は人事部、営業ツールは営業現場、バラバラに動くのではなく、営業を施策を軸にトータルにデザインします。営業をデザインするには、多くの知識と技能が必要です。顧客関する知識、自社に関する知識、マーケティングや営業戦略、ヒアリングやプレゼンテーションなどのコミュケーション技術、システム設計、データ分析、企画立案、プロジェクトマネジメント。