私が、大学院で薬剤師や管理栄養士を指導する基本方針は、30年後も彼らや彼女たちが、薬剤師として管理栄養士として社会に有用な価値を提供し続けられる考え行動する力を身につけることです。社会の制度や仕組みは変わります。ですから、具体的には以下の点を基本としています。

1)法律により資格が必要な立場に依存しない
 資格があるからではなく、人々のQOLを高める働きをする

2)QOLを高めるのは、薬剤や栄養成分ではない
 牛や豚のバランスのとれた飼料の摂取と、人間の食事は違う
 人参を食べるということは、人参に含まれる成分を摂取することではない
 人間として「食べる」ということ、そういう人間に向き合うことがQOLを高める

 法制度に関わらず、人々に価値を提供できない人間は対価を求めるべきではありません。特に、現在の不安定な厚生行政により大きな影響を受ける立場の、薬剤師や管理栄養士、理学療法士、作業療法士などは、このことを胸に刻んで職業人生を生きていく必要があると考えます。

 また、薬剤師は処方箋と言う医師の指示によって調剤をします。管理栄養士でも病院などに帰属する方は、医師の指示によって献立を作ります。そのような人々は、医師の指示や見識に疑問を持ったり、独自の価値を提供できないことに悩んでいます。優秀でやる気のある人ほど苦しんでいます。私が教えている大学院の学生もそういう人々です。独自の価値を提供したい、自らの働きで人々のQOLを高めていきたいのです。

 現状で言えば、薬局などに属する管理栄養士が小学校などに出向き、一人一人の高齢者と元気なうちから、食性や体質や嗜好を知り、心のこもった助言と指導を行い、信頼関係を築く。そのことが、病気になったとき、外出困難になったときに、絶大な力を発揮します。弱ったときに患者の前に登場する医師やそのチームへの信用と、元気なうちから築いた信頼は次元の違うものです。経験的には、明らかに、プラセボ効果やアドヒアランス効果が違うのです。これこそが、薬剤師ならでは、管理栄養士ならではの、その人独自のQOL提供の価値であり、社会貢献なのです。保険点数という制度が変わったからではなく、地域の人々の生活に密着し、人々の「生きる」に向かい合う。だから、人々の中に飛び込んでいきなさい、これが私の彼ら彼女らに対する教育です。そうすれば、資格が無くなっても、法制度が変わっても、人々に価値を提供し続けることができます。